殿下の婚約者に簡単になれるとお考えではありませんわよね?
ふんわり設定でお送りしております(*'ω'*)
楽しんでいただけると嬉しいです♪
今日も殿下ははしたないスカートの丈の女生徒と一緒にいる。
私は溜息まじりで同じ事を考える。何から突っ込めば、いえ、何から注意して差し上げればいいのか。
注意では無く指摘? アドバイス?
友人達からも「お気の毒ですけれど頑張ってくださいませ! お茶会楽しみにしていますわ!」そう言われてしまう。
「ヒューバート殿下にご挨拶申し上げます。お隣のご令嬢はマリさんと仰ったかしら。コパーフィールド公爵家のメレディスと申します。この世界では無い所から来たとお伺いしております」
「ああ! 知ってるわ! あなたがメレディスね悪役令嬢の! ヒューバートはメレディスと別れた方がいいわ! この人すごく性格が悪くてこれから私を虐めるのよ」
「私があなたに伝えたい事は二つです。この国では近隣諸国も女性が足を出す文化はありませんのよ。それから婚約者のいる男性に馴れ馴れしくする事はタブーとされていましてよ」
「やだ怖ーい。ヒューバート! 彼女突然私の事怒って来たわ! 早く行きましょ! もうヒューバートも何とか言ってよー」
「まあ、違う世界から来たんだ。この国ではマリの考え方は受け入れるのに時間が掛かるんだ」
「しょーがないなぁー。ヒューバートが言うなら我慢するけど」
「分かりました。文化が異なるのでは仕方が無い事と思います。ですが、この国の文化を知る努力をなされては如何かと思いましてよ」
「えー何? マリに怒ってるの? やっぱり悪役令嬢って怖ーい! ミニスカートの方が可愛いじゃない。そっちこそこの文化にすればいいでしょ? あーそれともあれ? 私に嫉妬してるの? やだーこわーい」
「その辺でいいだろう。ランチが遅くなってしまう」
周りの生徒達も何も言わずにそれを見ていた。
私の婚約者としての役目は終えたので、私もランチに向かった。
「メレディス様、今週のお茶会はございますの?」
「多分いつも通りだと思いますわ…」
「まあ! 楽しみですわ!」
私は面倒で止めてしまいたいが、ヒューバート殿下の婚約者という立場から今週末に行われるお茶会についての打ち合わせに参加している。
ヒューバート殿下は楽し気にプランを考えている。正直私はもううんざりしている。これ以上続いたら耐えられない。
毎週王宮で行われるようになったお茶会は、学園に通う者なら誰でも出席が出来る上、平民の場合は貸衣装からメイドまで準備しているという周到ぶり。
学園を卒業すればそんな機会が無い者達にも、貴族にもこのお茶会はとても人気となっていた。
◇
お茶会当日、メイドが髪やドレスをセッティングしてくれる。
「お嬢様、そんな暗いお顔をなさらずに」
「そうは言っても…」
私はエスコートのいない寂しい右側の腕をさすりながら馬車へ向かった。
お茶会の会場である王宮の庭園には既に人が集まっていた。
私は親しい人達に挨拶をしていく。周りの視線が私に突き刺さる。本当にもううんざりなのよ。
ヒューバート殿下がマリを連れて会場へ入って来た。
2人は周りの人達に挨拶しながらも私の方へ向かってくる。どうせ言うのでしょう。あの言葉を。
私はお腹に力を入れて挨拶をした。
「ヒューバート殿下にご挨拶申し上げます。マリ様ごきげんよう」
ヒューバート殿下は私を真っ直ぐに見据えて切り出した。
「メレディス・コパーフィールド公爵令嬢! そなたには伝えなければいけない事がある」
「はい。ヒューバート殿下」
隣のマリはべったりとヒューバート殿下にくっついて足をにょっきりと出してニヤニヤ笑っている。
ヒューバート殿下は私の前までツカツカと歩いてくると跪いて私の手を取った。
「我が愛しのメレディス・コパーフィールド。私はあなたを想うといっそ白い龍となってあなたの所へ飛んでいきたい。いつでも愛を囁いていたい。メレディスどうか私と結婚してほしい」
「え? ヒューバート? 何を言ってるの? ちょっとどうしたの?」
「邪魔だ。私は今メレディスに132回目のプロポーズをしているのだ」
会場は歓声に包まれている。
「メレディス返事を聞かせて欲しい」
「知ってますでしょうに」
「それでも聞きたい」
「はい。結婚いたします」
何が楽しいのか周りはキャーキャーと盛り上がっている。そして件の令嬢はというと…
「どういう事よ! お前なにやったんだよ! ここにきてプロポーズなんておかしいだろうが!!」
「連れていけ」
騎士が3名入ってきてマリを捕え連れて行ってしまった。
「放しなさいよ! どういう事よ! ヒューバート!! どうしちゃったの? ねえー-!!」
マリの叫び声がどんどん遠くなっていく。
「今日も可愛いねメレディス」
「ヒューバート殿下もう本当にお止めくださいませ!」
「何故!? みんなの前で何度もプロポーズできるのに! メレディスへの愛を高らかに叫ぶことが出来るというのに」
「そ、そこではありません! 私はヒューバート殿下が他の女性と一緒にいるのが嫌なのですわ! 誰かがべったりとくっついているなんてもう耐えられません!」
「メレディスが嫉妬してくれている!」
「ヒューバート殿下、私の想いを試すような事ばかりされると、私は気持ちがどんどん冷めていくかもしれませんわ」
「ッメメレディス! すまない! あまりにもメレディスがいつも可愛いから! 次からは違う方法にするからプロポーズは続けさせて欲しい」
「他の女性とベタベタするのはもう絶対嫌ですわよ!」
周囲の人達はバカップルの会話をいつもの事と受け止めていた。
私は盛大な溜息をついた。プロポーズって何回もするものなの?
学園では『ヒューバート殿下プロポーズ集』が出回っている。
◇
事の始まりは突然だった。毎週のようにやってくる自分がヒロインだ聖女だと言う令嬢たち。
ヒューバート殿下には令嬢の言うシナリオもイベントも魅了も何も効かない。
何故なら婚約者である私の予知で、毎回来る令嬢の事を伝えているから予め対策済み。
例え私を断罪 追放、処刑したところで、幸せは続かなく何の能力も持っていない令嬢の教育は上手くいかず、
社交や政務等出来ず、新たな婚約者候補を探すが元婚約者を蔑ろにして処刑や追放をした王子に嫁がせたいと思う貴族は居らず
白羽の矢が立つ前に貴族達は早々に自分の娘を婚約させたり、留学させたりする。どの未来も同じだ。
ヒューバート殿下の資質も疑われ、結局第二王子が立太子する。
私は分岐する予知もできるのだ。
◇
私は予知した内容を都度ヒューバート殿下に告げる。
「今度は金髪碧眼で可愛らしい男爵家令嬢。今度も私はヒロインだから大丈夫とあなたや側近を呼び捨てから始まります。男爵令嬢に堕ちれば結果は毎回の如く同じとなります」
今回はどうなさるおつもりですか?
ああ、今回も同じなのですね。分かりました。お茶会の手配をするのですね。
◇
修道院は捕えられ送り込まれた令嬢たちでいっぱいになりつつある。
修道院でよく出た話題が『リセットしましょうよ!』
この『リセットしましょうよ!』でシスター達は大変な目にあったのだ。
「教会の泉に飛び込めばリセットできたじゃん。ここってあの教会じゃない? 泉あるじゃん」
「待って、一斉に飛び込んだら同じタイミングでスタートになるって事?」
「同じタイミングは無理でしょ? 王子一人しかいないし」
「私は騎士狙いよ!」
「私は執事よ!」
「それモブじゃん!」
「王子狙いは? えっ!?73人もいるの? あ、待ちなさいよ! 抜け駆けは許さないわよ!」
それぞれが泉に走り我先にと飛び込む。当然だが溺れたり泳げるものはそのまま他の元令嬢を泉から出そうと熾烈な戦いが繰り広げられた。
その内全員溺れシスター達に助けられるも、こっぴどく怒られ食事が1日1回となり掃除と農作業、パン作りとお祈りをしっかりとさせられた。
独房に入れたいが人数分確保できないという悲痛な陳情が上がってきている。
という事なので、リセットだかをするために泉には飛び込まないでほしいわ。
ヒューバート殿下は魅了にかかったようなかかってないようなふりをするのが最近の好み。
新しいヒロイン令嬢が来る周期が早いから小説の様に卒業パーティではなく、ヒューバート殿下主催のお茶会が毎週のように開催される。
そして今日も私の名前が叫ばれ、ヒロイン令嬢がうっそりとほほ笑むと、殿下は私の手を取り跪いて、愛している。結婚してほしいとプロポーズするのだ。
ヒロイン令嬢は烈火のごとく怒った所で取り押さえられ、殿下や私への不敬罪で修道院へ送られている。
このヒロイン令嬢襲来はいつまで続くのでしょうか。
ただ、毎週殿下のプロポーズを参加者の皆さんも楽しみにしている。色々とレパートリーが豊富だからだ。
そして私も何だかんだ楽しみにしている。結婚してしまってはプロポーズはしてもらえないので、学生の間だけの楽しみの一つになっている。
バカップルですが勉強は頑張っています。
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