教えて!死霊術とアンデッド
「親玉を突き止める……ってそんなの、どうやってやるの?」
「なんかこう……魔法とかスキルとかで何とか……」
「ふわっとしてますね」
言っては見たものの、フリオは何も考えていなかったようである。
提案するならもう少し考えていて欲しかった。
「だが俺達で調べるというのは賛成だ。森に行けないのは困るからな。あの魔獣たちが町にいつ来てしまうかも分からない状態でどうこうできる気もしない」
「ですねー。他の冒険者の人に任せておくのは不安ですし……」
「さて、どうするかだが……グリスティア、何か良い魔法とか無いか?」
「んー……ちょっと考えさせて……」
グリスが考え込んでしまったので俺も使えそうなスキルが無いか考えてみる。
アニキのスキル……はダメだな。不死身の魔獣たちを隔離することは出来ても根本的な解決にはならない。大本の術者を倒したいところだ。
俺のスキルでは論外、フリオのスキルも調査には向いていないし、サミエラもフィリミルも駄目だな。
……リリスは、どうだ?
「なぁ、リリスのスキルは使えないか?」
「リリスちゃんですか?」
リリスのスキルは魔獣を従えるスキルだ。場合によってはあの魔獣たちが暴れるのを防ぐことができるかもしれない。なんならあいつらを生み出した張本人まで案内させることだって……
「んー、正直効かないと思うけど……とりあえずリリスちゃんにも今度話をしてみようか?」
「あぁ。それがいいだろうな」
さて、とりあえず他にも案を練りたいところではあるのだが……
「今日はもう遅い。とりあえず寝て、話の続きは明日にしよう」
「そうだね、僕もそろそろ眠くなってきたよ……」
フリオとグリスティアが俺の部屋を出て行く。
まぁ今後、知り合いには順々に声を掛けていくか。森の魔獣は皆の問題でもあるからな。信用できる奴には計画に協力してもらうとしよう。
……はぁ、いつになったら俺は追放されることができるのやら。
「で、お前はなんでここに居るんだ?」
「……まだ帰るわけにはいかないので!」
「帰れ」
部屋にとどまろうとしていたミニモをつまみだし、俺はさっさと眠りについたのだった。
***
「死霊術ねぇ……」
「うん、それでアニキさんたちの力も借りられないかなと思って」
エテルノの部屋で話した翌日、僕とグリスはアニキの店へとやって来ていた。
今日はアニキが肉屋の方に居たので肉屋の方にやってきたけれど、スイーツを食べられなかったために若干グリスは不満げだ。
「俺は死霊術については詳しくは知らねぇんだが……そういうのは聖魔法?だかなんとかで倒せるんじゃねぇのか?」
聖魔法。魔法の中でも希少な種類だとされ、教会に所属する人や『聖女』なんて言う風に呼ばれる人が使っていることが多いらしい。
ミニモの治癒魔法も大まかにいえば聖魔法に該当する。
「実は死霊術で生み出したものについては聖魔法は効果が無くてね……」
「え、そうなのか?」
「そうだよ」
というのも、聖魔法が効くのは『アンデッド』と呼ばれる魔獣なのだ。ややこしいけれどアンデッドは『死んでいるように見える』けれど生きている魔獣だとされている。
例えば、アンデッドはいくら体をボロボロにしても再生する『再生能力』を持っている。
体は骨だったり腐った肉体だったり、死体が動いているように見える。
けれど、死体がアンデッドになるわけでは無いのだ。
死体なんて無い場所にもアンデッドは突然湧くし、使役魔法だって効く。
要するに、普通の魔獣とあまり変わらないということだ。
「あー……要するに、アンデッドは殺しにくいだけのただの死体っぽい魔獣で、トレントが燃えやすいみたいにアンデッドには聖魔法が効く、ってことか?」
「うん、もっと詳しく話すとややこしいし、その認識で大丈夫だよ」
「で結局、死霊魔術とはどこが違うんだよ?」
「簡単に言っちゃえば、死霊術は死体を操る魔法なんだよ」
だから、魔法を使うときは死体が必要になる。
どちらかというと物を操ったり、操作したり、という魔法を応用したのが死霊魔術になる。
死霊魔術とアンデッドの違いは大きい。アンデッドは死体が無くても現れるが聖魔法が効く。
死霊魔術で操られた死体は、死体を事前に用意する必要があるけど誰かに動かされているだけの死体だから聖魔法が効かない。
つまり……
「結局、どっちもどっちで戦いにくい強敵、ってことよね?」
「シェピア!居たの?!」
店の奥からシェピアが出てきて、アニキの肩に手を掛けた。
シェピアはグリスティアが魔法を学び始めたころからの友人だ。ダンジョン探索を一緒にしたこともあって僕にとってもなじみ深い相手である。
でも急に出てこないでほしい。正直びっくりした。
「あらグリスティア、久しぶりね」
「うん!久しぶり!」
シェピアは確か、アニキの店でスイーツを作るのを手伝ったり店の内装を決めたりしていたはずだ。
そう考えると驚いてしまったけれどここに居るのは別におかしいことでもなんでも……
「……あれ?シェピアは何でここに居るんだい?」
「何でって……何よ?」
「いやほら、スイーツのお店の方に居るものだとばっかり思ってたから……」
そう。ここはアニキの経営する『肉屋』なのだ。少し違和感がある。
「あぁ、そう言うことね。そんなの決まってるじゃない。そこの馬鹿を連れ戻しに来たのよ」
「……まさか、アニキさんがさっきから黙ってるのって……」
アニキの方を向くと、肩に手を掛けられた状態のまま小さく震えていた。
「しょうがねぇだろ?!俺はスイーツよりも肉の方が好きなんだよ!もっと肉のレシピも増やしたいんだよ!」
「そんなの子分にでも任せておけばいいじゃない。店舗を増やすんでしょ?もっと働きなさい!」
「は、離せぇえええぇぇ!!」
シェピアがアニキの耳を引っ張って店の外へと出て行く。アニキが抵抗してはいたものの、シェピアの杖の先を突きつけられて大人しくなった。
……うーん……。
何と言えばいいのか。僕が困惑していると、シェピアは楽しそうに笑って言った。
「じゃ、私たちは仕事に戻るわね。グリスティアもフリオもいつでも歓迎よ!また来てね!」
「う、うん……また今度行かせてもらうよ……」
「あと、なんか面白そうなことするんなら私も混ぜなさいよね!」
とりあえず無言で何度も頷く。
アニキを引きずってシェピアが離れていき、僕とグリスだけが店に残された。
「……凄かったね」
「あれでもアニキさんが店長のはずなのよね……」
シェピア、怖い。
連れていかれたアニキのことを思い、僕とグリスは黙祷をささげるのだった。
20000pvを越えました……!
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