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溢れる疑問

「--さてエテルノ、大丈夫かい?」

「……まぁな。まだ少し違和感はあるが大丈夫だ」


 再生した自分の足をさすって調子を確かめてみる。

 今から二時間ほど前、毒剣で切り付けられてしまったために自身の手で足を切り落としたのだが、ミニモの治癒魔法によって再生させてもらったのだ。

 既にこの足は動かせるようにはなっており、動いたときに多少の違和感はあるものの走ることですら可能だろう。


 ミニモは凄いな。

 まぁ素直に感謝したくない気分ではあるが凄いことぐらいは認めてやろう。


 ふと窓の外を見ると既に日が昇っていた。

 俺の部屋が爆破されたのが深夜だったからな。ここまで色々やっているうちにこんなに時間が経ってしまっていたか。


「そういえば俺の部屋はどうなったんだ?」

「あー……それが……」


 言い淀むフリオ。その理由は俺の部屋まで向かってみるとすぐに分かった。


***


「……これは酷いな……」


 俺の部屋は爆発のせいだろうが、大部分が焼失していた。

 ここまでそこそこ集めてきた本も、衣服も。あと価値がある武器とか……


 ……まぁダンジョン探索の時に得た報奨金は別のところに預けてあるのでそこまで困ることでもないんだがな。それでも自分の物がここまで無くなるというのは結構心に来るものがある。


「……しかし、妙だな」


 何度も思っていたが爆発跡を見ると明らかにおかしいところがある。あれほどの規模の爆発なら間違いなく俺以外の部屋にも被害が出ていたはずなのだ。

 だが実際はそうではなく、俺の部屋だけが爆発によって失われている。他の部屋が巻き込まれた被害はせいぜいが壁が少し焦げた程度。

 火もすぐにグリスティアやシェピアによって消し止められたおかげで大きな被害は出ていない。


「グリスティア、どう思う?」

「え、何のこと?」

「爆発跡が少し妙じゃないかってことだ」

「……あれ?これエテルノが自分でやってたんじゃないの?」

「ん?」


 全く気にしていた様子の無いグリスティアを見て俺は首を傾げる。


「正直心当たりは無いんだが、何があったらこんな爆発跡になるんだ?」

「ええと、多分エテルノの部屋には結界が張ってあったんだと思うけど……結界の中で何かが爆発するとこんな感じの爆発跡になるんじゃないかしら?」


 なるほど。だが俺自身には結界を張った記憶なぞ無いのだから困る。結界を張ってそうな奴は……


「……そうか、ミニモか」

「ん?なんですかエテルノさん?」

「いや、何でもない」


 普段は俺の部屋に侵入してばかりだと思っていたが、知らないうちに結界を張っていてくれたらしい。何を思ってしたのかは分からないが被害を抑えられたのは確かだ。ミニモには感謝しなくてはな。


 ……まぁもちろん、結界を張ったのはミニモでない可能性もあるのだが、俺の部屋に仕掛けてあったということは術者が俺の部屋に入って仕掛けていったということだ。

 ミニモだと思いたい。

 というかミニモ以外も俺の部屋に侵入していたとしたら真剣に被害届を出すことを検討しなければいけないだろう。


 視界の端でミニモが首をコテン、と傾げているが、そんな動作に騙されてはいけない。

 こいつはダンジョンの壁を素手で砕き、自身の手で体の奥深くに寄生したトレントの種を抉り出すようなサイコパスなのだ。

 

「結局何が爆発したんだろうね」


 そんなことを言っているのはフリオだ。そうだ、そういえばそこも疑問なのだ。

 俺は爆発物なぞ持っていなかったはずなのに、何かが爆発した。それも相当な爆発物でもないとここまでの爆発は起こらないだろう。


 それを仕掛けたのはあの黒ローブの男で間違いないと思うのだが……そもそもあいつに会ったことなんて無いはずなのに、なんで恨まれてるのかも分からないんだよな。

 

 考えれば考えるほど疑問は尽きない。頭が痛くなりそうだ。


「……エテルノさん、大丈夫ですか?」

「おう。ちょっと考え事をな」

「それなんだけど、エテルノって結構顔に出るよね」

「そうか?」


 フリオに思いもよらぬところを指摘されて少しだけ驚く。

 あまりそこは意識したことが無かったが、そうか、顔に出てしまうのなら気を付けておこう。


「さて、とりあえず聞き込みをしてみることにするかい?」

「聞き込みか……いいな。とりあえずそれでいこう」


 フリオから、宿の客に聞き込みをすることを提案される。爆発が起こったのは深夜の三時。それより前に何か怪しい人間がいなかったか調査を……


 そんなことを話しながら爆発跡の残る俺の部屋を出ようとした時だった。目の前に人影が立ちはだかる。


「……」

「もう怪しい人間見つけたわよ!」


 頭を巨大なスライムに包まれた男がそこに立っていた。うーん、怪しい。


***


「……すまん、助かった」

「おう。で、なんでスライムなんかに食われかけてたんだ?」


 男の頭に引っ付いたスライムを引きはがして確認する。スライムが食おうとしていたのはアニキであった。


「……話すと長くなるんだが……」

「じゃあ話さなくていい」

「え」

「十文字以内でまとめてくれ」

「……シェピアのせい」

「うん、もう分かったわ」


 そういえばスライムはシェピアやらグリスティアやらに預けていたんだったな。それがどうやったらスライムがアニキの頭を食おうとしているような事態になるのかは分からないが……まぁ無事で何よりだ。慣れるとスライムも可愛いものだしな。


「あ、そう言えばなんだがなんでこんなことになってるんだ?」

「こんなことってどんなことだ」

「こんなことはこんなことだよ。ほら、なんでここの部屋だけ爆発してんだ?」


 ……そこからか?


 何も聞いていなかった(というよりスライムのせいで聞けていなかった)アニキを見て、俺は何も言えなくなるのだった。

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