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ダンジョン内、迷いの森

「さ、そろそろ出発するよ!みんな大丈夫だね?」


 フリオが冒険者たちに号令を掛け、パーティーはダンジョンのさらに奥へと出発した。

 進めば進むほど道の様子が変化していく。三時間も進むころには、ダンジョンの中だとは到底思えないほどの光景になっていた。


「これは凄いな。本当にダンジョンの中なのか?」

「本当に、どこかで地上に出てきちゃったんじゃないかと疑いたくなるね……」

「天井は……光っているがコケの一種か?」


 そこには、地上の森と一切変わらない光景が広がっていた。ダンジョンの天井からは光が降り注ぎ、目で確認はしていないとはいえ川の流れる音までする。

 おかしいところがあるとすれば獣や虫の類が一切見つけられていないということなのだが……


「で、ここからどうするんだ?」

「うーん、そうだなぁ、森を切り開いてもいいんだけどこのまま先に進んじゃうとB班とかC班が調査するのも大変なんじゃないかな……」

 

 フリオの心配は正しいと言えるだろう。Sランク冒険者が揃っているA班と違い、B班とC班は戦闘になった場合に被害が出る可能性が高い。ということは――


「じゃあまずは探索からしていこうか」


 やはりこうなったか。よし、未知の森探索と行こうじゃないか。


***


「しかし……いくら見ても本物の森としか思えないな」

「ですねぇ」

「で、なんで俺とお前が組まされてるんだ?」

「フリオさんはグリスさんと探索したがっていたからですね」


 俺は今、ミニモと組むことになって森を探索していた。

 最近こいつと行動することが多くないか?

 いや、フリオがグリスティアと行動したがるのはグリスティアを心配しているからだということは分かるのだが、だからと言ってこいつと行動するのが俺である必要はないのではないだろうか。


「あ、そういえばグリスティアとフリオはどういう知り合いなんだ?」

「さぁ?私がこのパーティーに入ったときにはもう二人ともいましたからねぇ……」

「あ、お前が一番遅いのな」


 フリオとグリスティアの二人で立ち上げたパーティーだったんだな。

 そこに俺とミニモが入った、と。ふむ。


「ちなみにだがお前が入ったのはどのくらい前なんだ?」

「んー、多分入ってからまだ一年も経ってないんじゃないかと思いますよ?エテルノさんが入る三か月ぐらい前に入ったはずですからねー。あ、あと私が入った時既にSランクパーティーだったので驚きましたかね」

「二人しかいないのにSランクか。それは凄いな」


 となるとあの二人は一緒に冒険を繰り返してSランクにまで上がったのだろうか。

 そこまで考えて、ふと周囲の様子がおかしくなったことに気づく。


「……おいミニモ、ここ、さっきも通らなかったか?」

「……ですね。この木の形、見覚えありますし……」

「よし、とりあえず帰る道を探すぞ。木の上まで登ればキャンプ地も見えるだろう」


 木に登って周囲を確かめる。キャンプ地の方向は確認したのだが……


「おい、方向はこの先、直進で大丈夫だ」

「え?でも私たちの進んでた方向にキャンプ地があるっておかしくないです?」

「そうなんだよな」


 キャンプ地を出てまっすぐ進んでいたはずなのに、ふと気づくとUターンしてキャンプ地の方角へ戻って来ていた?そんな馬鹿な。


 よく分からないが、用心したほうが良さそうだな。

 俺とミニモは何度か方向を確認しつつキャンプ地へと戻っていくのだった。


***


「エテルノ!君も帰ってきたのかい?」

「フリオか。そうだ、どう歩いても先に進めそうに無かったから帰ってきた」

「うーん、みんなそうっぽいんだよね。ちょっと困っててさ……焼き払う?」

「何言ってんだお前」


 森を焼き払うのはさすがにまずいだろ。何か手を打たねばいけないのだろうが……


「んー、困ったね。こういうことをしてくるのはここのダンジョンマスターってことでいいのかな?」

「まぁそうだろうな。何かしらの魔法を使われているとみるのが妥当だが……それならキャンプ地に戻れないようにするべきじゃないか?わざわざ帰らせるのは効率が悪い」

「確かにね。迷わせ続ければいくらでも殺せるだろうに……」


 本当に訳が分からないな。何か突破口はあるはずなのだが……


「……やっぱ焼いてみる?」

「燃え移ったら大惨事になるから、ほんとにそれはやめてくれ」


***


「で、だからってなんでここに来たんだよ。ここは酒場じゃないんだからな?」

「何か文句があるのか?」

「ね、ねぇよ…。それでなんでこんな店に……?」

「フリオがお前に謝りたいとうるさくてな」


 俺たちは今、肉屋へとやって来ていた。先に進めないことが発覚した現在、他の班と相談の末に休憩を延長することになったのだ。散々用意して臨んだのに、面倒なものである。

 フリオが話しているのを俺は黙って見ていた。


「あなたがエテルノさんのお知り合いの方ですね?この度はお肉を安く売っていただき……」

「あぁ、いやいや、いいんだよそんなの。元はこっちが悪いんだしな。というかあんた、フリオって、あのフリオだよな?」

「どのフリオだか分からんが、そうだ。そいつはフリオで合ってる」

「いやー、噂とはずいぶん違うんだな。もっと陰気そうな奴かと思ってたぜ?」


 ……あぁ、そういえばフリオにもよからぬ噂がいろいろとあったな。

 まぁ、俺がここまで一緒に居て理解したフリオの性格からしてあの噂はただのガセだったのだろうが、こいつも災難なものだ。

 と、店主の男が言った。


「あぁ、そうだ。その森の件なんだが、何となく迷う理由にあたりが付いたぞ」

「ほ、ほんとうですか?!」

「当たり前だ。俺が何年ギルド長やってたと思ってんだ?」


 そういって笑う男。……少し不快だな。


「ギルマスなめんな、ってこった!」

「汚職ギルマスだったけどな」

「仕事はやってたっつーの。だからお前らが良ければ明日ついてくぜ。仕事があるから取れる時間はちょっとだけだが、解決はしてやれると思う」


 本当ならかなり有用な話だな。俺としてはこいつを信用したくないのだが……

 判断するのは俺では無い。パーティーリーダーが俺じゃないからな。


「どうする、フリオ」

「任せてみるよ。僕らも結構切羽詰まってるしね」

「よし、そういうことなら子分たちに言ってくるからちょっと待ってくれや」


 そういうとさっさと店の奥へと消えて行ってしまった。

 ……まぁ、何かしでかすようであれば俺が何とかすればいいか。


 そんなことを俺は考えていた。


「あ、兄貴!死んじゃ嫌ですよ!」

「ほんとですよ!あいつ、魔獣の仕業に見せかけて平気で兄貴を殺そうとしてきますよ!」

「ボス、死んじゃ嫌だよぉ!」

「大丈夫だ。お前らがいるのに黙って死んでやる気なんてないぞ!」

「兄貴ぃ!」


 ……めちゃめちゃ声が聞こえてくるな。

 まぁそれも当然の話か。ダンジョン内に急いで建てた建物だ。壁も薄いに決まっている。

 で、話を聞いてる感じあいつは子分たちと、俺について話しているらしい。


「……本当に君は何をしたんだい?」


 そう心配そうに問いかけてくるフリオ。そんな顔をされても困る。


「手は一切出していないはずなんだがな……」


 心当たりが何もない俺は首をかしげたのだった。

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