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お留守番マンドラゴラ(一家に一匹)

「皆さんお茶はいらないっすか?」

「え、あぁじゃあ私お茶菓子用意するわね」

「悪いっすねー。多分そろそろリリスも帰ってくると思うっすから」


 リリスとフィリミルの泊っている宿までやってきたは良かったものの、僕たちは待たされることとなっていた。

 僕たちはしばらく依頼を受けなくても良い程度の金額を稼いでいるから構わないが、彼女達はあくまで冒険者。

 今日もどこかに依頼を受けに行っているらしい。


「でもまさかドーラが留守番してるとは思わなかったよ」

「そうっすか?私が行ったところで足手まといっすからねぇ」

「まぁそれはそうだろうけど……」

「前に私が魔獣に咥えられて攫われかけた時ぐらいから留守番させられることになったっすね」


 ドーラはなにやら棚によじ登りながら言う。

 グリスがドーラを持ち上げ、お茶の用意を手伝っていた。


「リリスもフィリミルもそろそろ帰ってくるはずっすからその辺で待ってれば良いと思うっすよ」

「うーん……まぁ、そうだね……」


 今この場にいるのは僕、グリス、アニキ、シェピア。

 シェピアがどこかに行ってしまったことに気づいていたのか、後でアニキが走ってきたのだ。


 ミニモは、この場には居ない。

 ふとアニキの方を見てみると僕と考えていることは一緒だったらしく、少しだけ窓から外を警戒しているのが伺える。

 ミニモもこの街に居るはずだけれど、今どこにいるのだろう。

 僕達と別れてからミニモと会った人はいないようだった。

 ……何か、おかしなことになっていなければ良いけれど。


「ちょっとアニキお茶菓子出しなさいよ」

「えっ」

「ほら、なんか無いわけ?スライムとかで良いわよ?」

「いやあるにはあるけどな……」


 シェピアがアニキにお茶菓子をねだり、アニキが渋々お茶菓子を取り出す。

 でも普通に出してるけど、それお店の商品にする予定なんじゃないだろうか。


「あっ、悪い。今ゴブリンの肉しかねぇわ」

「よく聞きなさいよ。甘いものが無いお茶会ってなーんだ!」

「お茶会じゃね?あ、ちょ、ちょっと待てって魔法はマジでやめて」


 うーん、いつもの光景。


「まぁその辺でやめてくださいっす。私が甘いお茶を用意するっすから」

「甘いお茶……?」

「えぇ。しかも植物由来の成分なので健康っす」

「基本お茶は植物由来だけどね」


 だってお茶って葉っぱの煮出し汁みたいなものだしね。

 逆に植物由来の物が入ってる方が怖いよ。


 そんなことを考えながらドーラの居るキッチンの方を見てみると、


「っす~いい湯っすねぇ~」


 ドーラが、お湯の入った鍋に浸かっていた。

 まるでお風呂に入ってるかのように。


「植物以外の成分が入ってるね?」

「いや私植物っすけど」

「そういえばそうだった」


 ドーラはマンドラゴラだもんね。

 うん。うーん……。


「で何やってるんだい?」

「出汁とってるっすよ」

「うん、聞かないで良かったね」


 聞きたくも無かったしね。


「マンドラゴラの煮出し汁……」


 アニキがぼそりと呟いたが、グリスやシェピアは気にしている様子は無い。


「まぁそういうことなら良いかしらね」

「そうだねー。あ、でも私結構これ飲むの久々かも……」

「……飲んだことあるのかい?」

「え、まぁ……」


 あー……うん……。


「あ、おい、リリスたちが帰って来たぞ」


 困惑していると窓の外を見ていたアニキがそんなことを言った。

 僕も見てみると確かに、リリスとシェピアが帰って来ていた。

 魔獣の血やら土やらで少し汚れた服を着てはいるけれど、二人とも普通に元気そうだ。


「あー、じゃあお迎えお願いするっす」

「ドーラは行かないのかい?」

「いや今お風呂に入ってるっすから」

「お風呂って言っちゃったよ」


 そこでドーラたちを部屋に残して僕は部屋を出た。

 丁度宿に帰って来たところだったリリスとフィリミルに、声を掛ける。


「やぁ、久しぶりだね」


 僕を久しぶりに見たからか、フィリミルが一瞬で笑顔になる。

 もちろん僕も久しぶりにフィリミルに会えて嬉しいのだけれど、今はどうこうしている余裕は無い。


「フリオさん!お久しぶりです!前にフリオさん達に教えていただいた通り頑張ってみたらですね……!」

「もちろん後でたっぷり聞かせてもらうとも。っと、でもその前に皆が待ってるから、部屋に戻ってもいいかい?」

「はい!」


 こんな時でも無ければフィリミルとも色々と依頼を一緒にこなしてみたりとかしたかったのだけれど、しょうがない。


「あ、先にお風呂入る?」

「あー……そうですね。流石にこんな服はまずいですし……じゃあ、入って来て良いですか?」

「うん。急に押しかけちゃってすまないね。急がなくていいからゆっくり休んでね」


 依頼の後なのだ。しっかり休んでもらわなくてはならない。

 ……ましてやこれから、大変なことに付き合わせるかもしれないのだから。


***


「ァ、が……」


 暗い地下通路、私はようやく最奥まで辿り着いた。


「お久しぶりです皆さん!お元気でしたか?」

「あら、久しぶりね。えぇと……」

「ミニモです。ミニモ=ディクシアですよー」


 最奥で蠢く彼女達に、私は笑顔で言うのだった。

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