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あの後、朝食を食べ終えて、何杯目かの紅茶のおかわりを貰いながら互いに自分の事を話していた。
ゼルナが一歩踏み出してくれたお陰か、自分の中でハッキリと決別が出来たのかは分からないが、今まで何があったのかを冷静に話す事ができた。
ゼルナは真剣に話を聞いてくれた。
たまに涙が溢れ出しそうになったけれど、不思議と以前のような悲しみや苦しみが消えていることに気付いた。
姉と婚約者に裏切られて絶望していたこと。
その時、どう思ったのか。
母に心配を掛けてしまった事が心苦しかった事。
二人から離れた場所に行きたいと、ゼルナの手紙を見て「裏切らない」の部分に惹かれて選んだ事。
初めは寂しかったが、今は皆に囲まれて幸せだと心から思っていること……。
ゼルナに「甘えてもいい」と言われて、気付いてもらえた事が何よりも嬉しかったことを包み隠さず話す事ができた。
「自分が……可愛くない女だって事は分かっていたんです」
「そんな事ないよ!」
「いえ、いいんです。自分で分かってますから……」
「……ウェンディ」
ゼルナはその言葉に静かに首を横に振った。
「姉に比べてしまえば容姿も普通ですし、愛嬌もない……だから努力をして追いつこうと必死でした。相手に喜んで欲しい、そう思うあまりつい、尽くし過ぎてしまって……」
「………」
「でも、頑張っても尽くしてもダメだった……きっとフレデリック様にとって、私は都合の良い存在だった。どうでもよかったのでしょう」
「……ウェンディ」
待っていたのは予想もしなかった裏切りだった。
結局は全てを失ってしまった。
二人で一緒に愛を育んでいると思っていた。
幸せな未来を夢見ていた。
その愛は永遠に続いて消えないものだと思い込んでいた。
(でも、違った……)
今ならば、それは愛情ではないと断言できる。
ゼルナに対しての気持ちと比べてしまえば、全然違うことがハッキリと分かってしまう。
「その男は馬鹿だよ」
「え……?」
「ウェンディの努力を当たり前のように受け入れて感謝もしていない……話を聞く限りだけど、君の姉と婚約して初めて分かる事もあるんじゃないかな?今になって、絶対に後悔している筈だよ。彼の家族も」
「………そう、でしょうか」
「愛される事に慣れ過ぎてしまって、相手を思い遣れない男と一緒になってもウェンディは幸せになれない。捨ててやったと思えばいい……僕の方がウェンディを愛しているし、絶対に幸せに出来るから」
「ゼルナ様……」
目頭がじんと熱くなった。
自分の気持ちを話してみて良かったと思えた。
一方通行の愛情に、いつも焦っていた。
今はゼルナはキチンと想いを伝えてくれる。
今まで返ってこなくて当たり前だった気持ちを汲んで、返してくれる。
この安心感は今まで感じた事はない。
何より"愛されている"そう思えるのだ。
「それに……いくら容姿が美しくとも、人のものを羨み、奪ってばかりいるのなら絶対に幸せになれない」
「!!」
「他人に甘えてばかりで、相手の事を考える事が出来ないのなら絶対に後悔する…………以前の僕のようにね」
「ゼルナ様……」
ゼルナの表情に影が落ちる。
しかしすぐにパッと表情が明るくなる。
「今までの分も沢山ウェンディを甘やかさないとね!」
「え……?」
「それには僕がもっと成長しなくちゃ……まだまだ頼りないかもしれないけど、ウェンディに追いつけるように頑張るよ」
ゼルナの言葉にツンと瞳の奥が痛くなる。
声が震えてしまうけれど、気持ちを伝えようと唇を開いた。
「………こんなに」
「……?」
「こんなに幸せでいいのでしょうか……?最近、幸せすぎて怖いのです。ゼルナ様と結婚してから、本当に嘘みたいに気持ちが楽になって……!もうゼルナ様なしでは生きていけないかもしれません」
「はは、ありがとう…………それはとても嬉しいなぁ」
「……?」
「何でもないよ!さて、そろそろ買い物にいこうか」




