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迷子×2

「探知魔法が使えないって言うのはど、どういうことなんだい?」


 俺の言葉に呆気を取られたかのような顔をしてフリオが聞き返してくる。

 いや、事実呆気に取られているのだろう。俺も信じられないのだから。


「そのままだ。一切探知魔法が使えない。他の魔法は使えはするようだが……少しだけ使いにくい気もするな」

「な、なんでか分かったりしないかい?」

「……真っ先に思い浮かぶのは結界だがさっき確認できなかったからな……。すまん、分からん」


 何故そんなことになったのかは分からないが、何かしら敵の意図が含まれていることは確かだろう。

 探知魔法が使えないとなると……どうすれば良いのか。敵襲に反応するのが遅れてしまう可能性もある。


「とりあえず散らばっていたら危ない。一か所にまとまっておくのを薦めるぞ」

「そ、そうだね。まとまってた方が攻撃も防ぎやすいかも」

「幻覚魔法で多少なりとも偽装しておいた方が良いかな?」

「あぁ、それ良いな。頼む」


 さすがSランク冒険者と言ったところか、すぐに皆が対応し始める。

 先ほどまではバラバラだった面々がすぐにフリオを先頭にして隊列を組んだ。


「探知魔法が使えない、って言うのは攻撃されてる、っていう認識で良いんですよね?」

「おそらくな。ただ手段が直接的でないことから俺達の位置がバレているわけでは無いと思うが……」


 ミニモの疑問に返しはしたものの、気になることは多々ある。

 例えば、俺達を崖の上から突き落とした奴と探知魔法を使えなくさせている奴は同一人物なのか、とか敵は何人いるのか。テミルを攫った人間と同じなのか、なんてものもあるな。

 とにかく、ここは危ない。移動を--


 俺がフリオに声をかけようとした時だった。


「--エテルノさん、動かないでください」

「え?」


 ミニモが手を使って俺を制止する。

 もう片方の手でミニモが指さしていたのは、茂みの方だった。


「誰か来てます。魔法を使えるようにお願いします」

「っ、分かった。任せろ」


 こういう時のミニモは信用できる。すぐに俺は杖を構えた。

 フリオもイギルも同様だ。フリオは剣を、イギルは……杖、のようだが妙な形をしているな。幻覚魔法が希少なだけあって多少なり杖にも変化があるのだろうか。


 茂みが、大きく揺れた。


「--お、おいおい、これどういう状況なんだよ?お前ら何やってんの?」

「……アニキか……驚かせないでくれ……」


 すぐに緊張が解ける。茂みから出てきたのが、アニキとシェピアだったからだ。

 二人に怪我はない。敵では、無かった。


「あら、グリスティアはまだ到着してないの?」

「あぁ、まだだね。グリスのことだから虫を怖がってどこかで道草を食っているんじゃないかなって話してたよ」

「あの子ならやりかねないわね……」


 やれやれ、とでも言いたげに首を振るシェピア。普段からグリスティアに甘いところがあるシェピアでもグリスティアの虫嫌いは目に余るところがあったらしい。


「あ、というかミニモ、お前無事に合流できたんだな。安心したぜ」

「……ですか。まぁ私も結構頑張りましたからね。もう少し早く解放してくれてればもっと早く合流できたんですが」

「いやいやそれはしょうがねぇだろ……流石にどんな悪人でもあんな高いところから女の子を落下させるって言う奴は居ねえって」

「私達さっき突き落とされたばっかりですけどね」

「確かに」


 アニキはアニキで呑気だな。


「まぁとりあえずグリスティアとテミルを探索しつつ、敵を警戒しつつ、みたいな感じで大丈夫か?」

「僕はそれで大丈夫だよ。ただ探知魔法が使えないって言うのは結構痛いね……」

「え、探知魔法使えねぇの?」

「そういえばアニキは知らないんだったね。うん、使えないみたいなんだ」


***


「おう嬢ちゃん、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です……死ぬかと思いましたけど……」


 きっと今の私の顔は真っ青だろう。辺りが暗闇で本当に良かった。

 そんなことを思いつつ私はふらふらと立ち上がる。隣からマスクさんの声が聞こえてくることから、そちらにマスクさんはいるのだろうと思うけれど……唇が震えてうまく声にならない。

 あんな高さから真っ逆さまに落ちたのだ。涙が出ていないだけ良い方なのではないだろうか。


「他の皆も結構これ苦手でなぁ」

「当たり前じゃないですか……あんな高いところから落ちて平気な人が居たらそれはもう化け物か何かですよ……」


 ゲラゲラとマスクさんが笑う。マスクさんはどうやら平気だったらしい。


「いやぁ、まぁそんなもんかもな!俺としてはそんなに怖がるようなことでも無いんだけど嬢ちゃんにはきつかったか!」

「き、きつい以前の問題だと思いますけどね……」


 死ぬかと思った。というかなんで今生きているのかが分からない。そのレベルだ。


「まぁもう無事に目的地には着いたから大丈夫だ。ほらよ、こっちだ。暗いから足元気ぃつけてな」

「え、あ、ちょ、ちょっと危ないですってマスクさん!」


 暗闇の中をマスクさんに手を引かれて私は歩き出した。

 気を付けようにも目に一切光が入ってこないのにどうしろと言うのか。


「っひゃぁ?!何か柔らかい物を踏んだんですけどどうすれば?!」

「それ俺の服だから大丈夫」

「うわぁ?!ここここっちにも?!」

「それ俺の靴下ね」

「脱ぎ散らかさないでくれますか?!」

「すまんすまん。出かける前に急いで着替えたのを脱ぎっぱなしだったんだって」


 どういう状況なのかも分からぬまま、私は手を引かれて進むのだった。

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