ベヒさん日記 最初の一頁
この物語のマスコットであるベヒーモス。そのベヒさん視点の短編集です。
あれはいつの事だったのだろうか。我々がまだ世界の支配者としてそのプライドを持っていたときの頃の話か。
力を持つものは責務も同様に負うことになる。それがこの群れを預かるときに先代から教わった掟の一つ。この世界に喚ばれて、体面を繕うために一度だけ暴れて……その後、戦場から完全撤退した我らが辿り着いたのは緑溢れる豊かな土地であった。
我らの元の棲みかとは比べ物にならないくらいに魔力は薄かったが、それでも自然の中での暮らしは良いものだった。落ち葉のベットで眠ったり、なんら危険の無い草原を好きなだけ駆け回ったり。
我らは新天地……理想郷を見つけたのだ。
戦争が続くにつれ、この世界にも魔力が満ち溢れてきた。こうなると、もう故郷に戻る必要もない。生きていくのに問題が無くなった。
そう判断した私はこの世界に定住することを正式に決め、群れの者達に伝えた。暴れ足りないという血の気の多い者もいたが……黙らせた。
我らは誇り高きベヒーモス。そして私はその首長。
この世界の一角に我らの新たな故郷を作るのだ。
……でも、縄張りを拡げすぎた。ヤバイ存在のすぐ隣まで拡げてたのに気付いた時はもう……手遅れだった。だって……ゴブリンに囲まれてるなんて普通思わないから。
群れで掛かっても返り討ちにされる、そんな気配をプンプンさせる存在が複数……しかも、その内の一つは殺す気満々の危なすぎるナニカ。
……私は死を覚悟した。せめて時間稼ぎをして若い世代だけでも落ち延びるようにと……一番穏やかな気配の元へと向かっていった。出来る限り体を小さくして相手を刺激しないように。
ベヒーモスとしての誇りよりも群れの長として、私は命を使いたかった。
でも、我らの死神は……死神ではなかった。
むしろ可愛い赤子で……すぐに心を通わせた。驚いた。私は本当に驚いた。こんな生き物がいるのかと。こんな平和な解決法があったのかと。
それから……私達ベヒーモスは善き隣人と共に暮らしていくことになった。
それを良しとしない馬鹿者も現れたが……あっさりと返り討ちに遭う姿を見て、私は長として正しい判断をしたと改めて思った。ついでだから空いた枠で子供も産んでおこうと思う。
私の子供と相棒がいつまでも仲良く在るように願って。
出会い。ベヒさん視点だとこんな感じです。