カニが食べ放題
「次のニュースです。
都内の○○通りで通り魔殺人が起こりました。殺された人の年齢は30代と推定されており現場は賑わいを見せています。
現場からの中継です。
(Live)」
『こんなしょうもないことをニュースに取り上げるより、もっと有益な事に金を使えよな。』
男はとんでもない愚痴を吐く。
人に聴かれたら間違いなく燃やされるだろう。
『…安い惣菜買いに行くか。』
なけなしの金を持って男は外に出る。
夜も近い午後6時の事だった。
男は賑わいを見せる大通りを合間を縫って
通り抜ける。
色々なポスターが貼ってある。
そして男の目に、一つのポスターが入る。
「予約制!カニが食べ放題!無料!無制限!
日時:!月??日
場所:東京都××市○○町△△
電話番号:~~~—~~—~~
備考:なるべく清潔な格好で来てください。」
男はそんな文言が書いてあるポスターに引き留められる。
『カニが食べ放題か…これで3日は持つな。』
そう、何を隠そうこの男はかなり貧乏なのである。
男は早速ポスターに書いてある電話番号に連絡し、予約を取る。
何せ無料・無制限でカニが食べ放題なのだから。
~数日後~
男は電車を乗り継ぎ、指定された場所へと
向かって行く。
そしてたどり着いたのは普通の商業ビルだった。
『こんなところで本当に食べ放題なんかやってるのか?』
男は少し疑問に思うが
『カニのためだ。』
『行かなければ食べて貰えない。』
と、疑念を振り払いビルの中に足を進める。
そして、ある程度中に入ったそのとき、急に後頭部に激しい衝撃が走る。
男はそこで気を失ってしまった。
『……ん』
男は起きる。
クローゼット以外のなにもない部屋の一角で。
男は何が起きているのか全く解らなかった。
しかし、何処かに連れ去られたという事実だけは理解できた。
男は一度深呼吸して部屋を見渡す。
6畳ぐらいの広さだろうか。
そしてそこにはクローゼットが一つある。
開けて見ると中にはハンガーと貼り紙、
錠剤一つ、そして水が入っていた。
貼り紙には
「服を掛けてからこの錠剤を飲んで下さい。」
と、一言ある。
怪しさ満点だが飲まないと何も事が進まない、と考え貼り紙に従って服を脱ぎ、錠剤を飲んだ。
急に眠気が来たと思うと浮遊感が襲って来る。足元を見ると床がなかった。
『おちてゆく』
そう呟いて視界が暗転した。
『…またか』
また、前に居た部屋と同じぐらいの大きさの部屋に横たわっていた。
また部屋を見渡す。
一つ違うのはドアがあるというところだろうか。クローゼットは相変わらずある。
ドアを開けようとする。だが、開かない。仕方がなくクローゼットを開けると
「カニの甲羅」が入っていた。
貼り紙には
「着るとドアが開きます。どうぞ、カニをご堪能下さい。」
と書いてあった。
早速着る。
凄くぴったりフィットした。
遂に食べられるのかと思うと凄くワクワクする。
男はドアを開け遂にカニとご対面するとても大きい。30mはあるだろうか。
周りを見てみると自分と同じように食べられに来た人たちが一杯並んでた。
自分もその列に並ぶ。
1杯、また1杯食べられて行く。
遂に自分の番が来た。この時を待ち望んでいた。
カニ用のはさみで剥かれる。
そしてカニのハサミで摘ままれる。
口に運ばれる。
そして、最後に見たものは
大量の甲羅だった。
後日談
放置されたラジオ
「最近になって、誘拐事件が都内で多発していますがこの件について○○さんはどうお考えでしょうか。」
[えーはい。そうですねー、この事件を分析すると主に都内の貧困層を中心に狙われてる傾向が在りますね。]
「と、言うと?」
[はい。恐らく金品や食べ物で釣って、怪しい所へ誘い込んだところで誘拐しているのでしょうねー。]
「確かに、最近は都内の至るところで怪しいポスターが見受けられますね。そのようなポスターはどうにか無くせないのでしょうか。」
[はい。現在はそのようなポスターは警視庁が随時剥がしていますが、中々無くなりません。まあ、結論付けると我々も気を付けて行かないといけないということですねー。]
「あの、質問にちゃんと答えていt」
[はいっ。ありがとうございました。]
「ちょっと待ってください!まだ話はおわってm」
《朝の6時になりましたのでニュースをお届けいたします》
……あなたの身近にも怪しいポスターがあるかもしれませんよ。
お気をつけて。