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Meet You Again  作者: 藤乃 澄乃
第3章  隠された真実
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第19話   見つけた(1)

 エルトルーシオ達は一度屋敷から離れ、夜になるのを待った。

 先ほどの話から、アナスタリナが地下の牢にいるのは明白である。屋敷に動きがない様子から、差し迫った危険もなさそうだと判断し、作戦を立てるために宿に戻ったのだ。


 しかしエルトルーシオ達がその場を去ったすぐ後、屋敷の方に動きがあった。


 金色の美しい髪をした1人の女性が、髪は整えられ、きらびやかなドレスに身を包み、男に連れられて屋敷から出て来たのである。男はその女性を、扉の前に止めてあった馬車に乗るように促した。

 しかし馬車を目の前にし、それまでおとなしく従っていた女性は、馬車に乗ることを拒み、その場から一歩も動かなくなった。


「おい、なにをしてる。さっさと馬車に乗れ」


 男に腕を掴まれてもその手を振り払い、唇を一文字にきゅっと結び、毅然きぜんとした態度で男をにらみつける。


「なんだ、生意気な!」


 そう言うと男は強引に馬車に乗せようと、大きな手で今度は女性の肩を掴んだ。

 女性は「やめて!」と声を荒らげ、渾身こんしんの力を込めて男を突き飛ばす。

 よろめいた男は転びそうになり、それを食い止めようと指先に触れた物に思いっきりしがみついた。

 その弾みで、馬が大きく前足を上げいななく。突然尻尾を掴まれた馬は驚き、誰も乗せずに馬車もろとも走り出した。


 慌てた男は、「待てー」と叫びながら走って馬車を追いかけて行く。


 その時、屋敷の扉がギイと音を立てた。

 騒ぎを聞きつけて使用人が女性の元にやって来たのだ。

 

「いったい何の騒ぎだ。馬車はどうした?」


 女性がかいつまんで説明すると、大きなため息とともに「今日はムリだな」と使用人は腕組みをする。そして女性に「次の予定が決まるまで、もうしばらく牢にいてもらう」と告げ、彼女を連れて牢へと向かう。


 綺麗なドレスをまとっていた金髪の女性は、元の服に着替えさせられ、また牢に戻ってきた。

 牢にいた他の者たちは、一度ここから出て行って戻ってきたのははじめてだと、たいそう驚いていたが、なにはともあれ、彼女の元気そうな様子に安堵する。

 




 次の日の早朝、再び屋敷に戻ったエルトルーシオ達は、昨夜の出来事などつゆ知らず、建物の横にある物置小屋の陰に身を潜め、屋敷の様子をうかがう。


「変わりはないようだな」


 トレニーヌ国の王子、サラセオールの言葉に一同はうなずいた。


 何の動きもないままに、ただ時間だけが過ぎてゆく。

 梨里香と紫苑は少し緊張の糸が緩んだ様子で、退屈そうにしていた。


「ふたりとも、こうやって待つのも仕事のうちだぞ」


 エルトルーシオは、はははと笑いながら言う。


「そう言われても……」


 梨里香は唇をとがらせた。


「いつまでこうして待っているのか、先が読めないだけに、ずっと緊張しているのは難しいよ」


 紫苑はそう言って足元の小石をつまみ、ポイと放り投げた。


 すると小石が何かに当たり、カチンと乾いた音を鳴らす。

 金属音に驚き、4人は顔を見合わせ、その音がした方に走り寄る。




 草をかき分け、音の主を探すと、地面に鉄板のような物が見えた。


「これか」


 エルトルーシオが覆われている草を取り除くと、そこには金属製の大きなふたのような物があった。


「これは?」


 サラセオール王子は問う。


「シオン、手伝ってくれ」


 エルトルーシオは、王子の問いには答えずに、紫苑とその“蓋”を持ち上げる。

 四角い鉄板の一辺は、2つのちょうつがいで止められていたが、その反対側が持ち上がった。

 中は暗闇で、奥までは見ることができなかったが、地上近くには日の光が入り、階段らしき石段が見られた。


「きっとこの下はどこかに繋がる通路だろう」


 エルトルーシオは先ほどの王子への答えを放ち、続ける。


「さて、どうするかな」


 先ほどまでとは打って変わって緊張の糸が走り、4人を包み込む。

 エルトルーシオは何やら考えている様子だが、梨里香、紫苑、サラセオール王子はゴクリと唾を飲み込んだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「第19話 見つけた(2)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第19話   見つけた(1)読みました。 エルさんたちがいなくなってからの出来事、はらはらしましたが、これまた謎がありそうです。 ここからまた繋がりそうですね。 地面の不思議な…… こ…
[一言] これは突破口になるでしょうか。
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