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輪廻カンカン4   作者: サーモン横山
アレン 赤の槍使い
6/6

アレン ある日の光景に父を思う。

 パパンのお話しです。この人も主人公張れる人なんですよ?


 子供が増えた。


 女の子と男の子が新しい家族になった。シオンはすごく頑張っていた。でも、デニ子の出産は……あっさり終わって当の本人は、けろっとしていた。


 ……ここまで差が出るもんなんだなぁ。


 ショコラの時もそこまで難産では無かったが……それでもあのショコラが疲れきっていたというのに。


 デニ子、恐るべし。しかも念願の男の子を産んで……ずっとテンション高すぎたから、とりあえず殴って寝かせられているとか……なんて奴だ。


 ということでデニ子の赤ちゃんとシオンの赤ちゃんをお兄ちゃんお姉ちゃんであるジローとチーちゃんが居間で抱っこしている……という今に繋がる。


 シオンは、もう動けるくらいに回復したが、今は優しい顔で赤ちゃんをあやすジロー達をまったり座って眺めている。服はゆったりした浴衣……なるものを着ている。お腹の帯が引き締めに効くそうだ。作った本人がそう言っていたから多分そうなんだろう。


 ショコラは本当に器用だ。あんな性格なのになぁ。


 まぁ、それはそれとして……ジロー達なんだが……。


 ……見た目は可愛い。とんでもなく可愛い光景だ。モンギは既に倒れて部屋のオブジェとなり……邪魔だなぁ、これ。もっと壁に寄せとくか。癒しで倒れるとかお前も大概だよなぁ。




「……どうしよう。すごく今、母性に目覚めてるよ、僕」


「かわいーねー?」


 ジローが抱っこしているのはシオンの赤ちゃん、フランチェスカだ。女の子で良かった。シオンにそっくりというか、モンギとは別の生き物だな。本当に良かった。


 居間にはフカフカのカーペットが敷かれているが、チビッ子達の様子は、まるで草原で赤ちゃんをあやしているように見える。ジローに抱かれているフランチェスカは、なんか……ふにふにしている。


「あ、チーちゃん? ジュニアのたまたま引っ張っちゃダメだからね。泣いちゃうから」


「ふえ~……へ? じおー?」


「……うん、大人が何とかするからいいや」


 まだ二才児のチーちゃんに何を期待したんだジロー。体は既に二才児どころではなく成長してるが……五才児くらいか? でも言葉はまだまだだな。力は大人顔負けなんだが……大丈夫だよな? 


 デニ子の赤ちゃん……デニーロジュニアと名付けられた男の子の赤ちゃんは、目を真ん丸にしてガン見してるチーちゃんに抱かれてスヤスヤ寝ている。


 なかなか大物だな。あの視線で起きないとは。目力凄すぎだチーちゃん。もう少し柔らかく見ようか。


 でもよ、デニーロジュニアって名前はどうなんだ? 王族だから仕方無いとはいえ、酷すぎないか? 成人したら新しい名前が付けられるとはいえ……デニーロジュニアか。髪の毛は母親譲りの金髪か? 少し赤みが……いや、まだ分からんな。


 ちょろっと生えてる分は金髪だからまぁデニ子似なんだろう。


「ううっ、この子は僕が立派な淑女に育て上げるよ! 決してマミーとか白さんみたいな変態にはしない! 必ずだ!」


「……なんでそんなに気合入ってるんだ?」


 そこまでキリッとしてるお前を見るのは初めてだよ。お父さんは心配でならないよ。


「だって……ねぇ? 出産が終わって、すぐにまた原稿に向かっていったあのゲスどもみたいな女の子には、なって欲しくないでしょ?」


 ああ……。


 ……ショコラか。最近は締め切りがキツいとかでエルエルも一緒に働いてるんだよなぁ。セグラチアからやって来た巫女も。むしろその為に来たんだよなぁ、ペグニーは。


 …………はぁ……。


「なんかお疲れだね、パパン。これからパパンは、この子達のパパでもあるんだからね。とりあえずジュニアの貞操は僕が身を挺してでも守るから。もう手遅れな僕はいくらでも……」


「やめろジロー! お父さんも泣きたくなるから」


 哀しみのジローに触発されたのか……そこからは俺とジローと赤ちゃん達の大合唱になった。


 ……赤ちゃんの泣き声に反応して、むくりと起き上がったデニ子は……普通にすごいと思った。


 


 ……まぁ、ちょっと変わった家庭かも知れないが、ここが俺の家庭でみんな俺の家族……なんだよな。家族……か。

 

 俺の生まれた家は……普通の家族だったが……親父は元気だろうか。ジローが産まれた時に手紙は出した。だが……会いに行こうとは思えなかった。


 ……普通の父親だった。本当に普通の家庭で……もう俺の居場所は無い。ショコラと共に進むことを決意した時点で俺は『普通』を止めた。『普通』ではショコラの側に居られなかったから。誰彼構わず噛みついて『狂犬』なんて呼ばれることになったりもしたが……後悔はしていない。


 あの痛々しい過去の続きが、幸せな今なのだから。


 親父……こんな息子で済まねぇ。でも……今は幸せな家庭で暮らしてるんだよ。


「はい、ジュニアおっぱいですね~……ジローちゃんも飲みますか?」


「私も片方は空いてますから大丈夫ですよ? どっちにします?」 


「……どっちも結構っす」


「じぃお~! ちーも! ちーもやるの!」


 親父……済まねぇ。孫が幼馴染みにおっぱい吸われてるんだが、俺にはどうしようもないんだ。だって授乳の時は後ろ向いてるからな!


「うきゃぁぁぁぁぁ!」


 俺の背後からジローの悲鳴が聞こえてくる。チーちゃん……吸わせる方じゃなくて吸う方なんだな。チーちゃんバキュームか……また胸にアザが出来るなジロー。


「パパーン! 助けてー! なんか出るぅぅぅぅ!」


 大丈夫だ、息子よ。多分何も出ないから。つーか出たら困るし。


「あ、ジュニアもお兄ちゃんのおっぱいに興味津々ですか~……」


「あら、フランも……」


 ……お兄ちゃんって大変だなぁ。


「はぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 


 親父、お袋。孫は元気だ。俺も親として毎日が勉強だよ。親になるってのは簡単で難しいもんなんだな。父親として俺は……頑張るよ。いつか……一緒に酒でも飲める日が来るといいな。その時は父親の苦労を語り合おう。話したい事が沢山あるんだ。


 ……息子がおっぱい吸われた時にどうしたらいいか、とかさ。

 パパンは苦労人なので、そんなエピソードがこれから増えるかも。お父さんって大変だね。

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