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開演準備を終えて

「……」

「おや、てっきり食って掛かってくるものだと思ってたんですけど……何も言わないんですね?」


 ディアンの言葉を聞いて固まってしまっているグリスティア達に言葉が投げかけられる。

 グリスティアの反応を見るに、詳しい内容はグリスティアですら聞かされていなかった情報だったようだな。


「なぁ、さっき町の人間を殺すことが救いになる、とか言ってたよな。あれはどういう意味なんだ?」

「あれ、何とも思ってないみたいですけどもしかして知ってました?貴方は……えと……」

「エテルノだ。知ったのは今が初めてだがそんなに気にするようなことではないと判断しただけだ。そんなことより早く答えろ」


 ディアンは俺の言葉を聞いて肩をすくめると、一度周囲を見渡した。


「詳しく話すのは良いけれど、流石にここら辺だと少し危ないですね。移動するとしますか」


 そう言うディアンの言葉に嘘が含まれているようには感じられない。

 というよりもディアンからは害意も感じられないのだ。ディアンが敵とみなしているのはフリオだけ、ということだろうか。


 何はともあれ、ディアンに従っても害は無さそうだと判断した俺は通路を進んでいくディアンについて行くことにした。

 

「ちょ、ちょっとエテルノ?!」

「大丈夫だ。心配なら地面に耳をつけてみろ」

「え……?」


 少し汚れた地面に耳をつけるのは少し抵抗があったようだが、リリスが地面に耳をつける。

 と、その顔が一気に変わった。


「グリスティアさん、な、なんかたくさん足音が……!」

「え、嘘……?!」


 すぐにグリスティアも耳を澄ませ、その顔が真剣な物へと変わる。

  

「死体どもだろうな。さっき流してやった奴らが戻って来たんだと思うが……どうする?そっちの道に行くよりもディアンについて行った方が良いんじゃないか?」

「で、でも罠の可能性だって……」

「それは大丈夫だ。俺が保証する」


 俺とて元はディアンと同じく復讐を目的にして生きてきた人間だ。だから、ディアンの考えは痛いほどよく分かる。

 ここはついて行くべきだという確信があった。


「まぁエテルノがそこまで言うなら行くわよ……」

「あぁ。信じてもらえて助かる」

「仲間だしね……。エテルノの言うことはフリオの次くらいに信憑性あるんだから」


 最後の言葉は聞こえたが……ほぼほぼグリスティアの独り言のようなものだろう。

 その言葉には反応しないことにして魔法を使い、空中に火を灯す。

 

 つまずかない様に、この火が照明変わりだ。


「さ、行くぞ。道中警戒だけは欠かすなよ」


 こうして俺たちはディアンの後を追いかけるのだった。


***


「さ、準備は出来てるわねサミエラさん!」

「大丈夫じゃ。わしの子供たちの問題を放置しておけるわけが無かろう!」

「わ、私も二人のととと友達として、み、見過ごせませんから……!」


 エテルノ達から連絡が来て、出遅れること数時間。

 地下通路の入り口に立つ四つの影。


 わいわいとやる三人を眺めながら俺は立ち尽くしていた。

 というのも、やることが無い。無いのだ。


 いや、やることはあるんだけど、それをほっぽらかして半ば無理やり連れてこられたかというか……。


「ちょっと何やってるのよ!あんたが頼りなんだからしっかりしてもらわないと困るわよ!」

「いや……確かにフリオには恩を返さなきゃいけないから手伝うとは言ったけどな……だからってこんな、足手まといを二人お守りするなんて聞いてなかったからな……」

「あ、ちょっと!ゴッドマザーを足手まといですって?!」

「だってどう見てもガキじゃん……」


 さっきから威勢が良い白髪の少女。それとテミル。

 いくらシェピアもいるとはいえこの二人の安全までは担保できない。


「つかゴッドマザーってなんだよ……」


 シェピアはどうやらこの少女……サミエラ、だったか?のことを『ゴッドマザー』と呼んで慕っているようだ。

 実はというか案の定というか、シェピアがここまで下手に出ることはそうそうない。

 その時点で異変に気付くべきだったのだ。

 

「すまんが、お主の名は……」

「あぁ、名前は無いんだ。アニキとでも呼んでくれればいい」


 俺が少女に名前を告げる。少女はにこやかに笑うと言った。


「うむ、お主はわしらを見た目で判断しておるようじゃがな。そこそこ役には立つんじゃぞ?」

「そこそこも何もサミエラさんはSランク冒険者じゃない」

「『元』じゃがな」

「え、まじ?」


 Sランク冒険者と言ったらあの、フリオとかグリスティアとか……その辺と同じ?マジ?

 俺が怪訝な目を向けたのが気に食わなかったのか、シェピアは杖を振りかざしながら言った。


「サミエラさんはもう、めっちゃ強いわよ!私の攻撃が当たったことなんて一回も無いんだから!」

「お前攻撃したの?」

「夕食の時とか狙ったんだけど駄目だったわね」

「不意打ちじゃねぇか?!」


 シェピア、知ってたけどやっぱりこいつやばい。

 いや、そう考えるとそんな攻撃を受けて無事でいるサミエラの方がやばい……?

 

「……少なくとも足手まといにはならなそうだな」

「でしょ?で、私は超広範囲魔法を操る単騎最強Sランク冒険者!」

「自分で言うな。というかダンジョンの時もそうだったが、今回も狭い場所だから広範囲魔法は危ないから禁止な」

「嘘でしょ?!」


 残念だが、本当のことだな。


「で、でも例えば、水魔法で敵を押し流したりすれば通路に被害は出ないわよ!」

「そんなことしたらフリオも溺れるだろ。そんなことするのはただの馬鹿っつうか……」

「言ってみただけよ!そんなことするわけないじゃない!馬鹿じゃないんだから!!」


 念のため釘を刺しておいて正解だったようだ。

 うーむ、こうしているとミニモさんのことを制御しているエテルノにも同情できてしまうな。


「で、テミルは?」


 指さす先には通路の端の方で座り込んでしまっているテミル。

 こいつに関しては何も能力が読めないが、さっきもめちゃめちゃビビってたし今も座り込んでしまっている。

 使え無さそうであれば俺のスキルで『収納』することも視野に入れないといけないのだが……


「……テミルは……劇を演じるのが得意よ!」

「足手まといじゃねぇか?!」

「え、なんですか?」


 振り向いたテミルは袋から何か取り出してぽりぽりかじっている。


「なんかあんまり聞きたくないんだが……何食べてるんだ?」

「ムカデの素揚げですけど……」

「うん、心配した俺が馬鹿だったわ。さっさと行こう」


 この状況でムカデの素揚げを食べてるような奴なら間違いなく大丈夫だわ。心配して損した。

 というかこういう状況だとこの地下通路を出てきたとき俺の胃が大丈夫かどうかの方が心配だわ。




 --こうして、フリオ救助隊第二部隊(仮)も出発。


 最終決戦が、始まる。

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