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開かれた扉

「さて、何はともあれ町まで戻らないといけないが……どうする?」

「そうだねー……ミニモについてはまだしばらく君に任せないといけないみたいなのはそうなんだけどどうしようかなぁ」

「何と言えばいいのか分かんねぇけど……しばらくは放っておいて良いんじゃね?悪いことはしてねぇみたいだしよ」

「そういう訳にもいかないんだよ。下手に手を出すのはまずいけど放置が一番まずいんだよねぇ」


 俺の意図はまだ明かさないままに一応作戦を立て終えたのはフリオ達を見送ってから三日後。

 

 だがようやく話がついたときになって何やらマスクとオーウェンが言い争いを始めた。

 いや、言い争いとは少し違うな。マスクが劣勢、一方的に言われ続けていると言う感じだろうか。

 確かにオーウェンとマスクでは言い争いにならないだろうとは思っていたけどな。ここまでとは。


「オーウェン、ミニモはそんなに悪い人間ではないと言ったはずだが?放置が許されるならそちらで頼みたい」

「だからダメなんだってさぁ。禁術を放置したってろくなことにならない。第一今回は蘇生魔法使いを殺すためにここまで来たんだから……」


 ……下手に刺激するのもまずいか。

 とりあえずマスクの内心が若干変わり始めているのが分かっただけでも良しとしよう。

 後々うまく巻き込めば、マスクをこちら側に引き込むのも可能かもしれないしな。


「分かった分かった。そういうことならしっかりやることにしよう。ただしお前らもしっかり約束は守れよ?」

「あー、ね。しっかりマスクが送り届けるとも」

「俺も次の町まではついて行くからな?それを忘れてもらったら困るんだが」

「はいはいーっと……もう僕は寝るからいいかい?」


 オーウェンはけだるげにその場に寝っ転がった。

 こうなるともう、話しても無駄だな。


「もう出発するぞ。それで良いんだな?」


 やはりオーウェンからの返答は無い。

 俺はそれを、『了承』と受け取った。


「……マスク、それじゃあ行くぞ」

「あいあーい」


 しかしマスクはめげないな。

 こいつとしてはかなり慣れているのだろうが……傍から見るとかなり変わっている。

 今だって、劇団のところまで向かう重労働は全てマスク任せで、オーウェンは何もしていない。

 これだけ凄い魔法を連続で使うにはかなり魔力を使うはずなのに。


「……なぁ、少し気になったんだが……お前、オーウェンに文句とか無いのか?」

「ん?……あぁ、ねぇよそれは。オーウェンはそこに『いるだけ』で価値があるんだよ。あいつがその場に居なかったら危なかったことだって何度もある。だから、あれで良いんだ」

「……そうか」


 その場にいる、とは何のことなのだろうか。

 オーウェンは頭が良さげだったとはいえそこまでの実力者には思えなかったが。


「……スキルか?どんなものなのか教えてもらいたいもんだな」


 考えてみれば当然の話だ。

 オーウェンの持つスキルについては何も聞いたことが無かったが、だからと言ってスキルを持っていないなんてことは考えられないだろう。

 何しろ、禁術なんかと関わるような危険な立場にいるのだ。

 魔法の腕や筋力、知能以外にもスキルが無いと無事に立ち回れないはずだ。


「いやぁ……悪いけど、それは誰にも言わねぇようにって言われちってるんだよ。悪ィな!」


 そう言ってマスクは笑った。

 本当に仮面越しでもコロコロ表情が変わる奴だな。

 さて、まぁスキルは教えてもらえないであろうことは理解していたから構わないが……


「じゃあ代わりと言っては何だが、今までどんな禁術使いを始末してきたのか教えてくれるか?」

「お、それなら構わねぇよ!ちょっとした詫びにはなるはずだしな!」


 ふむ、じゃあそこからオーウェンのスキルを推測するとしようか。

 まず今のところの条件は……『その場にいるだけで効果を発揮する』ことぐらいか。

 俺の知っている範囲で言うと視覚に関係するスキル、結界に関連するスキル……あぁ、サミエラやフィリミルのように『未来が見える』なんてものだとしっくりくるかもしれないな。


「マスク、オーウェンはじゃんけん強かったりするか?」

「え?いや別に……」


 なるほど、じゃあ別に未来は見えてないな。


 そうこうしているうちに再び劇団の居る部屋まで辿り着いて、前見たようにアニキが壁を溶かす。

 今日は団長とやらも脱走しようとせずに部屋の奥に座っていた。


「よう。約束通りもう一回来たぞ」

「あ、あんたね……」


 何か言いたげではあるが、アニキのことを気にしているのか言おうとしない。

 まぁそれもそうだろう。今までの俺達の会話は俺の飼っているスライムを通してこいつらに全て聞こえていたのだからな。


「俺が前にやった髪飾り、気に入ったか?」

「え、えぇ……」


 聞いていたのなら説明の必要も無いが、アニキに感づかれないようにするためにもう一度俺は説明してやることにした。

 オーウェンの主張は『劇団のメンバーを町に戻してやると、ミニモの戦いに巻き込まれるかもしれない。だから保護、監禁した』と言う物だった。

 そんなわけで俺はこう提案してやったのだ。

 『監禁しないで、こいつらを普通に別の町まで送り届けてやれば良いんじゃないか?』と。


 ……まぁ他にもいろいろ言っていたけれど、ざっくり言えばこうだな。

 細かい説明は省いて伝える。


「話し合いでお前たちを出してやることに決まったんだが、前居た町に戻してやるのは中々厳しくてな。だから、別の町までお前たちを送り届けることになった。その護衛が俺とマスクってことで、これからしばらく、よろしくな?」

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