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無意味な作戦会議

「さて、とりあえずギルドには行ってきたがスキルで解決は出来なそうだぞ」


 宿に戻ってきて、再びフリオ達と合流して報告をする。

 まぁ当たり前だが、死霊術を無効化する、なんて都合の良いスキルの持ち主はいないわけで。


「そっか……お疲れ様、エテルノ」

「あぁ。お前らはどうだったんだ?」

「ん、僕たちもアニキとかシェピアさんには協力してもらえることになったよ」

「それは素直に喜ばしいな」


 ギルド帰りにサミエラにも話をしてきたが、全員が全員快く協力してくれることになったようで何よりだ。


「で、ミニモは何やってんだ?」

「いえ、リリスちゃんにお土産を貰ったので、先に頂いていたんですよ」


 あぁ、道理で静かだと思った。


「ちなみに何食べてるんだ?」

「スライムの死骸ですね」

「言い方それで定着したのかよ」


 アニキの店のスイーツだな。だがスライムの死骸なんて呼び方は食欲を削ぐ。誰だそんなことを言い出した奴は。


「……俺だったわ」

「え、何がですか?」

「いや何でもない。気にするな」


 さて、森にいる不死の魔獣たちだったが、スキルでも魔法でも撃退不可能、剣でいくら切っても無駄となると……


「無理だなこれ。どうしようもないわ」

「またエテルノはそんなこと言って……この町を見捨てるわけにはいかないでしょ?」

「それはそうなんだが……」


 かといってどうしようもないんだよな。

 と、ミニモが手を挙げた。


「私いい案ありますよ!」

「え、本当かい?」

「もちろんです!私がそんなに信用できませんか?」

「できないな」

「できないね」

「酷い?!」


 信用できないというか、俺たちが予想してないことをしてくるから怖いんだよな。ダンジョンの壁を壊したりとか干し肉噛みちぎってたりとか。


「ミニモ、頼むから大人しくしててくれ」

「まだ私何にもしてないんですけど……」


 不満そうな顔をするミニモ。だがその手には干し肉が握られている。

 

「で、どんな案なんだ?そこまで言うならさぞかし素晴らしい作戦なんだろうな」

「えぇ、もちろんです。ずばり……食べちゃえばいいんですよ!」

「魔獣を?」

「魔獣をです」

「却下」

「な、なんでですか?!」


 むしろなんでそんな作戦で行けると思ったんだ。俺はフリオと目を合わせるとため息をついたのだった。


***


「あ、エテルノさん!私もっといい作戦を思いつきましたよ!」

「却下」

「せめて聞いてからにしてくれませんかね?!」

「……聞いてやる」


 話し合うこと約一時間、俺たちは何の作戦も立てられないでいた。

 

 こうしてるとあれだな。俺が一人で追放されるための作戦を立てているときのことを思い出すな。

 何故だかこんなことになっているが、俺はもともと追放されるためにこのパーティーに入ったんだよな。


 作戦がネタ切れを起こし、若干フリオ達にも情が沸いてきてしまったために頻度を落としてはいるが……真剣に今後どうするか考える機会も、いつか作らなくてはならないかもしれないな。

 少なくとも、ここに至るまでに俺がいろいろな悪事をしてきたのは事実だ。生き残るためとはいえ、しっかりとその代償は払うべきだろう。


 ま、今はやらないんだけどな。そのうちでいい。


「で、ミニモの考えた作戦って言うのは?」

「それはですね……」


 と、地面が大きく揺れた。振動が伝わり、宿の床がミシミシと音を立てる。


「な、なんだ?」

「珍しいね、どうしたんだろう……」

「……エテルノさん、ちょっと行ってきますね。怪我人が出ているかもしれないので!」

「お、おう。行ってこい」


 ミニモがさっさと出て行ってしまい、部屋には俺とフリオとグリスティアが残された。


「……ミニモは本当にこういう時行動が早いよな」

「だね。これで普段からしっかりしてくれていれば完璧なんだけど……」

「そうよね……もう少しだけ普段からぴっしりしてればあの子もモテるでしょうにね……」

「まぁ顔は良いもんな」


 顔はな。ナンパされるレベルで顔は良いもんな。

 性格は、あまり良くないというか何と言うか、ストーカー気質というか何というか。

 

「そういえばエテルノはミニモと付き合ってるらしいけど、きっかけとかって聞いても良いかな?」

「は?」

「え?」

「え、い、いや、どこからそんな情報が流れてるんだ?」


 おかしいだろう。そんなことあり得ないのに何でそんなことが--

 

「ん、普通にリリスちゃんから聞いたわよ」

「……とりあえず、それは間違いだな。俺はミニモに恋愛的な意味で好意を抱いたことは一度もないぞ」

「つまり、友人とかパーティーメンバーとしてなら好意を抱いていると」

「……チッ」

「物凄い顔で舌打ちするじゃん……」


 それはそうだ。

 俺は、俺がミニモに好意を寄せられていることは分かっている。他人からの感情に気づかないほど鈍感ではないのだ。


 そしてそれを分かったうえで俺はミニモを避けている。理由は二つ、一つはミニモの感情を受け入れた時に俺がパーティーを追放されにくくなってしまうから。

 もう一つは『ぶっちゃけなんで好かれているのか全然分からないから』だ。


 なんとなく思い返してみても、俺はミニモに好かれるようなことをやった覚えがない。なんなら初対面から好感度マックスレベルの対応をされていた気がするのだ。

 部屋に侵入されるわ、やたら懐かれるわ。

 好かれていたとしても嬉しいなんて感情は通り越して怖いんだよな。


「……とりあえずリリスのところに行って訂正してくる。ちょっと留守にするぞ」

「え、そんな急いで行かなくても……」

「馬鹿言え!ミニモが調子に乗ったらどうするんだ!」


 微笑を浮かべてこちらを見ていたフリオを一喝すると、俺は急いで宿を出て行ったのだった。


***


「エテルノって、ミニモのこと凄い気にかけてるよね」

「そうね。でも恋愛感情はないのね……」

「どっかで聞いたことあるんだよなぁ、ああ言う性格の人の別名。なんだっけ……」

ツンデレ。

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