オーク集落殲滅
黒死の森近くの草原で一夜を明かす。
まだ日も高いが、日が落ちると危険なのでここで野営することになっていた。
各自、寝袋の様な物を敷くだけの簡単な物に対して、俺は
テント設営と中には簡易ベット等の家具も設置した。
「あんたこれ…。どこで手に入れたの?」
「これは、師匠に貰った物だ」
「その師匠とやらはどこにいるの?」
「もう亡くなった。遠いド田舎だよ」
「そう、ごめんなさい」
「それにしても凄いにゃ。私も一緒に寝ていいかにゃ?」
「「「え?」」」
「冗談にゃ。私はそんなに軽い女じゃないにゃ」
「びっくりしたわ。見張りはどうする?」
「大丈夫。師匠に貰った簡易結界がある。黒死の森の中で使用しても問題なかった」
「ほう、それはありがたいな」
「あなたね…。もう驚かないわ」
夕飯はテントに設置した簡易コンロでオムライスを作って皆に振舞った。
「これは卵?贅沢ね」
「美味いにゃ」
「これは美味。この赤いソースはトマトか?」
「ええ、トマトベースの調味料です」
「ほぅ、中のは豆か?」
「米と言う穀物類です。俺の住んでいた国では主食です」
「穀物…。乾燥し脱穀した豆や麦のことか?」
「そうですね」
ドワーフのライドは持参した酒を豪快に飲んでご満悦。
キャロとミーシャは近くの小川水浴びをしている。
俺は、見えない場所で護衛中である。
キャッキャウフフの声をドキドキしながら聞いている。
日が昇ると起きて準備を開始する。
片付けを終えると俺以外の皆は気を引き締めて黒死の森へと足を踏み入れた。
と言うか踏み入れたか入れないタイミングでゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンジェネラルの三十匹程の群れに遭遇する。
俺は聖剣を鞘から抜くとゴブリンジェネラルをメインに切り伏せていく。
一歩遅れてミーシャが短剣を抜いてゴブリンに向かい走る、ライドも大きなハンマーをホブゴブリン頭へ振り下ろす。
キャロもすぐに詠唱を開始する。
「ロックバレット」
無数の岩の礫がゴブリンを襲う。
それからはただの殺戮だった、恐怖に駆られ逃げ惑うゴブリン達を追いかけて千切っては投げ千切っては投げ三十匹全てを狩るのに時間はそれ程掛からなかった。
討伐証明に耳を削ぎ魔石を取り出す。
終わると全ての死骸を燃やす。
オーク集落に着くまでに何度もゴブリンやウルフ等の低級の魔物に遭遇するが過剰戦力で圧倒していった。
昼前にオーク集落に到達、キャロが高台から初弾を打ち込む、ミーシャを護衛に残し、俺とライドで集落を強襲する。
キャロの初弾、最大広域魔法ホーリージャッジメント。
無数の光の剣がオーク集落へ降り注ぐ。
貫かれたオークは灰となり消えていく。
俺達は残ったオークの殲滅に取り掛かる。
キャロも高台から魔法で応酬する。
ミーシャは投げナイフを的確に急所に当てていく。
上位種もいたがジェネラルが三匹と思っていた程の数ではなかったようだ。
「終わったな」
「ああ、余裕だったの」
「どうだった?私の魔法は?」
「ああ、攻撃範囲、威力共に最高だった」
「オークに使うには過剰戦力だったな」
「凄かったにゃ」
「そうでしょそうでしょ」
残ったオークの死骸、魔石はストレージに入れ持ち帰る、オークの肉は高値で買い取られる。
帰りは魔物に遭遇することなく森を脱出、時間も余裕だったので野営することなく王都へ帰ることができた。
ギルトで依頼の完了報告を済ませると、解体場にオークの死骸と魔石を取り出した。
「はい、依頼の完了を確認しました。買い取りの魔物、魔石を合わせますと一人金貨十二枚となります」
「はい確かに」
「それと、ケンヤさん、大変遅くなりましたが黒死の森最奥の魔物の買い取り額が決定致しました」
「「「えっ?」」」
「あ、ごめんなさい配慮が足りませんでした」
「か、構いませんから次から気を付けてください」
「はい…。ではこちらが買い取り金額です」
高く積まれた大きな銀とも違う高価だ。
「魔銀貨九十六枚になります」
この世界の通貨は百枚で繰り上がる金貨は日本円で一万~百万、てことは…。
九千六百万円…。
「そして今回の討伐に加え、黒死の森最奥の魔物を狩れる実力を鑑みSクラスへ昇格が決定しました。SSランクも近いですね」
「今日はあんたの奢りよね?」
「はい」
「て言うか何故そんな所に潜る必要があったの?」
「今は言えない」
「そうね、詮索しすぎたわ。ならこのメンバーでパーティーを組みましょ?」
「それは…。ここにはたまにしか来れないんだ」
「なによ、また森の最奥に戻るつもり?」
鋭いな。
「俺は都合が合えば参加するよ」
「まぁ今はそれで許してあげるわ」