検証、骸骨の仕組み①
「ミニモ!いったん下がって!僕たちが相手をする!」
骸骨が現れたのを受けてフリオがミニモに指示を飛ばす。
が、普段なら指示にはすぐに従うミニモだがこの時だけは違った。
「こんなの、下がるまでもありませんよ……っと!」
ミニモの飛び膝蹴りが骸骨の頭蓋骨にめり込む。ミニモがそこまでの力を使えている理由は明白だ。以前も使っていた、治癒魔法を応用して筋力を増す方法だろう。
まともに飛び膝蹴りを食らった骸骨は体勢を崩すが頭蓋骨が半分近く崩れているというのに意に介する様子は無い。
むしろゆっくりではあるがこちらに向かってこようとさえしているのだ。砕けた頭蓋骨もどんどん再生していく。
「やはり死なないか……」
「ほんとならとっくに致命傷のはずなんだけどね……」
「まぁ死体を動かしてる時点でこいつらは生きてなんていないだろうからな」
痛覚が無い上に再生するから何度でも向かってくる。
それも一体だけなら大したことは無いのだが、森にいる奴らもアニキが収納している奴らも含めれば数百匹、おそらくまだ下水道にもいるというのだ。
厄介なこと極まりない。
「とりあえず、一個分かったことがあるぞ」
「え、なんだい?」
先ほど棒倒しをしようとして灰(今にして思うと、この骸骨が砕かれた骨粉だったのだろう)に刺していた枝が再生に巻き込まれていることから分かることがあるのだ。
骸骨に刺さったままの枝を見ながら俺は説明した。
「それはな、こいつらは改造できる、ということだ」
「えっと……例えば?」
フリオはよく分かっていないようだ。説明の仕方が悪かったか。
俺はなんとか分かりやすく説明しようと試みる。
「枝がこいつの再生に巻き込まれて合体してしまっているのは分かるか?」
「うん、まぁ……」
骸骨の再生に巻き込まれて、枝も骸骨にくっついてしまっている。
ではもし、再生に巻き込まれたのが枝じゃなければどうなるのだろうか。
「これはあくまで推測だが……骸骨やらなにやらを一度砕いて、再生前に混ぜ合わせれば色々と合体させられるんじゃないか?」
例えば、鳥の骨と人間の骨を混ぜ合わせて死霊術を使うと、鳥人間!みたいなものが出来上がったり……
「それは流石に無い……とは言い切れないけどさすがに考えすぎじゃないかしら?」
グリスティアがそんなことを言う。まぁ俺も考えすぎだとは思うんだけどな。
「あー、まぁ後で試してみよう。アニキがまだ何体も収納しておいてくれてるはずだからね」
「あぁ。頼んだ」
「ちょ、ちょっとそんなことよりミニモちゃん手伝わなくていいのかよ!?」
「まぁ大丈夫だろ」
アニキが焦っているが心配はない。分かりやすい様にミニモの方を指さしてやった。
「あっははははは!無駄ですよ!」
「うわぁ……」
ミニモだが、ちょうど骸骨の頭蓋骨を左右から掴んで握り潰し、高笑いをしているところであった。
まじであいつ、治癒魔法使いよりも狂戦士とかの方が向いてると思うんだよな。
それを見るアニキも言葉が出ない様子だ。
……ミニモの凶行に慣れ切っている俺達の方がおかしいんだろうなこれ。
「あ、でも出来ればもうあの骸骨も収納しておいてもらえるかい?ミニモが暴れすぎても困るから……」
「お、おう。任せとけ……」
フリオの言葉にアニキが頷く。そうだよな、流石にあれを放置するわけにもいかないからな。
「ミニモ、その骸骨から離れてー。一旦終わりにするわよー」
「えぇー。まだ私は行けますけど……」
「それだと町が持たないんだよ」
ミニモが何度も骸骨を叩きつけたりしたせいで広場の床にはところどころひびが入ってしまっている。さすがにこれ以上暴れさせるのは良くない。
その後、さっさとアニキがスキルを使って骸骨は無事に収納されたのだった。
***
「さて、実験の時間だな」
「ほんとにやるのかよ……」
「あぁ、当たり前だろ」
実験の内容は、何体かの死骸を混ぜ合わせてみようという物である。
「一応そういうことが可能かどうかというのは調べておいた方が相手の手札を知る意味としても大事だからな。やっておきたいんだ」
「エテルノも真面目なこと言うんだな……」
「あぁ?」
「わ、悪い。今用意する」
アニキがスキルを使い、またもや収納していたものを取り出す。
出てきたものはまたもや、骨粉の状態になった何らかの骨が二山。
「だからなんで砕けてるんだよ」
「マジで俺にも分からねぇんだよ……。他の物を収納したときはこんなこと無かったのにな……」
なぜか収納した骸骨が砕けてる理由とかも後でチェックしないといけないかもしれないな。
「じゃあとりあえずこれを混ぜて……と」
骨粉を混ぜ合わせて待つこと数分。ようやく再生が始まった。
「なんで骨粉から再生する段階では普通に再生するより時間がかかるんだろうね」
「さぁ……」
不思議なことばかりだからな。今後色々試していくべきだろう。
そうこうしていく間に再生したものは確かに、二匹分の骨が合体して一つのものとなっていた。
確かに、うん。合体していた。骨を混ぜると合体していくことが確かめられたわけで、この結果には満足していいはずだったのだ。
だがそんなことよりも俺達の考えはある一つのことで埋め尽くされていた。
「これは……なんというか……」
「……あんまり言うのもあれですよね……」
「気持ち悪っ!」
シェピアがバッサリ言い捨てる。そうなのだ。なんというか、凄い見た目が気持ち悪い。
何と何が混ざればこんな冒涜的な見た目になるのだろうか。
大きさ自体はそこまで大きくなく、赤ん坊と同じくらい。
なぜか前足だけが異様に長く、地面に引きずっている。骨のはずなのだが関節がいくつもあり、結構柔軟に動きそうだ。
「……片方はカエルじゃないですかね?」
「カエルがこんなとんでもない生物になるのか……?」
生物というか死体だから生きては無いけどな。とアニキの言葉に無言でツッコミを入れたところに、テミルが口を出してきた。
「お、おそらくカエルの骨はこんな感じだったと……」
そんなことを言いながらテミルが地面に何となく書いて見せてくれた絵にはところどころ、目の前のクリーチャーと通じるものがある。
「え、なんでテミルさんはカエルの骨の形なんて知ってるんですか?」
「ちょ、ちょっとお金に困って、カエルを食べて生き延びた時期がありまして……」
「思ってたよりあなた壮絶な人生送ってきたりしてるわよね?」
テミルのカミングアウトもそこそこ衝撃なのだが、今はどっちかというと目の前の化け物に対処しなければ。
と、化け物が口を開けた。パカ、なんて可愛らしい感じではない。擬音で表すとすればゴト、ミシィ……といった感じだろうか。
もちろん、周囲でそれを見ていた俺達は軽く恐怖感を覚えた。
「うわぁっ?!動いた?!」
「ちょ、グ、グリス!固定!」
「分かった!任せて!」
「それでアニキは収納!」
「お、おう!任せろ!」
その場にいた皆の迅速な対応により、なんとかカエルと何らかの骨が混ざった化け物をもう一度収納することに成功したのだった。
「……」
「……とりあえず、もう混ぜたりはしないようにした方が良さそうだね」
「そうね……。しばらく夢に出てきそうだわ……」
既にいろいろと疲れたが、とりあえず次の検証もしなきゃいけないんだよな。
とりあえず皆で、ミニモの荒らした広場を片付けるのだった。
……うん、帰りたくなって来たな。俺は一人で空を仰ぐのだった。
なろうでは古来より、100ブクマを越えると底辺作家卒業と言われているそうで。
何が言いたいかというと、
50ブクマありがとうございます!そんなに多くの人が読んでくれていると思うと本当に嬉しいです!めちゃめちゃ励みになります!ということです。
はい。一人前作家と言われる基準の半分のブクマ数ですから、今度からは半人前作家とでもお呼びください。
半人前ではありますが、今後も毎日更新を続けながら面白い作品を書けるよう頑張っていこうと思うので今後とも是非!よろしくお願いします!
夜恐でした!




