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仮面、大魔法使い、変態

「これは凄いね……。禁術を使ったように思えないのに禁術並みの威力……。シェピアって子は実は100歳超えの大魔法使いエルフだったりする?」

「しないけど気持ちは分かるわよ……」


 辺り一帯の木はなぎ倒され、ボロボロの地面にところどころ枝が突き刺さる。

 前見た時よりも威力が上がっている気すらするのが恐ろしい。

 オーウェンはそんな風景の中に立ち尽くしてぽりぽり頭を掻いた。


「禁術ではなさそうだから良いけど、これあんまり連発されると危ないよねぇ……」

「連発しなくても危ないわよ……。あ、でも魔力消費とか凄まじそうだからそもそも連発は出来ないでしょうね」

「流石に連発されたら僕も止めに行かなきゃいけないからねぇ。ま、一回ぐらいだったら僕は行かなくても大丈夫でしょ」

「……?」


 オーウェンは土から枝を引っこ抜くと空にかざす。

 すっかり炭化した枝は握られたところから灰になって空を舞った。


「そういえばそろそろ僕達も到着するよ。着くまでに何か聞いておきたいこととかあるかい?歌とかのリクエストだったら僕の知ってる範囲で歌ってあげるよぉ」

「そんなの無い……いや、虫が近寄らないようにしてくれるとやっぱり嬉しいわね」

「そこまで虫が苦手なんだねぇ。ま、良いよ」


 と言っても、シェピアがとんでもない魔法を使ったせいで虫が居るかどうか怪しいレベルで森がボロボロになっているのだけれど。


 その時だった。ガサガサと音を立てて茂みが大きく揺れる。

 思わず私は飛び退って杖を構えた。


「な、何?!大きい虫か何かが出たの?!」

「いや、これは……」


 茂みの中からうめき声が聞こえてきて、オーウェンが茂みをかき分けて「それ」を掴みだす。

 私の方からはそれは、人間の腕のように見えた。

 引っ張り出されて出てきたのは、半裸の仮面の男。それを見てオーウェンは怪訝な目をする。


「ねぇマスク、君こんなところで何やってるの?」


 ……マスク?

 マスクと呼ばれた男は頭を抑えながら立ち上がると、オーウェンの顔を見て飛び退る。


「お、え、おぉ?!なんでお前ここに……!」

「質問に答えてくれないかなぁ」

「あ、す、すまん。俺は森に食いもんを探しに来てたんだが途中であの魔法があってな。集めてた野草が全部飛び散っちまったんだ」

「野草とかそれ以前の問題で半裸になってるわよ……?」


 半裸、といっても元から服を着ていなかったわけでは無いらしい。

 と言うのも、焼け焦げた布の切れ端みたいなものが体のあちこちにへばりついているからだ。

 さっきの魔法に巻き込まれて服は焼け焦げたとか、そんな感じに見える。


「とりあえずそれは良いや」

「良くないけどなぁ?!」


 オーウェンにツッコミを入れるマスク、さん?

 なんだか凄く親近感を覚える。似た人を知っているからだろうか。


「あ、でも野草の用意をしてたってことはもうすぐご飯にする予定だったのかな?」

「まぁそのつもりだったんだがこの調子だと嬢ちゃんのリクエストには答えられそうにねぇなぁ」

「リクエスト?」

「おう。ミミズな」

「ミミズをご飯にするつもりだったの?!」

「いや俺だって普段はそんなもん飯に出さねえけど嬢ちゃんが食いたいって言うから!だからその目は勘弁してくれ?!」


 なんだろう、ミミズを食べるとかどうかしてるとしか言いようがない。あんなうねうねして気持ち悪い物。

 その「嬢ちゃん」って人とはどう頑張っても仲良くなれ無さそうだ。


「……あ、ねぇ君、もし良かったら一緒にご飯でもどう?用意してあるんだったらせっかくだから食べていきなよ?」

「えっ」

「オーウェン、悪いけどそれは流石にちょっと俺でも遠慮してほしいんだが」

「ねぇマスク、良いよね?」

「……拒否権は?」

「無いよー」

 

 マスクさんがオーウェンに圧をかけられて困った声を出す。

 仮面をつけているせいで表情が分からないのに、身振りや手振りが元気だからいくらでも心情が伝わってくるようだ。


「なぁ、そっちの嬢ちゃんからも何か言ってくれよ」

「……私はミミズを食べる気は無いし仲間と早く合流したいんだけど」

「いやミミズは食わせねぇよ?!」


 あ、良かった。


「ねぇ良いだろ?僕この子結構気に入ってるんだよねぇ。魔法も相当上手いし、もしかしたら仲良くできるかも」

「いや私ほんとに仲間とさっさと……」

「まぁそう言うことならしょうがねぇな。オーウェンもうるせぇし俺の手料理で良いんだったら振る舞うとしますかぁ」

「聞いて?」


 さすがにそろそろフリオ達と合流したいしさっきのシェピアの大魔法も気になるし。

 でもオーウェンに片方の手を掴まれていて、振りほどけない。マスクさんも若干乗り気だ。


「安心して良いよー。マスクの料理は本当に美味しいからさ」

「それは別に気にしてないわよ……」

「あ、つかオーウェンお前また勝手に出歩いてんじゃねぇよ。ターゲットに見つかったらどうするんだ」

「そんなこと言われてもねー。こんな森の中でターゲットとそうそう会うことなんて無いよ」


 体に着いたすすを払うとマスクさんが先を行き、オーウェンに手を引かれて私は進む。


「ターゲット?ってなんなんですか?」

「お、まぁそっちの嬢ちゃんも気になるよな。簡単に言えば悪い奴だよ。禁術に手を出した悪人を俺らは追ってるんだ」

「禁術……」


 また出てきた。『禁術』。

 ……一か八か、杖を握る方の手に力を込めていつでも魔法を放てるようにしてから言ってみることにした。


「こ、この前の話なんだけど死体を操る悪い奴は、居たわよ」


 私が関わったことがバレないようにかなり詳細を省いて言う。

 オーウェンがピクリと眉を吊り上げた。


「死体を操るってことは死霊魔術だよね?この近くの町が死体の群れに襲われたって言うのは話題になってるよー」

「だな。俺らは結構遠くから来たんだけどそっちでも噂になってたぜ嬢ちゃん」

「あ、そうなんだ……」

「ま、それも禁術がらみではあるだろうが解決してるんだったらもうどうしようもねぇわな」


 じゃあ私が言ったこと、意味ないじゃん。


「そういや町の英雄も居たよね?君見たことある?」

「英雄……?」

「あぁそれな。俺も聞いたぜ?死体の群れを薙ぎ払って町に平和をもたらした英雄エテルノ・バムヘンタ」

「えっ」


 なんかエテルノの名前が知られてるし、名前が間違ってる。

 いや、否定してあげたいけどここで否定したら私がエテルノの知り合いだって知られちゃうし……


「そ、そうなのね……」


 こんな風にしか言えないのだ。ごめん、エテルノ。

 というかフリオの名前とかも伝わってても良いと思うのだけれど。


「まぁとにかく、そんなわけで俺たちゃとある禁術使いを追ってるのよ。嬢ちゃん、『それは何?』って聞いてくれや」

「……何を追ってるのよ」

「サンキュ。俺達が追っているのは死霊魔術よりも凶悪にして、全ての生物を貶める、全ての禁術の中でもタブー中のタブーである『蘇生魔法』の使い手なのさ」

現状整理:

マスク、オーウェン、グリスティアチーム(森)

テミルとその他劇団メンバー(監禁中)

アニキ、エテルノ、イギル、ミニモ、シェピア、フリオ(森)

サミエラ、ディアン、リリスとフィリミル(街)


もうそろそろリリスとか忘れられてそうですね。

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