落下物 時々 爆発四散物
「よし、じゃあ良いか?行くぞ……?」
「さっさとしなさいよ」
「さっさとって言っても怖ぇんだよ!」
「早くしてください。アニキさんを倒せばスキルは解除されますかね?それならそうするんですが」
「いやいや、流石にそんなこと……しそうな目をしてんなぁ?!」
収納空間内。俺とミニモとシェピアは未だにスキルを解除できずにいた。
と言うのも……
「解除した瞬間もっかい空に放り出されるのは怖いだろ普通に……」
そう、俺のスキルは『俺の今いる場所を中心に』発動するスキルだ。
現在は俺が上空で収納空間に逃げ込んだ状態のため、スキルを解除した瞬間俺たちは再び上空から落下することになる。
流石に、それは死ぬ。
なので色々と躊躇しつつ何か使えるものは無いか探っていたのだが……
「早く出ないと、エテルノさんが危ない目にあってたらどうするんですか?誰がエテルノさんを助けるんです?」
「いやあいつは普通に自分で切り抜けるだろうよ……」
「だから、私が浮遊魔法使えばいいじゃない」
「それやったら全身が爆裂するんじゃなかったか?」
「……ミニモもいるし、大丈夫よ」
「何も大丈夫じゃねぇな?!」
目を逸らしつつ答えるシェピアにしっかりとツッコミを入れ、俺は再び収納空間の中を見渡す。
こないだ宿泊に使ったばかりなので多少なりとも荷物は残されているのだが……上空から飛び降りた時に助かるか、と言ったら役立ちそうなものは見当たらないな。
「最悪私だけ飛び降りますよ?で、私が地面にさえいれば皆さんが落ちてきてもキャッチできますし」
「最悪それで行くか……?」
「あ、でもエテルノさん優先したいんですけど」
「やっぱ任せられねぇわ」
ミニモはエテルノの担当だったはずだろう。俺はシェピアだけで手いっぱいなのに何でこんな目に合っているのか。
流石の俺でも狂人二人の相手は難しいぞ。
「アニキさん、さっさとしてもらいたいんですけど」
「分かった、分かったって!お前エテルノの前だと大人しく……大人……しくはしてなかった気がするけどもう少し協力的だったろうが!少し落ち着いてくれ!」
「……落ち着きましたから早くしてください。シェピアちゃんが居なければもうすでに一回はぼこぼこにしてるところですからね」
「怖すぎない?」
と、ミニモが肩をぐるぐると回し始める。やばいやばい。
とりあえず上空から無事に降りることができそうなものは……
シェピアの方を見てみると、シェピアが何とか浮遊魔法を掛けて荷物を持ち上げようとしていた。
浮遊魔法を掛けられた俺の荷物は地面から数十センチほど浮かび上がり--
「あっ」
シェピアが一瞬『やらかした』とでも言いたげな表情を浮かべた瞬間にバチン、と音を立ててはじけ飛ぶ。
弾けたのはバッグだけで中の荷物は無事なようだが、あちこちに散らばってしまった。
……後で片付けるの俺なんだけどな……。
「……よし、そろそろうまくやれる気がしてきたわ!」
「今の見てそんなこと言えるんなら俺はお前の正気を疑うね」
さて、どうするかだが……
「シェピア、攻撃魔法自体は使えるんだよな?」
「ん?出来るわよもちろん」
「じゃあ攻撃魔法の応用で上手いこと落下の衝撃を和らげることも可能か……?」
例えば、大樹を生やしてその枝伝いで降りていくとか。
「流石に距離が遠いわね。それに落ちてる最中にそんな魔法使ったら生えてきた木に刺さることになるけど良い?」
「全然良くねぇな……」
つい想像してしまい身震いする。
こうなったらしょうがない。シェピアの案で行くしかないか……
「とりあえず浮遊魔法で何とかしよう。シェピアも時間をかければしっかり行けるだろ?詠唱だけじゃなくて魔法陣とかも組み合わせてさ、成功率を上げればいいじゃねぇか?」
「……そうね、任せて!」
「何今の間。怖いんだけど」
とりあえずシェピアに任せるのは怖くてしょうがないのだが、ここで立ち止まっていても仕方がない。
なんとかしなくては。
「決まったのなら早く行きましょう。エテルノさんが何か巻き込まれてたりしたら困ります」
「お前の行動の中心はほんとにエテルノばっかりだな……」
「当たり前じゃないですか。アニキさんにも情が無いわけでは無いですけど、エテルノさんと比べたら海岸沿いに流れ着く千切れた海藻ぐらいの価値しかありませんよ」
「思いのほか俺が軽視されてることだけは分かったわ。ちなみにエテルノは?」
「海藻サラダの海藻です」
「お前海藻以外で例え方思いつかなかったの?」
いや、こんなことに付き合っている暇は無いんだった。
魔法陣を書き、詠唱もし、シェピアに浮遊魔法を掛けてもらって何とか体が浮き上がるようになる。
これならいける。そう確信した俺はすぐに収納を解除した。
「っぐ……怖すぎんだろ……」
浮きつつゆっくりと降下しては行けているのだが、やはり高い。
高いから怖い。俺は下を見ないようにするために空を見上げた。
「……?」
上に居たのはシェピアだ。風のせいで服がばたつき、スカートがめくれ上がった。
「えっ」
俺の顔を見て真っ赤な色に変わるシェピア。次の瞬間浮遊魔法の効果は突如途切れ、俺の体は地面に向けて超加速を始めた。
「えっ、え、嘘だろ?!それはやばいって……!」
シェピアが集中を切らしたのが原因だろう。が、え、俺の死因スカートの中を見たからってことになるの?
迫りくる地面を見ているのに耐えきれず、目を閉じた俺を受け止めたのはあの『エテルノのスライム』だった。
すいません、最近私用で毎日投稿の時間が遅れてるんですけど、週末には投稿できそうなので許してください……。
あとこんな状態で言うことではありませんが、10万pv本当にありがとうございます!
それだけの回数色んな方が読んでくださっているのに投稿遅れるとはいったい……?