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ゼルナの言葉はいつだって温かくて、心に明かりが灯るように明るくなる気がした。



「とっ……兎に角、ウェンディはウェンディのままで居てくれたらいいんだよ」


「はい……!ゼルナ様、ありがとうございます」


「僕、言い過ぎてない?大丈夫……?」


「ふふっ、大丈夫です。ゼルナ様の為に頑張ります」


「良かった……ありがとう、ウェンディ」



笑みを見せると、ゼルナは安心したように息を吐き出した。

その後、思い出したように口を開く。



「明日、ウェンディにサプライズがあるんだ」


「サプライズ……?」


「楽しみにしていてね」



そんな昼間のゼルナの言葉を不思議に思いながら、入浴を終えてベッドの上に移動しながら、のんびりと考え込んでいた。


ーーコンコンッ


響くノックの音に「はぁい」と気の抜けた返事を返した。


(……ゼルナ様の為にも、私も変わらなくちゃ)


まずは自分に自信をつける事からだろう。


(ゼルナ様の隣に堂々と立てるように……!一緒に幸せになる為に)


それから別邸に帰った時にゼルナの好物を作れるように、早めにシェフの元に行った方がいいだろうと思いながら一人で気合を入れていた時だった。



「ウェンディ……?何か考え事かな?」


「ーーーきゃあぁぁ!?」


「そんなに驚かなくても……僕はまだ君を襲っていないんだけど」


「っ!!?」



いきなりゼルナが目の前で顔を覗き込んでいた事に吃驚して悲鳴をあげる。

それから衝撃的な言葉が聞こえて二重の意味で驚いていた。


意味を理解して口元を押さえながら顔を真っ赤にしていると、にっこりと爽やかに笑うゼルナはキラキラと輝いて見える。


ベッドの上にあがり、此方に近付いてくるゼルナを目を見開きながら見ていた。


そっと手を握られて唇を寄せた彼の積極的な行動にドキリと肩を揺らした。

今日はどこか雰囲気が違って、目を合わせるだけで心臓がバクバクと音を立てた。



「ゼルナ、様……?」


「…………ウェンディ」



心臓が口から飛び出すのかと思った瞬間ーー。



「ーーウェンディ様、ゼルナ様!?大丈夫ですかッ!?」



悲鳴を上げたことで、マーサの妹で侍女長のハーナが慌てた様子で扉をノックをする。

ゼルナが「僕が悪戯したから驚いちゃったみたい」と言うと「ゼルナ様、悪戯は程々にして下さいませ」と扉越しに声が届く。


「私も大丈夫です!すみません」と言うと、ハーナは安心したのか「おやすみなさいませ」と言って去って行った。



「あ、あの……!ごめんなさい」


「いや、いいよ……でもウェンディが寂しいかと思って、急いで部屋に来たのに少し悲しいかな」


「……!!」


「嘘だよ……こちらこそごめんね。驚かすつもりはなかったんだけど」


「いいんです!私の方こそ大声を出して申し訳ありません。少し考え事をしていて……それに、ゼルナ様のお顔の刺激が強すぎて驚いただけです」


「あはは!そんなことを言われたのは初めてだよ!そんなに違うかな……?僕は見慣れてるから何も思わないけど……」


「はい……ゼルナ様の端正なお顔は見慣れるまで時間が掛かりそうです」


「大丈夫だよ、ウェンディ!毎晩、一緒だから直ぐに見慣れるさ」


「もう……!ふふっ、そうですね」


「容姿が変わっても僕は以前と変わらないよ」


「はい……でもゼルナ様のせいで心臓が飛び出しそうです……ほら、触ってみて下さい」



バクバクとすごい音で鳴る鼓動を聞かせようとゼルナの手を胸元に誘導する。



「うふふっ、どうですか……?すごい音でしょう?」


「…………」


「あの、ゼルナ様……?」



急に顔が真っ赤になって俯くゼルナを見て首を傾げていると、今度はゼルナに腕を引かれて体にもたれるように倒れ込む。



「ゼ、ゼルナ様……!?」


「ウェンディは気にしてないかもしれないけど、僕は……今までずっと我慢してきたんだよ?」


「え……?」



丁度ゼルナの胸元に顔を寄せる形になっている為、心臓の音が大きく響いていた。


顔を上げると、そこには真剣な表情で此方を見るゼルナの姿があった。

目を逸らす事が出来ずに、ずっと見つめ合っていた。

綺麗な瞳は揺れていて、熱い吐息が漏れている。



「………ウェンディ」



優しい声にそっと瞼を閉じた。

柔らかい感触……すぐ側にゼルナの体温を感じて、背に回される手に安心していた。


ゼルナが上から覆い被さるようにして倒れ込む。

その後に、何度も何度もキスを繰り返した。


身を任せるまま、夜は更けていった。


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