九月八日
翌日、午後練習が始まる前、昨日の遼との話を白石先生に報告した。
「来たわよ。二時間目の放課に」
「それで、なんて?」
「神前大会に参加したいって」
「ほんとですかー」
私が手を叩こうとしたのを先生が遮る。
「でも、剣道部はまだ、迷ってるんだって。それで、この大会に出てから決めたいですって」
先生は掌を上に向けて腕を大きく左右に開くポーズを見せる。よく外国人が訳わかんないって時に見せるあの動作だ。さすが、英語の先生らしいボディランゲージだ。
「ところで、栞。ホームページの方はどう?うまくいってる?」
「えっ。ああ、まあ…準備中ですが…。何とか来月中にはなんとか」
「いろいろ大変だけど、よろしくね」
「はい」
そうは言うものの肝心なタイトルが決まっていないのだ。
「あのー。先生。タイトルを決めかねていて。なんかいいアイデアないですか?」
「タイトルねえ…。神守中剣道部じゃいけないの?」
「悪くはないんですけど、ちょっと、ありきたりな感じがして…。なんかこうインパクトのある、目を引くタイトルだといいなーって思ってるんですよね」
「そう?じゃあ…」
少し考えた後、自信たっぷりにこう言った。
「千鍛万錬! 良いんじゃない?」
「それはあの旗の言葉ですよね」
至誠館の正面に二枚掲示してある茶色い旗の方の文字を指さした。
「ばれたか」
大きな口を開けて笑う。
「また考えておくわ。まず始めることが大切だからね。よろしく頼むわね」
そう言うと練習開始のあいさつを促すように正座をした。
本当にホームページのタイトル一つが決まらない。もう少ししっかり考えなくては―