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08.ジャネットside②


「わたくしのドレスを貸してあげましょうか?もう着ないから」


「……」


「貴女はわたくしを見習って、もう少し容姿に気遣うべきよ」


「フレデリック様は、そのままでいいって言ってくれたんだけど……」


「またフレデリック!?勘弁してよ」


「あのね、お姉様……フレデリック様の事なんだけど」


「フレデリック、フレデリックって……もっと違う人にも目を向けてみたら?フフッ!わたくしみたいにね」


「……」



自分の方が優れていると思っていた。

残念そうなウェンディの姿を見ていると安心した。


その日の夕食の時間に、衝撃の事実を聞かされる事になる。



「ジャネット、もうウェンディから聞いたと思うが、フレデリックとウェンディが婚約する事になった」


「なに……?何よ、それ」


「良かったわね、ウェンディ」


「はい、お母様!」


「今日、ニルセーナ伯爵と話して正式に決めたんだ。幸い、フレデリックも「ウェンディしか考えられない」と言い続けているらしいからな」


「うふふ、フレデリック様と結ばれるなんて夢みたい!」


「…………」


「ずっと夢だったものね。ウェンディはフレデリックと結婚出来たらいいのにって……初めて行ったお茶会の時から言っていたのよ?」


「ふむ、確かにそうだな」


「ニルセーナ伯爵家に嫁ぐ為に色々勉強するのよね?ウフフ、頑張りましょうね。きっと喜んで下さるわ」


「はい、お母様!私、フレデリック様の為に沢山頑張ります」


「……」



そんな会話を聞きながら、愕然としていた。

動揺を隠すように食べ物をいつものように口に運びながら笑っていたが、美味しい筈の食事は何の味もしなかった。


フラフラとした足取りで席を立った。


寝る前にウェンディの部屋に訪れた。

部屋から出てきた彼女は相変わらず、脳天気で幸せそうな笑みを浮かべている。



「どうして、わたくしに先に話してくれなかったの……?酷いわ、ウェンディ」


「今日だって……前から話そうとしたわ!でもお姉様ってば、フレデリック様の話題を出すと嫌がって途中で話を変えちゃうじゃない……!」


「………」



ウェンディの言う通りだった。

フレデリックの話が出ると意図的に自分の話にすり替えて避けていた。

幸せそうにフレデリックの話をする度に胸の奥にモヤモヤとしたものが渦巻くのだ。


むくれるウェンディに「そう……分かったわ」と一言だけ言って部屋を去った。

「変なお姉様」と、ウェンディは不思議そうに首を傾げていたが、そんな事はどうでもよくなるくらい苛立っていた。


自室に帰って、怒鳴りつけながら侍女を部屋から追い出した。

それでも気持ちは収まらない。


何度も何度もクッションを殴りつけて、部屋にあるものを放り投げた。


(ーーどうして!?ねぇ!!なんでウェンディばっかり幸せそうなの!?あんな地味な男と婚約出来たくらいで、幸せそうに笑ってんじゃないわよ!!)


ぐっと歯を食いしばる。


(わたくしは絶対に王族と結婚してみせる……!どんな手を使っても必ずね)


この国には第一王子と第二王子がいる。

まだ何方も婚約者は居ない。

候補者は何人かいるようだが、子爵家の自分にとっては明らかに不利だろう。


だが、それでこそ自分の凄さが際立つのではないだろうか。


(なら……誰よりも目立てばいいのよ!向こうから声を掛けられるくらいにね!!)


そこからは必死で食らいついていた。

お茶会に出ては、王子達の情報を掻き集めた。

王子達が出席するパーティーやお茶会には全部参加した。


近付いてくる令息は利用出来るだけ利用して、用がなくなったら塵のように捨てた。


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