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女子会兼ダンジョン探検

「えーとですね、あれはフリオさんが出た後の話なんですけど……」


 俺達が問い詰めると、ミニモはそう前置きをして話を始めた。

 ミニモの横にいるゴブリンは、やたらとミニモの言うことに感心する様子を見せているようだった。


***


 エテルノさんを見送り、私は本格的に暇になっていました。だってほら、他にやることも無かったし。

 だから私は、リリスちゃんから声をかけられたときすぐに返事が出来たんです。


「ミニモさんミニモさん、今お暇ですか?」

「リリスちゃん!暇ですよー!」

「さっきB班の人と話してたんですけど洞窟の壁を掘って広げるのを手伝ってくれないかーって言われまして、よければミニモさんもどうかなーと」

「おー!そんなのもう、任せちゃってくださいよ!」


 フリオさんもエテルノさんも頑張ってるんですから、私も頑張らなくっちゃいけないでしょう。そんな考えの元、私はリリスちゃんに誘われた洞窟堀りについて行くのでした。


***


「だりゃあー!」

「す、すごい……」

「でも魔法を使える人と比べると少し遅いんですよねー」


 リリスちゃんが私の方を見て感心した顔を見せてくれました。

 でも、私は治癒魔法こそ使えるものの、グリスさんやエテルノさんみたいな魔法は使えませんからね。だから今はこうしてつるはしを全力で振るっているわけですが……


「……あれ?」

「どうしたんです?」

「いえ、あの……この壁が結構硬くて崩せなくって……」


 つるはしを振るう手を止めているリリスちゃん。硬い地層にでも当たっちゃいましたかね?

 ……多分、こういう時エテルノさんやフリオさんなら手伝うんだろうな、と思うと私も手伝いたいような気がしてきます。不思議ですねこれ。


「じゃあ私がやりますよー……っと、えい!」


 治癒魔法の応用で筋力を増やし、つるはしを振り下ろしてみると、ものすごい金属音。


「わ、耳がキーンとしますね……」

「み、ミニモさん!つるはしが!」

「え?」


 手元を見るとつるはしが根元からぽっきり。あちゃあ……これはエテルノさんにばれたら怒られるやつですね……。


「……これって後で直してもらえますかね?」

「いえ、あの……ここまで行くと買った方が……」

「やってしまったっ……!」


 こうなったらしょうがないです。諦めていきましょう。

 諦めが肝心とエテルノさんも言っていた気がしますから。

 さて、それならどうするかというと……


「結局世の中っていうのは拳なんですよねー」

「え?」

「せいやぁ!!」


 土煙を立てて崩れる壁。ま、私にかかればこんなもの、大したことないですね!


「えっ……?ピッケルが曲がるほどの壁ですよねこれ……」

「ですねー」

「あの……なんで手が無事なんですか……?」

「治癒術で治療し続けてますからね」


 治癒術で筋力増強してはいますが、それでも無理に殴ると手は傷ついちゃいますからね。痛いのは嫌なので痛みを感じる前に治療することで解決、というわけです!

 この状態の私は首が斬られても死なない自信があります!と、リリスちゃんに伝えてみると――


「Sランクの人って倫理観がどうかしてるんでしょうか……?」

「そんなことないですよ!痛くないから出来るんですから!」

「だとしても私なら出来ませんね……」


 うーん、エテルノさんに比べるとまだまだだと思うんですけどね。

 でもとりあえず壁は粉砕して……って、あれ?


「これ、向こうに通路みたいなのがありますね?」

「ほんとですね。この先に何かありましたっけ?」

「いや、無かったと思いますけど……」


 少しだけ通路の先を見てみると、通路の遠くの方に誰かがいるのが見えました。あの人に聞いてみましょうかね?


「あのー、すいませーん!」

「ま、待ってくださいよミニモさーん!」

「ギ?」


 振り向いた人の顔は緑、牙が口から突き出していて、つまるところ――


「ゴブリンにそっくりな人……?」

「普通のゴブリンだと思います」


 うーん、リリスちゃんもそう思いますか。じゃあこのゴブリンさんには申し訳ないですけど、倒さなきゃいけませんね。ってあら?


「ギギィ!」

「逃げちゃいましたね」

「ミニモさん怖いから……」


 ゴブリンに同情の目を向けるリリスちゃん。でもおかしいですね。ゴブリンのような魔獣は人を見たら何があっても襲ってくるはずなのに。まさか、ですけど……


「リリスちゃん、変なこと聞いても良いです?」

「なんですか?」

「私くさいですかね?」

「本当に何を言い出したんですか。臭くないですよ」


 良かったです。でもまさか、本当に私が怖くて逃げだすってことは無いですよね?

 だって別にそんな、好戦的でもないはずですし……。

 ゴブリンが逃げ込んでいった土壁の通路は、随分奥に続いている気すらします。

 ざらざらした触感の土壁は明らかに人工の物だと私は考えました。

 

「とりあえず追いかけてみましょうか?」

「そうですね。ゴブリンも住処を突き止めておかないとダメですよね?確か」

「そうしておかないと怒られちゃいますからねー」


 特にエテルノさんとか、優しいけど結構厳しいですからね。ちゃんと仕事はしなくちゃいけません。


「それなんですけど、ミニモさんってエテルノさんのこと結構気にしてますよね?あんまり付き合いも長くないって聞いたんですけど……」

「確かに長くはないですね。でも私はフリオさんでも知らないことを知ってるんですから!」

「ろくでもなさそうなんで聞かないことにしますね」


 リリスちゃんが冷たい。あとでエテルノさんにちょっかいを出してこの不満は解消するとしましょう。


「あ、そういえばリリスちゃんはフィリミルくんとうまくいってるんですか?」

「え?」

「いや、二人とも仲良さそうだけどあんまりデートとかできてないんじゃないかなぁと」

「デートも何も……お兄ちゃんですよ?」

「……え?」


 おに……え?お兄ちゃんですか?


「はい、フィリミル・ミクシルは私の兄ですよ?」

「……これは今日の報告書に書いて置かないといけませんね」

「なにをですか?!」


 もちろんリリスちゃんとフィリミルくんの関係性の真実ですが。これを聞いたらさすがのエテルノさんでも驚き顔になるんじゃないでしょうか。

 つい想像すると、自分でも口角が上がるのが実感できますね。


「っと、多分ここがさっきのゴブリンの住処ですね」

「そうみたいですね。ミニモさん、どうやって倒します?」


 もちろん、そんなのは決まってますよね!私は固く拳を握りしめてゴブリンの住処の入り口に叩きつけたのでした。

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