61
ゼルナにも「ウェンディが居てくれて良かった」と言われ、セバスチャンやハーナにも褒められた事で、少しずつ自信に繋がっていた。
自分が皆の役に立つ事が出来たと思うと嬉しかった。
(良かった……!今までの事は無駄じゃなかった)
それから何十枚もの招待状が届き、それをゼルナがチェックして厳選した後に「ウェンディもきっと楽しめると思う」と渡された招待状を持って、ドキドキする胸を押さえながら、お茶会に参加する事となった。
自分よりもずっと高位な家柄である令嬢達ばかりだった為、緊張していたが予想とは違い皆、温かく迎えてくれた。
「まぁ、いらっしゃい。ウェンディ様」
「はじめまして!!ウェンディ……マ、マルカンです」
「ふふっ、そんなに緊張しないで」
「ずっと貴女と話したいと思っていたの」
「私と、ですか……?」
「えぇ……そうよ」
特に公爵令嬢のレイナとミアとは気が合い、とても楽しい時間を過ごす事が出来た。
レイナは第一王子アーノルド、ミアは第二王子であるディマルコの婚約者である。
今までとは違う令嬢の友人が出来た事で、世界が広がった気がした。
以前は悪口や自慢、否定や批判ばかりでギスギスしていたが、この場では悪口を言うこともなく批判や咎めるような言動もない。
こんなにも明るい話題や互いを高め合うような有益な話が出来たことに感動していた。
お茶会が終わり、今日あった事をゼルナに報告すると「ウェンディが楽しめたのなら良かった」と、とても喜んでくれた。
それから国王や王妃、王子達への挨拶はマルカン辺境伯含めて三人で行った方がいいとの事だった。
どうやら「二人だけでもいいから早く城に来てくれ」という王子達からの催促の手紙が来たと苦い顔をしたゼルナが教えてくれた。
レイナとミアからも聞いたが、ウェンディに会うのをとても楽しみにしていてくれているようだ。
(きっとゼルナ様想いの良い方達なのね……失礼のないようにしっかりしなくちゃ)
充実した毎日を過ごしたある日、ダンスの練習をする為にゼルナを探していると積み重なった封筒と大量の資料の前に座り、難しい顔をしている彼の姿があった。
「ゼルナ様、これは……?」
「わっ………!ビックリした」
「……すみません。お忙しいですか?広間に来て下さらないので心配になって」
「もうそんな時間か……」
「お仕事ですか?」
「うん、まぁ……そんな感じかな」
「何か手伝える事はありますか?」
「いいや、大丈夫…………ウェンディは知らない方がいい」
「……?」
首を傾げていると「何も心配ないよ」と言われて、彼は笑顔で立ち上がった。
その手は微かに震えているような気がした。
「ごめんね。ダンスの練習に行こうか」
「……はい」
「…………」
「ゼルナ様……?」
「…………」
「あの……疲れてますか?また練習は後日でも」
「え……?あぁ、違うよ!少し考え事をしていたんだ」
ゼルナに母に送った手紙が返って来ない事を話そうと思っていた。
今は忙しい時期ではあるが、デイナント子爵家へ母の様子を見に行きたいと言おうとしたが、思い悩む彼の姿を見て口を閉じた。
今まではすぐに手紙の返事が返ってきたのに、こんな事は初めてだった。
(胸騒ぎがする……)
今日はパーティーを一週間後に控えていた為、ダンスの練習をする事になっていた。
フレデリックや彼の友人としか踊ったことがなかった為、ゼルナと共に手を握りながらダンスはとても緊張した。
何故ならば、あまりダンスが得意ではなかったのだ。
フレデリックのペースに合わせる事が出来ずに、いつも足がもつれてしまう。
セバスチャンに何度か練習に付き合ってもらっていたが「お上手ですよ」「何も問題ありません」と言うばかりだった。
自信がなかった為、ゼルナに相談すると「一度、踊ってみよう」という事になり、手を合わせて踊ってみると……。
(……すごく踊りやすい。でも、どうして?)




