表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

5




 翌日、ヴィオレ伯に出会ったが、別に普段との態度の違いはなかった。

 机に向かうビヴィオレ伯の横顔を黙って見てしまう。


(なんだろう、私だけドキドキしてる……)


 そんなことを思っていると――。


「なに? あんまりじろじろ見ないでくれる?」


 どうやら彼のことをじろじろ見ているのに気づかれていたらしい。


「あ、ごめんなさい――きゃっ!」


 反射的に後退りしてしまい、いつぞやのように書物にぶつかって、私は尻もちをついてしまった。

 ヴィオレ伯は、椅子から立ち上がると、私の方に向かって歩いてくる。


「ああ、本当にどんくさいな……」


 やはりどんくさいと言われるのは怖かった。

 びくんと震えて、身体を縮こませていると――。



「本当、お前って、僕がいないとダメそうだね」



 ――私のそばに、彼がしゃがみ込んできたかと思うと、いつの間にか抱き寄せられていた。


 そうして、私の首に彼の手が伸びてきたかと思うと――。


 気づけばまた、彼に唇を塞がれていた。

 息がもれない程に深く口づけられる。


(頭がぼおっとしてきた……)


 唇が離れると、ヴィオレが私に向かってこう言った。


「ねえ、ルージュ……最初に屋敷に招き入れた時のこと、覚えてる――?」


「は……あ……えっと……」


「ねえ、ルージュのこと、ずっと俺が養ってあげるからさ……お前は俺に身体で払ってよ――」


 ヴィオレ伯の笑顔が、あまりにも人ならざるもの――それこそ人を魅了する悪魔のように美しくて――。


 私は彼に身を委ねていたのだった。




※※※




 横抱きにされた私は、そのまま彼の寝室に向かう――。


 そうして、大きなベッドの上に横たえられた。


 ヴィオレの手によって、ドレスの襟元を緩められる。


「本当、お前が熊のところから逃げてきてくれて良かったよ――危うく、綺麗なお前が汚されるところだった――」


 私の首元に彼は顔をうずめてきた。


「身体で払うの、強制じゃないからさ――やめたいなら、やめるって言って良いよ――」


 彼は一度唇を離すと、金の髪をかき上げながらそう言った。

 私は首をふるふると横に振る。

 だけど、一つだけ気になったことがあった。


「あの、ヴィオレ様――『ずっと俺が養う』っていうのは――」


「そんなの言葉通りの意味だよ。お前は、俺の下で、ずっと研究の手伝いをするんだ。そうして、ずっと俺のことだけを考えて生きてなよ――」


(それはやはり、家事手伝いとしてという意味――?)


 そんなことを考えていると――。




「ルージュ!!! ここにいるのは分かっているんだよ――!」




 まさかの予期せぬ人物が来訪したのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ