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夜逃げ洞窟

「うーむ、やはり駄目か……」

「もう誰も居ないっぽいね……」


 翌日、俺たちは揃って洞窟の入り口までやって来ていた。

 が、案の定洞窟は既に空っぽ、グリスティアの探知魔法にすら何一つ引っかからない状態になっていた。


「くそ……良い手掛かりになっただろうになぁ……」

「困ったわね。なにか手がかりとか無いの?」

「探さなきゃいけないだろうなぁ」


 面倒だが仕方ない。手分けして探すしかないか。


「よし、じゃあ手分けして進むか。班分けは……」


 フリオに任せる、と言おうとした瞬間ガッと手首を掴まれる。

 恐る恐る振り返ると、そこにはミニモ。


「は、離せお前。そういうの決めるのはフリオだって……!」

「あ、じゃあエテルノとミニモはいつも通りペアで良いかい?」

「良くないけどな?」


 全力で手を引っ張ってみるが、やはり離れない。


「エテルノさん、諦めて一緒に行きませんか?」

「俺だってな、普通だったら一緒に行ってやってもいいんだよ。でも洞窟は駄目だ……!何されるか分からない恐ろしさがある……!」


 壁とか、崩落させそう。


「じゃあ猶更エテルノが監督してなきゃいけないんじゃないの?」

「うっ」


 ここでグリスティアの正論が刺さる。

 た、確かにミニモの扱いに一番慣れているのは俺だろうという自負はあるのだが……


「っぐぅうぅ……む……しょうがない、か……」

「じゃあ私はフリオと組もうかしら」

「……?!」


 ミニモとグリスティアが目くばせをしているのに気づく。

 まずい、図られた。

 おいフリオ、今すぐに撤回してもう一度ペアを組み直すんだ。そんな意思を込めて俺も目くばせを送るが、フリオは気づかない。

 俺を見て一瞬不思議そうな顔をしたかと思うと笑顔でこちらに手を振る。違う、そうじゃない。


「じゃあ行きますよエテルノさん」

「あ、ちょおま、待てやめろお前ぇぇぇ……!」


 結局ミニモに担ぎ上げられる形で俺は洞窟内に運び込まれたのだった。

 そろそろミニモに勝つ方法を見つけないといけないかもしれない。


***


「おい嬢ちゃんたち、ここがバレたからさっさと逃げるぞー」

「え?」


 その人たちが入ってきたのは私達が閉じ込められてから体感で数日が経ったぐらいの時だった。

 マスクさん、と私が呼んでいるその人は言っていることに比べて口調に深刻さが無い。

 バレた、ということは私達を誰かが助けに来てくれたのだろうか。


「マスクさん、少し良いですか?」

「何だ嬢ちゃん。出発するから歩きながらでも良いか?」

「あ、大丈夫ですよ」


 見るとマスクさんの部下の人たちが劇団の人たちを丁寧に抱えたりして運び上げている。

 団長さんは相変わらず暴れまくっているのか、四人がかりで手足を担がれていた。


「あー……嬢ちゃんとこの団長さんは相変わらず暴れてんなぁ」

「ですねぇ。団長さん男の人が嫌いらしいですから……」

「え、マジ?そりゃ悪いことしたな。女の部下に運ばせることにするわ。おーいお前らー」


 私の言葉を聞いてすぐに部下に伝えに行くマスクさん。その言葉を聞いてすぐに団長さんを運んでいる部下の人たちが入れ替わった。


「いやぁ、すまんすまん。できるだけそう言うことがあれば今後も対応してくから早めに言ってくれなぁ」

「あの……マスクさんやっぱり優しすぎませんかね?ほんとになんでこんなことしてるんです……?」

「んー、マジでそれは詳しくは言えないんだけどそうだな……やっちゃいけないことやってる奴らを捕まえるため、みたいな?」

「……?」

「ま、分かんないなら分かんない方が良いんだよ。嬢ちゃんたちが知らないでいる限り俺たちは何もしねぇからよ」


 マスクさんは一切嘘を言っていないように見えるけれど、でも悪いことをしているのは確か。

 正直そこの差をどう扱っていいのか分からない。


「あ、そういえばフリオ君とかは来てませんでしたか?」

「フリオ?」

「はい。そうですね、なんと説明すればいいのか……」


 私がフリオ君のことを説明すると、マスクさんは合点がいった、と言う風に頷く。


「そうか、あの兄ちゃんそういうことでここまで来てたのか。っつってもなぁ……」

「あ、フリオ君やっぱり来てたんですね」

「そだなぁ。なんかせこい手を使ってくる奴と一緒に来てたぞ」

「あ、じゃあエテルノさんも一緒ですね」

「そういう認識をされてるエテルノって奴が哀れでならないよ俺は」


 まぁ、知り合いの方の中で一番そう言う評価が当てはまるのはエテルノさんというだけなので……って言ったらミニモさんに怒られるでしょうか。

 怒られるだろうなぁ、と思いつつ私はもう一度辺りを見渡した。

 フリオ君が私を探してくれているなら、そのうち多分追いついてくれるよね、と若干安心しつつ、マスクさんに手を引かれて私たちは洞窟の出口へ向かうのだった。




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