地の底より君を思う
「よし、とりあえずなんだが俺の知る限りのミニモの情報はこんな感じだな」
劇団の様子を見に行ってしばらくの後、俺は無事にオーウェンたちのところまで戻って来ていた。
俺達がこの隠れ家を見つける案内役として捕まえた仮面の男もいつの間にか戻ってきており、仮面越しに俺に何か言いたげな視線を向けていることが分かる。
まぁ、無視するが。
俺は戻ってきてすぐにミニモの話を始め、オーウェンと共有できる範囲で情報を共有した。
内容はそんなに大したことでも無い。が、俺が公開しても良いと判断した範囲の情報はほとんど伝えておいた。
その方が効率的に話せるだろうと思ったからだ。
「まさかミニモと同じパーティーだなんてねー。でも情報を集めるには都合が良いねぇ」
「同じパーティーではあるが、俺の協力条件は『誰も傷つけないこと』だからな。フリオの村に会った事みたいに、関係ない人間を巻き込んだらSランク冒険者が最低でも三人、敵に回ると思ってくれ」
「怖ぇなぁ」
マスクが苦々しい顔をしているが、Sランクと言っても俺とグリスティアとフリオがせいぜいだからな。
後は事情を説明すればシェピアと何人か……Sランクでは無いが、アニキやリリス、フィリミルなんかも候補に含まれるだろう。
「おっけー、分かった。なんとかミニモ以外を傷つけないようにやって見せるとも。君がミニモの情報をしっかり得てくれればその分周りへの被害も減るわけだからね。さぞかし頑張ってくれるんだろうさ」
……まぁ、こいつらがミニモを傷つけるのなら後々必ず敵対はすることになるだろうけどな。
今は少しでも禁術やら何やらについて知っておくのは大事だろう。そのために、こいつらからの好感度を得ておく必要がある。
「ミニモの弱点だが……正直無いように思えるな。解毒魔法があるから毒は無効、蘇生魔法が使えるなら死なないだろうし、蘇生魔法の応用で筋力強化までしてくる。対処のしようが無いぞ?」
これはあくまで本当のことだ。ミニモに対処できるとは思えない。
今までは蘇生魔法の存在を知らなかったために、ミニモでも即死するレベルの攻撃を受ければ死ぬだろうと高をくくっていたのだがそれも通用しないと分かった今、どんなふうに対処すればいいのやら……
「か、監禁とか、駄目、なんですかね……?」
そんなことを言い出したのはテミル。
こいつも劇団のメンバーのはずなのだがすっかりこの空気感に溶け込んでいる。
「監禁は無理だろうな。せめて魔法の使えない結界か何かに閉じ込める……いや、そんな結界は聞いたこと無いから自分でそんな感じの魔法を作るしかないか……?」
「魔法を作る……出来るのかよそんなこと?」
「あぁ。やり方は模索するが探知魔法を阻害されていた実績がある以上……あっ」
「お?」
そういえば探知魔法が妨害されていたのは……
「お前ら探知魔法妨害したりとかできないのか?」
「いやいやまさかぁ。そんな禁術紛いなこと僕達には絶対できないねー」
「……嘘では無いんだろうけどな……」
やれるのならばあのタイミングで急に探知魔法を使えるようにする利点はこいつらには無かったはずだからな。
と、すれば。
「もしかしたらかもしれないが、ミニモやお前ら以外にも敵が居た可能性があるな」
「……それが本当なら結構大変そうだねー」
今のところ敵が居たかもしれないのは……
あぁ、そうだ。そういえば違和感があったんだ。
俺達がマスク達を追っているときに、崖の上から突き落とされたことがあったが、あれはいったい誰がやったのか。
逃げたマスクを追っているのに、急に背後からマスクが現れて俺達を突き落としたとは考えにくい。
で、あるならば。
「お前ら多分俺達を崖から突き落としたりしてないよな?」
「え?あぁ、うん。僕では無いかな」
「俺も違うぜ?多分そん時嬢ちゃん連れて逃げ回ってたんだわ」
だろうな。
それと、もう一つ。
「で、お前らの中には天と地がひっくり返って地面も真っ二つーみたいなことができる人間もいないと」
「いる訳ねぇだろ……?」
そう、ミニモやシェピアが遭遇したという敵の事である。
なるほど。こいつら以外にも何人か敵が居るとみて間違いないな。
どうやら警戒は怠れないようである。
今頃街に向かったフリオやアニキはどうしているのだろうか。
ミニモが何かやらかしたりとか、してないよな?
そんなことを思って俺は表しようのない不安に駆られるのだった。




