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不味い飯のタネ

「えー、弁解させてもらっていいかしら?」

「まぁ、うん。言ってごらんよ」

「私別に元々ご飯を食べたかったわけじゃなくて、オーウェンがそんなに悪い奴じゃないんじゃないかと思ってここまで着いてきたんだけど、今さっきオーウェンたちが劇団の皆を攫ったんだって気づいたのよ」

「だまされたと」

「そう、そういうことね!」


 グリスティアが口いっぱいに肉を頬張りながら言う。

 その状態で言われても説得力無いな。良いのかそんなんで。


「あ、そういうことなら良いかな」

「良いんだ」

「ん?何かあったかいエテルノ?」

「いや……まぁフリオが良いなら俺は構わないけどな」


 グリスティアも悪気があったわけでは無いだろうし、俺はあくまでフリオの補佐をする立場だからな。

 文句がある訳でも無いし、良いだろう別に。

 若干驚きはしたが。


「おい兄ちゃんそっち座れよ。今飯持ってくるからよ」

「いや俺たちは……」


 なんで俺達も一緒に食事を取る流れになってるんだ。どういうことだよ。


「おいエテルノ、食事のお招き断るのも失礼だろ?」


 見ると、アニキが既にテーブルについている。

 石でできた椅子に座って礼儀正しく背筋を正しているアニキを、すぐに俺はひっぱたいた。


「痛ぇ?!」

「なんで俺達も食うことになってんだと思ったらお前のせいか?!敵の出した食い物を軽々しく食ったらダメだってお前なら分かるだろうが?!」

「あ、それ私も料理手伝ったから大丈夫よ。毒は無いわ」

「なんでグリスティアも手伝ってんだよ?!」


 もう訳が分からないんだが。


「おら兄ちゃんたち、ちょっとしたことは水に流して今は美味い飯を楽しもうや。腕によりをかけたんだぜ?」

「私がね」


 なんだ?ここまで来ると俺がおかしいのか?

 ただ、もう今更騒いだところで無駄、ということはあるかもしれないな。

 諦めて、俺も席に着く。

 ひんやりとした地面の感触が、やけに心地いい。

 マスクは湯気を立てるスープを持って来ていた。


「美味しそうだねエテルノ」

「この状況でその感想が出せるお前を本当に尊敬するわ」

「美味しそうだなエテルノ」

「うっさい黙れ」

「なんで俺にはそういう対応なんだよ?!」


 なんでって、アニキだからだが?


 そんなこんなで、とりあえず毒が含まれていないか魔法で確かめてから料理を口に運ぶ。

 ……うん、美味しいには美味しいんだが。


「これ魔獣の肉使ってるだろ?」

「おぉ、よく分かったなお前!」

「おう、まぁそういう料理を専門にしてるみたいなもんなんでな!なんならレシピとか教えてやっても良いんだぜ?」

「マジか?!教えてくれ!」


 アニキとマスクがなんというか、馴染んでいるな。

 喋り方もそうだが性格も似たようなところがあるらしい。

 アニキが二人に増えたような錯覚にすら陥るが、片や移動式倉庫、片や凄腕の土魔法使いである。

 どっちが凄いとか言う優劣は無いはずなのだが……


「アニキ、一応そいつ敵なんだが……」

「マスクは敵じゃねぇよ。話してみて分かった。こいつは俺と同じタイプだ」

「だろうな」

「もしかしたらこいつと俺は仲良くなれるかもしれない」

「だろうな」

「なんならこいつを俺の店で雇いたい」

「だろ……は?」


 何言ってるんだこいつは。


「ところでマスク、なんでお前は洞窟でえーと……フリオと、こっちの目つきの悪い奴を襲ったんだ?」

「誰が目つきの悪い奴だ」

「いや、なんか目つきが悪かったから敵なんじゃないかなと」

「よーし、完璧に喧嘩売ってるな?」


 マスクもアニキも魔法で吹き飛ばしてやろうか。

 いや、体術で勝負しても良い。

 俺のスキルのおかげで俺を追放した奴と並ぶレベルには体術も極めてあるからな。筋骨隆々のマスクにだって負ける気はしないぞ。


「まぁ目つきがどうって言うのは流石に冗談なんだけどよ、俺たちはこの、嬢ちゃんたちを保護しなきゃなんなかったんだよ」

「……保護?」

「そそ。で、そんな状況で嬢ちゃんたちを追ってる奴らが居たらそりゃあ戦うだろ?」


 保護、ね。


「何のために保護なんてしてるんだい?よかったら聞かせてもらいたいんだけどさ」

「んんー、ま、『禁術』だな」

「禁術?」


 バルドの事か?だがバルドに関してはとっくに俺達が殺したはずじゃ--


「なんつうかなぁ。その、俺たちは禁術を保護したりとか、隠したりとかする役目があるんだけどよ、なぁんかこの辺に禁術使ってる奴が居るっぽいんだよな」

「……死霊術師のことなら俺達が既に殺したぞ?」

「いや死霊術とかならまだ良かったんだけどな。どうも調べてみた感じだと何個か禁術の使い方っつぅかなんつうかが持ち出されてんのよ」

「もったいぶってないで早くなんて言う禁術なのか教えてくれ。そんなに暇じゃないんだ」


 そう言ってやるとマスクは全体的に汚らしい印象のもう一人の男に話しかける。


「なぁオーウェン、この辺知られたら殺さなきゃいけないんだっけ?」

「あぁいや、そこまでなら大丈夫だよー」

「めちゃめちゃ軽く物騒な話するね?」


 やっぱりこいつらも倫理観壊れてるな。

 禁術から守るためとか言って誘拐監禁してる時点で察してはいたが。


「あー、えぇとな、今のところ分かってるのは蘇生魔法を使う奴がこの辺に居るってことだけだ。他にも色々持ち出されてるっぽいんだがそっちは調査中」

「蘇生魔法……」


 フリオが、呟いた。

 その横顔を見てゾッとする。

 フリオらしからぬ、鬼気迫る表情。一瞬グリスティアと目が合って、すぐに目を逸らされる。

 どうやらグリスティアも、フリオの表情に気がついたようだ。

 

 マスクはそんな表情に気づくことも無く、飄々と言ってのける。


「蘇生魔法を使ってるらしいのは、ミニモ=ディクシアっていう女の子らしいんだが……なんか知らないか?」

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