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仮面を剥がして

「探知魔法無しでどうやって戦うんだよ?普通にやばくないか?」

「そうだね。だから、多分アニキのスキルを拠点にしつつ戦うことになると思う。負担ばっかりかけてすまないね」

「いや、それは良いけどよ……」


 アニキは複雑そうな表情を見せた。それもそうだ。今まで頼りにしていた探知魔法が使えないとなるとどうしても不安感は拭えない。


「アニキのスキルが使えるようにしないといけないから、肩書上はパーティーリーダーはアニキにして、僕たちは部下。実質指示を出すのは僕、っていうことになると思うけど……それで大丈夫そうかい?」

「あ、あぁ。フリオお前、俺のスキルの扱い方慣れてきたな」


 アニキのスキルは元々、自分の所有物、もしくは意思のない物を収納するためのものだ。

 人間を収納するためにはアニキの所有物、つまり部下なりなんなりの立場につくことが必要となる。

 ……逆に言ってしまえば、肩書きだけアニキの部下、ということでも収納できたりするのでフリオはそこを利用すると言っているわけだ。

 

「アニキのスキルが使えるのであれば安全は確保できたな。問題は敵がどんな奴か分からないということではあるんだが……」

「……私、少しだけなら分かりますよ」

「なっ?!」


 そんなことを言い出したのはミニモだ。少し言いにくそうにしてはいるが、確かに言った。分かる、と。


「し、知ってるのか?なんで?」

「えぇと……アニキさん達から離れてエテルノさんに合流するまでの間にそれらしい人を見かけたので……」

「なんでそんな大事なこと早く言わなかったのよ?」

「ちょっとあの人は敵かどうか分からなかったので……」


 ミニモはどこか不安げな口調だ。よほど確信が持てない相手だったらしい。


「それでも良いよ。貴重な手掛かりなんだから聞かせて欲しいんだ」

「まぁそう言うことならですけど……」


 ミニモは言うには、森で見かけた人間はなにやら仰々しいマスクを着けていたらしい。

 明らかに怪しかったので手は出せなかったらしいが……


「逆になんでそいつを見たことを俺達に何も言わなかったんだ。敵かどうかわからなかったとしても報告するのが筋じゃないのか?」

「……すいません」

「エテルノ、まぁその辺で」

「……まぁしょうがないか……そのマスクを付けたやつがこの辺にいる、ということで良いんだな?体格は?」

「女の人、のように見えました。背はグリスちゃんぐらいで……」


 とりあえず森を普通に歩いているということは身を隠す術はない、と考えて良いのか……?


「あぁくそ、何も分からないぞ……」

「とりあえず収納空間で休憩しないかい?グリスと遭遇した時のために何人かは常に外に居ないといけないとは思うけど……」

「……そうだな」

 

 一旦落ち着かなくては。まずはどうすれば良い?優先すべきはテミルか?グリスティアか?

 そんなもの、グリスティアに決まっている。それで、グリスティアは森のどこかを一人で彷徨っているはず……


「……なぁフリオ、いっそのこと敵を引き付けてみるって言うのはどうだ?」

「え、ど、どういうことだい?」

「そのままだよ。森全体に見える大魔法を使って引き寄せてやればいい」

「でもそれをやると沢山敵が来ちゃうから危ないんじゃ……」


 そう、問題はそこだ。


「そこはしっかり隠れていれば問題ないだろう。一応だが透明魔法は使えるからな」

「でも姿が見えなくたって見つける方法は……」

「それが使えないんだよ。探知魔法が使えなくなってるからな」


 つまりこの森の中では『隠れたもの勝ち』の状態になっているわけだ。

 探知魔法が使えないから視覚に頼るしかないのに、森の中にいるせいで見通しは最悪。

 敵を待ち伏せる戦法が一番効果的だ。


「ミニモが目撃した仮面の男だが、おそらくは敵だとしても俺達を攻撃する役割を担っている奴では無い。荷物を運ぶ下っ端か何か……だろうなおそらく。そうでもなきゃ森に単身で入って来た馬鹿な冒険者だ」


 まぁ仮面をつけてわざわざ森に入ってくる変人がいるとも思えないが。

 おそらくだが、仮面をつけているのは味方から識別しやすくするためだ。

 待ち伏せをするうえで一番怖いのは間違って味方を攻撃することだからな。

 仮面をつけている人間は攻撃しないことを条件として待ち伏せしているとしたら色々と筋は通る。


 まぁそれでも、どうやって探知魔法を無効化しているのかとか疑問は残っているのだが。


「ふむ、とりあえず俺達も仮面をつけてみるか?」

「えっ」

「で、派手に大魔法を撃ちあげよう。シェピア、お前こういうの得意だろ?」

「得意どころかそれしかできないわ!」

「何でお前それで偉そうに出来るの?」


 まぁ魔法はシェピアに任せるということで良さそうだ。


「隠れている最中でも騒ぎが起こったりしたらつい出てきてしまうのはしょうがないことだろう。もしかしたら『戦闘になっているかも』なんて風に思わせられたらこっちの勝ちだ。相手が出てきてくれるわけだからな。そのうち一人ぐらいを拘束して収納空間に連れ込んでしまえばいくらでもやりようはある。確か拘束した相手は意思にかかわらず収納できるんだったよな?」

「あ、あぁ。動けないってことは俺が自由にできる状態ってことになるからな。相手の命を握るとか言うだろ?拘束した時点で俺の所有物って言う扱いになるんだ」


 よし、じゃあ作戦は簡単だな。俺達が隠れて、大魔法を撃ちあげて敵を呼び込む。で、集まって来た敵の一人ぐらいをこっそり誘拐。

 ……ここだけ聞くと悪人は俺達の方だが……


「もし敵が集まってこなかったとしてもグリスティアは分かるはずだからな。俺達の位置が分かればあいつなら何かしら連絡を取ってくるだろう」

「敵がたくさんいればグリスティアも危険だと思うんだけど……」

「あ、そこは大丈夫よ!私の魔法を見たらグリスティアなら分かってくれるもの!」


 どや、と胸を張るシェピア。まぁそういうことなら大丈夫なのだろう。


「よし、じゃあとりあえず俺達も仮面をかぶるぞ。土魔法でさっさと作るからミニモは詳しく見た目を教えてくれ」

「は、はい!」

「でイギルは幻覚魔法とか使って安全に隠れられる場所よろしくな。穴とか必要なら俺が作る」

「おっけー。僕としても協力できるところは協力させてもらおうじゃないか」


 さぁ、逆転劇を見せてやろう。仮面だかなんだか知らないが、本性を暴露したうえでな!




「エテルノがまた悪い顔してんなぁ……」

「縁起良いよね」

「ちょっと何言ってんのか分からねぇけど……」

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