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Meet You Again  作者: 藤乃 澄乃
第3章  隠された真実
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第20話   王女の行方(1)

 数時間後、栗色の髪は整えられ、きらびやかなドレスに身を包んだエレナは、使用人に連れられて屋敷から出て来た。久しぶりに外の空気を吸ったエレナは、少しホッとしたような気持ちになる。

 これからどうなるのか、という不安と外に出られたほんの少しの安堵感に、夜のひんやりした空気を思いっきり肺に流し込んだ。


 扉の前には馬車が止めてある。

 使用人はエレナを、その馬車に乗るように促した。


「どこへ連れて行くの?」


 おびえた様子で恐る恐る声を発したエレナの問いかけに、使用人は含みのある言い方で返す。


「あの方のところだよ」


「あの方?」


「ある国の偉ーいお方だよ」


「それはどこの誰なの? そして何のために?」


「さあね」


「ある国の偉いお方……せめてどなたの所へ行くのか、私には知る権利があると思うわ」


「どこの誰とは言えねえが……まあ、美人さんばかりお目通りしてるから、お妃候補かもな」


「え、お妃候補!? 今まで地下牢から何人か連れて行かれたけど、みんな同じなの?」


「かもな」


「今までお眼鏡にかなう人はいなかったってこと?」


「そうかもな」


「じゃあ、今まで連れて行かれた女性達は、その後どうなったの?」


「まあ、あの山の……おっと、口が滑ったな」


 それを聞いたエレナは得体の知れない恐怖にさいなまれ、馬車に乗ることを拒否し、抵抗した。


 あまりに抵抗したため、使用人はエレナの頬を打つ。


「何するの!」


 エレナは打たれた頬を押さえ、使用人をにらみつける。


「これ以上抵抗すると、もっと痛い目に遭うぞ」


 そう言って使用人は今度は拳を振り上げた。

 恐ろしさに身を縮めるエレナ。


「刃向かっても無駄だぜ。あの方にお目通りするため、失礼のないように綺麗に着飾らせたんだ。痛い目に遭いたくなかったら、おとなしく言うこと聞くんだな」


 エレナは無力な自分に唇を噛む。


「さあ、早く乗れ」


 ハハハと豪快に笑う使用人の言葉に、エレナはうなずいた。


「ええ」


 使用人に言われて、今度は素直に馬車に乗ったエレナ。

 抵抗しても男相手に逃げることはできそうにないし、自分だけが逃げたとしても、その後地下牢にいる女性達がどうなるのか心配してのことだ。


 ただ掴まれた腕を振りほどいて「ひとりで大丈夫です」と、凛とした姿で馬車に乗り込んだのは、エレナのわずかばかりの抵抗であった。


 どこに連れて行かれるのか、誰に会わされるのか。その目的は。

 不安で胸が張り裂けそうなのをぐっとこらえて、エレナは前を向く。


 エレナが着席したのを確認し、逃げ出さないようにと外から馬車に鍵をかけた使用人は、御者に出発の合図を出す。

 それを受けて、御者台前方の小さな明かりだけを頼りに、馬車はゆっくりと走り出す。




 その頃、やっとの思いで地下牢にたどり着いたエルトルーシオ達は、無事アナスタリナと梨里香に再会した。

 見知らぬ来訪者達を目にし、地下牢の女性達はざわめく。


「静かに!」


 人差し指を口に当て、アナスタリナはおとなしくするように女性達を促す。


「彼らは私とリリィの仲間よ。恐れなくて大丈夫。騒ぐと家主に見つかるわ」


 それを聞いて女性達は少し落ち着きを取り戻し、口を閉じた。


 アナスタリナは聞いていた王女の名前と、ここで出逢った王女の名前が違っていたことに少し疑問を感じ、王子に正確な名前を確認した。


「ちょっと聞きたいんだけど、王女の名前はエレナで合ってる?」


「ああ。エイレリーナ……私たち家族はエレナと、そう呼んでいた」


 アナスタリナは、きっとエレナもアナスタリナと同じく、本名を名乗るのを控えていたのだと考えた。

 喜びも束の間、アナスタリナから経緯いきさつを聞いたトレニーヌ国の王子であり、エレナの兄であるサラセオールはガックリと肩を落とす。


「そうか。もう少し早く来ていれば!」


 王子は両拳を握りしめ悔しがった。


「それで、どうする?」


 アナスタリナは淡々と問う。


「行き先が解らない以上、追いかけることもできない。ならば聞くしかないな」


 エルトルーシオの言葉に、アナスタリナも「そうね」と答えた。



お読み下さりありがとうございました。


次話「第20話 王女の行方(2)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第20話   王女の行方(1)読みました。 どうなっちゃうの~~?? ……という感じが良いですね。(^ー^) ここからの展開も気になります、楽しみです。
[一言] 聞くしかないですね。
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