別れの日、新たなる旅立ち
俺は桐原賢哉15歳。
両親の顔も知らず、養護施設で育った。
中学を卒業して就職する会社は養護施設から少し遠く、一足早く卒業予定だ。
今日は一人で暮らす部屋を探しに、職場近くの小さな不動産屋へと入った。
「いらっしゃいませ。此方にどうぞお掛け下さい」
「ありがとうございます。部屋を借りたくて…」
「学生さん?家賃は安い方がいいでしょうか?」
「違いますが、安ければ安いほどありがたいです」
「わかりました。えーこれはどうでしょう?」
「はい…」
築年数 不明
平家戸建
3DK 80.5㎡
風呂無しトイレ有
敷金礼金0
賃料1.5万
家具付き
「これは…安過ぎませんか?事故物件という奴ですか?」
「いえ、この部屋で亡くなった人は居ません。しかし、前住居人が失踪し十年程建っています」
「そうですか・・・」
「この家見てみます?」
「はい」
不動産屋の車に揺られ走る事5分。
少し草臥れた平家の一軒家、その前に車が停まる。
「此方になります。中へ入りましょう」
「はい」
不動産屋さんの後を付いて中へと入った。
そこははっきり言って綺麗とは言えなかったが、同じくらい草臥れた養護施設から抜け出すには丁度良かったのかも知らない。
「ここにします」
それから二週間後、引っ越しが済んで俺は養護施設を卒業した。
初めての一人暮らしに胸をときめかせて夜は更けていく。
「風呂がないのは不便だな。近くに銭湯でもあるかな?」
壁に寄り掛かってスマホを見ていた。
「あー眠い」
欠伸をして壁に体重を掛けた瞬間、壁が抜け仰向けに倒れてしまった。
淡く光るランタンに映し出される数々の装飾品や貴金属、そして奥には扉があった。
「なんだ?隠し部屋か?」
俺は立ち上がり、売ったら幾らになるかも想像出来ない程の装飾品や貴金属には目もくれずに扉の前に立つ。
なぜか呼ばれているような気になったのだ。
重厚なその扉に手を掛けると力を入れて扉を開いた。
異世界の扉の所有者に認定。
所有者が認めた者以外の使用は禁ずる。
扉を通過する度に通過を等価で交換。
前所有者の命で前所有者の財産の全てを所有者に譲渡。
前所有者のステータスの一部を譲渡可能、これにより、所有者に基本属性魔法に空間属性魔法、同スキル、生活魔法、いつかのスキルを譲渡。
これにより空間属性スキルのストレージを使用可能、前所有者のストレージを中身ごと譲渡。
前所有者から職業、称号を譲渡可能、賢者、勇者の職業と同称号を譲渡。
同時に言語理解能力付与。
気がつくとまた違う部屋にいる俺。
部屋から出るとリビングがあって、家具から全て揃っていた。
窓から見える外の景色は薄暗い森の中といった感じである。
「ここは何処だ?」
そんな事を言いながら豪華そうなソファーに腰を掛ける。
「扉を潜った時に聞こえた所有者やステータス…」
目の前に現れたのは画面の様なものだった。
そこには、友達の家でやったゲームで見たことのある画面だった。
氏名 ケンヤ・キリハラ
種族 人族
年齢 15
職業 賢者 勇者
レベル 1
HP 20
MP 90
STR 20
DEX 20
VIT 20
AGI 20
INT 50
MND 30
LUK 5
称号 賢者 勇者 扉の所有者 異世界人
「本当にゲームみたいだな。後はストレージ?」
その瞬間、頭の中に何が何個入っていると言う情報が入り込んでくる。
「うっ…頭が痛い」
俺が落ち着くと何故が何が何個入っているかを記憶していた。
その中に前所有者の手紙がある。
それを取り出そうと思うと勝手に手に出てきた。
手紙はとても綺麗な字で書いてあった。
この手紙を、読む者へ。
私はもう長くはない。
地球には何も思い入れもなくこちらで死ぬ事を選んだ。
新たな所有者にはここを大切に使って欲しい。
それから手紙にはこの世界の説明、部屋にある物、魔法やスキルにステータス等の説明が書かれていた。
手紙の内容からここは異世界であること、アガアス大陸の南東、ユグラシア王国にある黒死の森と言う事がわかった。
どうやらこの大陸屈指、最大難易度の魔物が跋扈する森だと言う。
そして、この家と庭には結界が張り巡らされており、敵は入る事が出来ないと言う。
先ずは庭から敵を倒しレベルを上げる事をお勧めすると書いてあった。
だが今日はもう眠い。
この家には風呂もあったので大きな風呂に入って大きなベッドがある寝室で寝た。
寝る前に鑑定を試してみたところ…。
トレントロード、パラダイスシルクで作った最高級ベッド、安眠と回復のスキルが備わっていた。
安眠効果は抜群で目覚めも快調だった。
朝、一度地球に戻って朝食を取ると異世界へと戻った。
前所有者の手紙に書いてあった部屋に入るとそこには、装備品がずらり並び、鑑定すると聖や魔が付く剣や槍、弓など様々な武器も並べられている。
武器は手に取るだけで武技が取得可能だった。
装備品は手紙に書いてあった、賢者の聖装を着て、武器は全てストレージへ入れ庭へと出た。
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