禁術師を交えて
「皆さんこんな場所に居たんですか?それはどう探しても見つからないわけですよー」
ミニモがやってきたのはおおよそそれから十分ほど。
肩にはドーラと、カイザーことドーラの飼い鳥がとまっていた。
「ミニモ!久しぶりじゃないの!」
「シェピアちゃんもお元気そうで何よりです!」
シェピアは何の気兼ねも無くミニモと話しているが、僕達からすればそういう訳にもいかない。
僕やアニキ、グリスはミニモが蘇生魔法を使えることを知ってしまったのだから、やはりどことなく緊張した空気が漂っている。
それと、もう一つ。
「ミニモ、服を着替えたみたいだけど……どうしたんだい?」
「あ、これですか?」
そう、僕たちが警戒を強める理由にはそれがあった。
ミニモは町に戻ってきたときとはまた違う服を着ていたのだ。
「しばらく着てましたからね、汚れちゃったので変えたんですよ」
「そうなのかい?帰って来た時にはそんなに汚れてないみたいだったけど……」
「汚れましたよ。別に魔法で綺麗にしても良かったんですけど、せっかく町に帰って来たんだし着替えようかなぁと思ったので!」
「そうかい……?」
どうやってもミニモを疑ってしまう気持ちが拭えない。
本当にどうしろと言うのか。
ミニモが悪いことを考える訳が無いと分かっているのに、蘇生魔法に関係があるというだけでどうしても、どこか疑心暗鬼になってしまうのだ。
「あー、そんじゃミニモはどこにいたんだよ?結構探したけど見つかんなくてなぁ。ドーラが見つけてくれて良かったけどよ」
「私ですか?宿に戻った後は知り合いに挨拶に行ったり、ご飯を食べに行ったりとかですかね。室内にいたので見つからなかったのかもしれないです」
「へぇ。まぁ別にそれなら良いわ。変な質問して悪かったな」
「いえ、それは別に大丈夫ですけど……皆さんどうしたんですか?何か様子がおかしいですけど……」
思わず、口をつぐんでしまう。
ミニモは不思議そうな目でこちらを見ているが、僕からは、上手く誤魔化せるような言葉が出ない。
「あぁそっか。えぇとだな……ディアンが行方不明になった、って話は聞いてたんだっけか?」
「あ、それですか?私も少し調べてみたんですけど誰も見てなかったみたいですね」
「それ以外にもよ、俺の店がどこぞの商人に乗っ取られてたんだよ。多分色々と問題があるんじゃねぇかなと思うが……」
「……アニキさんのお店がですか……。それは、何としてでも取り返さないといけませんね……」
「その相談をしてたってわけだな。変な空気になってたら、すまん」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私もそんなことを知ってたらもっと真剣になってましたし!」
アニキはやっぱりこういう時頼りになるな。
何でもないような顔をして嘘をついたり、論点をすり替えたりする。
今だってミニモの疑問を晴らしつつ丁度話していた議論の内容を伝え、しかも僕たちが蘇生魔法について知ってしまったことを隠し通した。
エテルノがなんだかんだ言いつつアニキのことを認めているのにも頷けるというものだ。
こういう頭を使ったやり取りは、僕には出来ないことである。
「リリスちゃんも協力してくれる、って感じですか?」
「そうそう。私達だけじゃ足りないかなって。私達のお店を乗っ取ってくれた馬鹿にはなんとなく見当がついてるんだけど、まずはなんにせよ情報収集でしょ?それには人数が必要、って訳よ!」
「シェピアは頭でも打ったのか?」
「何よ。たまには私がこんなこと言ったって良いでしょ?」
「お、おう……」
アニキがなんとも言えないような表情をしている。
正直僕も同感なのでアニキを責める気も無いけれど。
いや、よく考えてみると色々な魔法を扱える時点でかなり頭は良い方なんだろうな。
頭が良いからと言って脳筋にならないとは限らないのかもしれない。
シェピアは火力が全てみたいに思ってるところがあるし。
そういえば前にエテルノが、「俺は頭が良いんじゃなくて悪知恵が働くだけだからな」みたいなことを言っていた覚えもある。
実際のところどうなのだろう?
「でどうするのよ?私とアニキでしょ?グリスティアとあんたでしょ?それでリリスとフィリミル……」
シェピアが僕にそんな風に聞いてきた。
そうだなぁ。ミニモにももちろん手伝ってもらえたら嬉しいのだけれど、一人で行ってもらうのは不安だ。
「……ミニモ、ドーラと組んでもらうのは可能かい?」
「良いですよー。ドーラちゃんがいれば小さいところにも入れるでしょうしねー」
「じゃあ、それで」
少なくともドーラが居れば監視、と言う意味ではなんとかなるだろう。
ドーラだとミニモに襲われた時対処できないだろうとも思ったけど、そもそもミニモに対処できる人間がいないからね。
せいぜいがアニキだけど、その場合シェピアが余ることになってシェピアのブレーキ役がいなくなってしまう。
で、あれば空からの偵察が出来るドーラを--
「フリオさんどうしたんです?顔が怖いですよ?」
「……あぁ、すまないね。大丈夫だよ。それじゃあ皆、聞き取りが終わったらも一度ここで会おう」
今はミニモの事よりもディアン。そしてアニキのお店のことだ。
考えを切り替えていこうじゃないか。




