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オーウェン(正義の味方)

「.……これ皆大丈夫なのかしら……」


 私はたった一人で森の中を歩いていた。シェピアやミニモはアニキと一緒に行ったのが見えたし、イギルとフリオは同じ方向に向かった。

 私と同じように一人で落ちたのはエテルノだけ……エテルノなら大丈夫そうではあるのだけれど……


「シェピアよね心配なのは……」


 何を隠そう私の幼馴染は常識に欠けている。なんなら森の木々を伐採して進もうとか言い出しかねない。

 ……今こうしている瞬間も大魔法が飛んでくるかもしれない。そんなわけで私は普段以上に警戒しながら森を進んでいた。

 まぁさすがにアニキさんが止めてくれるとは思うけど……


「とりあえず私は誰かと合流しましょうか……っと」


 探知魔法を発動。とりあえず私達が突き落とされた方を目指しながら一番近くに居る人と合流しておけば問題は無いはずだ。

 と、気づく。


「……?」


 探知魔法が狂ってしまったかのように、何も反応しないのだ。

 頑張ればこの森全体ぐらいは見れるはずなのだけれど、どこにも反応しない。

 仲間の皆が反応しないだけではない。何も、生きているものが反応しないというか……。


 上を見上げると確かに鳥が枝に留まって毛づくろいをしている。なのに、あの鳥も探知魔法上では一切反応しないのだ。

 ……何かおかしい。

 更に警戒を強めておく。探知魔法がいまいち使えない以上どこから何が来るのか分からないからだ。


「--ねぇ君、こんなところでどうしたの?」

「っ?!」


 後ろから声をかけられ、すぐさま杖を構えて振り返る。

 気味の悪い男だった。血管の浮き出るほど痩せて不健康そうな手足、クマの濃い目元、ぼさぼさの髪。

 糸目が更に細められる。


「おっと、ごめんごめん。そりゃあこんなとこで声なんてかけられたら警戒しちゃうよね。僕は君を害する意思なんて持って無いよー」

「……信用できないわよ」

「そうだねー。まぁまぁ、僕は悪い人以外には手を出す気は無いからさ。大丈夫だって」

「信用できないって言ってますよね?」


 へらへらと笑う男。やたらと長い袖を振りながら更にこちらへ進んでくる。


「来ないでください」

「いや僕もそっちに行きたいんだよねー。もし良かったらなんだけど一緒に行かない?」

「……」

「ほら、僕が君を殺すつもりだったら不意打ちなりなんなり方法はあったでしょ?害意は無いって!」


 言っていることはその通りなんだけど……


「……じゃあ私より先に行ってください。ついて行きますから」

「おっけー。その方が安心してくれるならそれで良いよ」


 不信感は拭えないままだけれど、男が言っていることも間違いでは無いというのも事実だ。


「何かしたら、すぐに撃ち抜きますので」

「撃ち抜かれるのは痛いから勘弁してほしいけどねぇ。ま、良いよ好きにしてくれて。君みたいな美人にやられるのなら本望だとも」

「冗談は良いから、早く」


 はいはい、と男は手を振って応える。

 

「あ、そういえばまだ自己紹介はしてなかったよね。僕はオーウェン。オーウェン・リーガルだ。以後よろしくねお嬢さん」


 そう言うとオーウェンは引きつった笑顔を浮かべたのだった。


***


「それで君、君は何でこんな森の中に?」

「……仲間とはぐれたのよ」


 私の前を進みながら、振り返ることなくオーウェンは質問してきた。

 流石にここまで来た経緯を全て話す気は無い。オーウェン、と言う名前も本当かどうか……


「そこまで警戒しなくても良いんじゃないかなぁ。僕は善良な人間にはとことん善良な人間だよ?」

「善良な人間はそんなこと言わないわよ」

「ちなみに仲間って言うのはどういう感じの人達?見かけたら教えてあげるよ」

「……結構よ。自分で探せるわ」


 オーウェンは微かに笑い声をあげると、こちらを振り返った。


「大丈夫。ほんとのところ、僕は君を気に入ってるんだ。君に害があるようなことはよっぽどでもなきゃしたくない」

「……」

「ほら、そんな顔をしないで。大丈夫だとも。君は信用できる。分かるよ、君は僕と同類だ。まだ君は禁術に手を出していないだけなんだからね」

「禁術……」


 禁術。禁術と言う単語が出たということは、敵なのではないか。

 少しでも情報を得て、フリオやエテルノに伝えられれば--


「ところで君、名前ぐらいは教えてもらっていいかな?」

「嫌ですけど」

「あはは、これは手厳しい。じゃ、ちょっとした質問ぐらいには答えてもらえたりしないかなー」

「内容によりますね」

「なぁに、ほんとにちょっとしたことなんだけど、この似顔絵に見覚えは?」


 オーウェンが懐からボロボロの紙を取り出し、こちらへ差し出す。

 仕方なく受け取って開いて、私は息を呑んだ。

 描かれていたのは女の子だ。しかも、見覚えのある。


「知らないかなぁ?」

「……知らないわね。私も見かけたら教えてあげるわよ」

「本当?!嬉しいなぁ」


 ミニモだ。似顔絵に描かれていたのは間違いなくミニモ。 

 なんでミニモが探されているのだろう。でもこれではっきりした。この人は敵だ。

 一層警戒を強めて、私は無理に笑顔を作った。

 そうして言うのだ。


「それじゃ、行きましょうか。私は仲間と合流するために。あなたは?」

「僕は……そうだな、正義を貫くため、とか?」

「はいはいカッコいいカッコいい」


 あきれ顔で私は進む。何はともあれ、皆と合流しなくては。そんな使命感を胸に抱きながら。

 ……もし、ミニモと合流してしまった場合、すぐにこの男を魔法で撃ち抜こう。

状況整理:

エテルノとミニモ班

アニキとシェピア班

フリオとイギル班

グリスティアとオーウェン班

劇団とマスクさん班

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