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 廃城の中は、外観とは違って、とても綺麗に整えられていた。

 きらきらと輝くシャンデリアに、美しく整えられた調度、紅い絨毯に彩られた螺旋階段――。

 建物内にはかぐわしい薔薇の香りが拡がっていた。


「まるで、絵本で見たことがある、お姫様の住むお城みたい……」


「ふぅん、お前、文字が読めるんだ。教養のないやつらが多い中で、珍しいじゃん」


 私がうっとりとしていると、男はローブを脱いだ。

 そこに現れた彼の顔は――。


「え――?」


「はあ? なんて顔してるわけ? もう、これだから嫌なんだよ、大体の女の人たちがさ、俺の顔に見惚れるんだよ――嫌だいやだ」


「え? え? 女の人? だけど、喋り方は男の人……?」


 そこには確かに、美しい金糸のような髪に、宝石のようにきらめく蒼い瞳をした、女性と見紛うごとき青年がそこには立っていたのだった。


「ああ、めんどくさいなぁ。男だよ、一応ね。俺の母親も父親も、可愛い系の顔なの。仕方ないだろう?」


 唇をとがらせながら、青年はそう口にした。


「まあ、いいや。それで、赤ずきん、名前は?」


「ルージュ……です」


「ふうん、だから赤いずきん被ってるの? 面白いなぁ……って、そうでもないか」


 独りで喋って、一人で突っ込みをいれる彼に、私は戸惑う。

 すると、彼がため息をつきながら、私の方へと視線を移した。


「俺はヴィオレ。一応ここの城を預かってる貴族兼、魔術師だよ。地下に拷問する場所があって――まあ、今は俺以外には誰も住んではいないけど――ちょうどいいや、ルージュ、君、お金は持ってないでしょう? 良かったら、体で払ってよ――」


(どこも紫っぽくないのに、名前がヴィオレ? 体で払う?)


 ヴィオレ辺境伯の笑顔の破壊力は、色んな意味ですさまじかった。

 おどおどしながら私は首をこくこくと振ったのだった。



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