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子分とアニキと行動派魔法使い

「よーっす久しぶりだなぁお前ら!」

「ア、アニキ?!なんでここに居るんすか?!」

「おう、ちょっとな」


 サミエラの孤児院、その奥の奥にやってきた俺はそこにうずくまっている子分達を発見した。

 そこらに店に置いてあったであろうものが散乱し、なんとなく汚されてはいるが確かに、俺の子分達がそこに居たのだ。


「……少し数が少ないな。全員揃ってるのか?」

「あ、多分今何人かが出かけてるんでそれじゃないすかね」

「おう、そうか」


 しかし……孤児院の方に避難していたか。てっきり路地裏の方にでも逃げ込んだものと思ってたんだけどな。

 俺らが留守の間店のことはサミエラに任せていたのだが、しっかり子分達の面倒も見ていてくれたらしい。


「あ、あの、アニキ、店のことなんすけど……」

「あー、それな。なんか行ってみたら酷いことになってたけど、アレどうしたんだ?」

「そ、その……す、すいませんっしたァ!!」


 一斉に子分達が頭を下げ、思わず困惑する。

 いや、何となく面倒事に巻き込まれたのだろうとは思うが……俺はそこまで怒ってもいないのだ。

 しかも今回は、敵が悪かった可能性だってある。


「まぁ……とりあえず話を聞かせてもらおうじゃねぇか?」


 こういうのは俺よりもエテルノとかの方が得意なんだけどな。

 そんなことを考えながら俺は近くにあった椅子を引き寄せて腰掛けるのだった。




「……ってわけで、あのおっさんが急に出てきたかと思ったら追い出されちまいまして……」

「はぁー、なるほどなぁ」


 長々と子分達の話を聞いていて、何となく状況が理解出来た。

 要するに、俺の店を乗っ取りに来た奴らが居たようだな。さっき店の前に居たあの商人がその筆頭と。

 多分最近の俺の店の利益を狙ったものだろう。今までも共同経営がどうとか言われたりもしていたのだが、俺が取り合わなかったために業を煮やしたらしい。


「しっかし……俺のいない隙を狙ってくるのは卑怯だよなぁ……」


 先程まで俺のそばに居たシェピアは話に飽きたらしく、もうどこかへ行ってしまった。

 俺か、もしくはシェピアだけでも残っていれば少しは違った結果になっていただろうに。そう考えると少し惜しいな。


「あ、あの、ほんとすいませんした。このお詫びは後でどうとでも……」

「あー、いいわ別にそんなん。普通に俺の采配ミスだかんなこれ。まぁ気になるようなら今後なんかで返してくれや」


 こういう商人の奴らのやり口はギルド長だった時からよく知っている。

 まずは相手の店が建っている土地やその周囲を買収して、「自分の土地だから」などと言いながら嫌がらせをするのだ。

 それでもし相手から苦情があれば占めたもの。

 契約とか何とか言いながら自分有利な取引を持ちかけ、店の買収に及ぶ……つってもそんなことは気づくから普通ないんだが、まぁ子分たちじゃしょうがない。

 子分たちは言いくるめられてしまったと見るべきだろう。


「あ、そういやサミエラは?」

「サミエラさんはあの……頑張ってくれてたんすけど、途中で脱獄がどうとかで俺達も頼るに頼れない状況になっちゃいまして……」

「あー」


 そんな状況でディアンが脱獄した、と。

 マジで大変な状況だなこれ。


「おっけ、じゃあ後は俺が何とかするから引っ込んでていいぞ」


 何とかすると言ってもどうするか、なのだが……


「まぁ腹立つしなぁ」


 とりあえず瓦礫の山の下敷きにしてやったが、あれで易々と死んでくれるような相手でもないだろう。

 

 であるならばアイツの悪事を暴いて、それをダシにして店を取り返せばいい。

 つまるところ、俺が以前エテルノにされたことと似たようなことをしてやるわけだ。経験者だから言えるが、結構キツイんだよなこれ。

 エテルノにも後で協力してもらって、ボコボコにしよう。それこそアイツが二度と商人が出来なくなるレベルまで。


「……あれ?マジでシェピアどこ行った?」


 先程から話を聞きながら少し探していたのだが、孤児院のどこにもシェピアがいる様子はない。

 ……あれぇ……?なんか嫌な予感が……


 とりあえず、孤児院の入り口近くに居た子供を捕まえてシェピアを見なかったか聞いてみる、と……


「え?あっちの方に行ったよ?」


 指さす先は、俺の店がある方角。


「…………」


 まぁそうだよな、なんかシェピアもあの商人にイラついてたもんな。

 そりゃ子分達から詳しい話聞いたら、もっかい魔法撃ち込みに行きたくなっちゃうよな。




 もはや俺としては、あの商人の無事を祈るばかりである。可哀そうに。

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