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魔導士の居ない集会


 それは見るからに、『異常』としか言い表せないような光景だった。

 いや、そんなに深刻な話では無いんだけれども。


「……ん、フリオか。遅かったな」

「いや、え……?エテルノ何やってるのさ……?」

「見て分かる通り、少し実験をな」

「いや見ても全然分からなかったけど」


 崖下にそびえる木の中で一番大きな木の幹、一番高いところにエテルノが縛り付けられ、こちらを見渡していた。

 声を届かせるだけで一苦労だ。

 そしてそれを真剣な顔で見守るミニモ。何やってるんだろうホント。


「イギルさんも来てたんですね?」

「うん、フリオ君との道中は気まずいったら無かったよ」

「えぇぇ……」


 ミニモと簡単に話しているイギルには否定したい気持ちでいっぱいだけれど、とりあえず今はエテルノの方だ。

 

「で、エテルノのそれは何の実験何だい?」

「これか?これはだな、空中に結界が張られていないかを調べるための実験だ」

「結界……?」

「そうだな。とりあえずここには無さそうだからもう降りようとは思うが。ミニモ、頼めるか?」

「任せてください!」


 元気よくミニモはそう言うと、するすると木を登っていく。

 枝には一切掴まらず、腕の力だけで幹をしっかりと抱えているようだ。

 やたら早い。十秒もする頃には既にエテルノの体を幹に縛り付ける縄を解く段階まで来ていた。


 その甲斐があったのか知らないけれど、エテルノが再び地上に戻ってくるまでにかかった時間はおよそ三十秒にも満たないのではないだろうか。木からエテルノを抱えたミニモが降りてくるときは普通に飛び降りてたし。怪我もしてなかったし。


 エテルノは服に着いたゴミを払ってから言う。


「簡単に言うとだな、ここ周辺には何かしらの仕掛けがしてあったのかもしれないと思っていたからお前達が合流してくるまでに調べておこうとしたんだが……」

「普通に地上からじゃ調べられなかったの?」

「グリスティアならできただろうがな。俺はそこまで強力な魔法を使えるわけでもないから残念ながら」


 それで結界を探知するには、若干近くに行ったほうが良いと。僕がそんな風に言うとエテルノは頷いた。


「そうだな。土魔法で足場を作っても良かったんだが魔力を無駄にしたくなくてな。結果木に登ることにしたわけだ」

「とんでもないね」

「ちなみにミニモに頼んだのは、そっちの方が早そうだったからだ」

「最近エテルノは羞恥心を捨ててるよね」


 エテルノは今まで散々抵抗したり文句を言ったりしてきたのに、最近ではミニモにこういうことをされるのに抵抗が無くなってきている気がする。大丈夫なのだろうか。


「で、無かったんだよね?結界」

「そう。無いんだ。だからどうした物か分からない」

「んー……そういえばグリスティアは?」

「いないな。さっきフリオ達が合流したからあといないのはグリスティアだけ、と言うことになるだろう」


 グリスが、居ない。まだ集まっていないのか。彼女が一番最初に到着してもいいレベルだと思っていたのだけれど……


「まぁ森だからな。虫も多いだろうし、大方逃げ惑ってるんだろう」

「うわぁ……凄い想像つく……」


 グリスは極度の虫嫌いだ。だからテミルがバッタやら何やらを食べているときは横で時々物凄い嫌そうな顔を浮かべていたものだけれど……

 そっか、森だから虫が多いんだここ。魔獣の方にばっかり集中していた。


「じゃあ迎えに行った方が良いかな?」

「大丈夫だろ。グリスティアなら何とかなる気がするし」

「何とかするだろうね……」


 とりあえず森の木々が急に焼き払われたりとかしていたら多分その焼け跡の中心にグリスがいる。

 分かりやすい。やめて欲しいけど。


「煙の段階で発見できたらいいですよね」

「被害は最小限に抑えて欲しいけどねできれば」

「グリスティアとさっさと合流できればいいんだが……。魔法の腕が在るか無いかで探索の難易度が変わってくるからな」

「エテルノもできるんじゃないのかい?」

「探知魔法のことか?それはまぁ一通りできるがグリスティアには叶わないだろうな」

「へぇ」


 グリスは魔法学園にも通っていたから多少なりとも実技やら魔法やらでは相当な力を持っているのかもしれない。

 エテルノがここまで言うとなると相当だ。


 と、ここでエテルノが妙な顔をした。


「……ん」

「どうしたんだいエテルノ?」

「いや……すまん、探知魔法が発動できないんだが?」

「……え?」


唐突なエテルノの発言に、僕たちは凍り付くしかなかった。

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