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遠のくゴールテープ

 できるだけ急いでゴブリン達を撃破、また取り囲まれる前に急いでフィリミルを抱えてなんとか脱出に成功した俺たちは町まで辿り着いてすぐにギルドへと走った。

 フリオ達が何か情報を掴もうとするのであればまずギルドを訪れるだろうと考えての行動だったが、それはどうやら合っていたようだ。


「フリオ、そっちはどうだ?!」

「ん、エテルノ……!駄目だ、有力そうな情報は無いよ!」


 カウンターで受付嬢とやり取りを交わしていたフリオに駆け寄るが、やはり情報は得られなかったか。


「フィリミルの言っていたことの裏付けは取れたか?」

「うん、一応はね。ただフィリミルに教えてもらえた以上のことは何も……」


 どういうことだ?馬車の残骸だけが見つかったということだったが……テミル達が襲われたというのだろうか。

 一体、誰に。


 しかも、死体すら見つかっていないということだったな。ということはどこかに攫われたと考えるのが妥当だが……


「ま、まさかゴブリンに襲われたんじゃないわよね……?」

「……グリスティアもそう思うか」


 今の状況でどこかに攫われたということで考えられるのは山賊紛いに襲われたか、ゴブリンに襲われたか……どちらにしろ、ろくなことにならないのは確かだ。


「ちなみに馬車が見つかったのはどの辺りなんだ?」

「えっと、地図だったら……この辺かな」


 フリオが地図の上に指で示した場所は森から少し離れた街道沿いの場所。

 ふむ、テミル達が行こうとしていたルートとも一致するが……森から離れた場所にゴブリンが出てくるとも思えない。

 今のところ奴らの数は増え続けているとはいえ、森から溢れ出すほどには……いや、争いに負けて森を追い出されたゴブリン達の群れと遭遇した可能性も……


「……考えていてもしょうがないな、現地に向かおう。夜になったら手がかりも見つけにくくなる。急ぐぞ」

「そ、そうね!フィリミル、動けるかしら?」

「は、はい!ご迷惑おかけしました!」

「いやいや、気にしないで。フィリミルが急いで僕たちに知らせてくれなかったら対応も遅れてたからね。ありがとう」


 未だに肩で息をしながらフィリミルが謝ったのをフリオが押しとどめる。

 先ほどまで俺が担ぎ上げて移動していたからな、多少は休めたらしい。


「じゃあフィリミル、申し訳ないんだけどもう一つ、頼まれてくれるかい?」

「あ、は、はい!僕にできることならなんでも言ってください!」

「サミエラとアニキにこの事を伝えて欲しいんだ。そうすればシェピアとか、皆に自ずと伝わるだろうしね」

「分かりました!じゃあ早速行ってきます……!」

「ん、悪いね。頼んだよ」


 フィリミルがコップに注がれた水を一気に飲み切るとギルドを出て行く。

 これで情報伝達も大丈夫、と。


「エテルノ、君は町に残ってくれてても良いんだけど……」

「行くに決まってるだろ。テミルに情が湧いてるのはお前らだけじゃないんだからな」

「正直意外だったけど、助かるよありがとう」

「ったく、毎回毎回俺を冷血漢みたいに……」


 そこまで冷血では無いと何度言えば分かるのか。ただただ感情を表に出さないようにしているだけだというのに。


「よし、じゃあ急ごうか。とりあえず今日中に、馬車の場所まではたどり着かないとね」

「だな。……ミニモ、確か野宿用の荷物が宿にまとめてあったよな?」

「ありましたね」


 ……ふむ、どうせなら外で泊まるのも念頭に入れたほうが良いだろうか。

 馬車が発見されたと思われる場所はそこそこに距離がある。


 毎日そこに通うとなると色々と面倒だな。


「じゃあ今度もフリオとグリスティアで先行、俺とミニモが荷物を持って後から合流という形で良いか?」

「大丈夫だよ。あぁ、でも先に行くのなら僕一人で十分だからグリスティアもゆっくり来てくれて良いよ」

「いや、グリスティアは探知魔法が使えるからな。テミル達が周辺に居ないかとか調べるのにも役立つだろう」

「そうよフリオ」


 逆に言えば、グリスティアがいれば俺がいる意味はあまりないということでもあるんだけどな。

 俺が使える魔法は幅広いもののグリスティアに比べれば多少劣ってしまう。戦闘についてならまだ良いとしても、今回は戦闘はほぼほぼ無しだろう。であるならば、雑用を多めに担うことで貢献しようでは無いか。


「あ、ミニモは別に先に行ってても良いぞ」

「え、私はエテルノさんについて行きますよ?」

「だろうな……」


 荷物に関しては俺一人でも運べるだろうと思うのだが……ミニモがついてくるならそれはそれで助かるのも確かだ。

 あぁ、ミニモがついてくるのなら少し多めに荷物を持って行けるかもしれないな。食料は多少は現地調達も考えるとして、さしあたっては替えの服と予備の武器--


「じゃあもう出ようか。グリス、またお願いするよ」

「任せておいて。飛んでる最中は下手なこと喋って舌噛んだりしないようにね?」

「あ、そうか、舌噛んでもしばらくはミニモに治してもらえないんだもんね……」

 

 ギルドを出てすぐの空き地でグリスが魔法を使い、空へと浮かび上がる。

 やはり便利、浮遊魔法。とりあえず空に浮いておけば目的地まで直行できるのが良いよな。


「じゃ、先に行ってるねエテルノ」

「おう。すぐ追いつくから待っとけー」


 フリオとグリスティアを見送り、ミニモの方に向き直る。


「……さて、宿に戻るか。急ぐぞミニモ」

「ですね!あ、エテルノさん、私も飛んでいきたいです」

「緊張感無いなお前……」


 まぁその方が早いから構わないが……。


「ほら、グリスティアも言ってたが舌噛むなよ」


 空に飛びあがってすぐに宿へと向かう。人目にはつくがしょうがない。……また都市伝説とかになったらどうしよう。

 蜂蜜怪人、女に担がれてるSランク冒険者の次は空を飛ぶS級……あれ、今までで一番まともじゃないか?


 と、俺が考えているところにミニモが話しかけてくる。


「エテルノさんエテルノさん」

「ん、なんd……なんっ?!」


 見るとミニモの口の端から血が流れている。


「すいません、早口言葉言おうとしたら舌噛みました」

「お前俺の話聞いてた?!舌噛まないように気を付けろって言ったよな?!」

「いえ、なんというか反骨精神が出てしまって……」

「どこに反発してんだおま、痛ぇ?!」

「え、ど、どうしたんです?」


 俺も噛んだのだ。……舌を。

 ミニモにツッコミを入れていたせいで俺まで舌を噛む羽目になり、もう何を言う気も無くなった俺は涙をこらえながら宿まで急ぐのだった。

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