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Meet You Again  作者: 藤乃 澄乃
第3章  隠された真実
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第16話   稽古の成果

今話から第3章『隠された真実』に入ります。

 梨里香と紫苑、そしてエルトルーシオとアナスタリナの4人は、それぞれ馬に乗りトレニーヌ国へと向かった。


「城での訓練中は、乗馬とか結構キツかったけど、真面目に練習していて良かったよ」


「こんなにすぐに役立つときがくるなんてね」


「まあ、颯爽と馬で駆ける、なんてちょっとカッコいいしな」


 梨里香と紫苑がそんなことを話しながら進んでいると、先を行くエルトルーシオがふたりの傍までやって来て、「そこの大木のところで少し休憩しよう」と話しかけた。


 4人は大木の傍に腰を下ろし、水分の補給と昼食を摂ることにする。


「あの丘を越えるとトレニーヌ国だが、城に行くまでに城下町でそれとなく情報を集めてみよう」


 エルトルーシオの言葉に3人はうなずいた。



 昼食後、4人はまた馬に乗り丘を越え、いよいよトレニーヌ国の領地にさしかかる。


「あの草の色が変わっているところからトレニーヌ国だ」


 エルトルーシオの言葉に梨里香と紫苑は草原の先に目をやった。


「国境が一目でわかるように、国境付近の芝の色を変えてあるんだ」


 エルトルーシオの言葉に、ここマスナルヨシ地方では、国によって草原の草の種類が違うのか、と梨里香と紫苑は感心する。


「ピュリアール王国の方がトレニーヌ国よりも少し深めの色合いになっているのよ」


 アナスタリナの言葉に、「解りやすくていいですね」と紫苑が答えた。

 



 国境付近まで近づいたとき、エルトルーシオは馬を止め、緊張の面持ちで皆に言う。


「ここから先は他国の領土だ。何かあってもその国のルールに従わねばならない」


 梨里香と紫苑は一気に緊張の面持ちになる。


「と言っても、トレニーヌ国は比較的ピュリアール王国に近い、善良な国だと思うけどね」


 アナスタリナの言葉に、梨里香と紫苑は少し胸をなでおろす。



「さあ、行くぞ」


 エルトルーシオの声に、梨里香と紫苑は襟を正した。




 * * *


 一行は国境からトレニーヌ国に足を踏み入れる。

 梨里香と紫苑は心なしか、空気が変わった気がした。

 何がどう変わったのか説明はできないほどの変化であったが、爽やかなピュリアール王国とはまた違った少し熱を帯びた空気に感じたのである。


 ピュリアール王国の領地は広大なため、馬を走らせたりかけ足にしたりしながら進んでいたが、トレニーヌ国に入ってからはゆっくりと移動するようにしていた。

 エルトルーシオに何か考えがあってのことだろう。


 しばらく和気藹藹わきあいあいと話しながら進んでいた4人だが、不意にエルトルーシオが皆に止まるよう合図を送る。


「どうしたんですか?」


 紫苑の問いにエルトルーシオは、人差し指を立てて口元に当て、静かにするように促す。

 4人に緊張が走る。


「さっきから、誰かが後をつけてくる気配がする」


 エルトルーシオの言葉に、「やっぱり気づいていたのね」とアナスタリナが言う。

 梨里香と紫苑は、自分たちはただ何となく、ただ楽しく進んでいただけで何の気配も感じなかったのに、エルトルーシオとアナスタリナは流石だなと感心していた。


 周りに注意を払いながら、梨里香たちは進む。


「やはりつけられているようだな」


 エルトルーシオがそう言うと、アナスタリナは梨里香と紫苑に「気をつけて!」と声をかける。


 その刹那。


「うおおおー」


 叫び声とともに茂みから飛び出した大柄の男が走って近づいてくるのが、4人の視界に入った。

 手には大きな斧のようなものを掲げて、もの凄い勢いで突進してくる。

 梨里香と紫苑はあまりの勢いに怯んだ。

 アナスタリナがすかさずふたりの前に出る。


「何者だ!」


 叫び声とともに、男の後ろから数名の男が現れた。


「止まれ!」


 エルトルーシオが声を荒らげて発するも、まるで聞こえていないかのように反応がない。


「どうやら話をする気はないようだな。アナ、行くぞ!」


 その言葉を合図にエルトルーシオとアナスタリナは、突進してくる得体の知れない者達に剣を構えた。

 梨里香と紫苑はあまりの迫力に、さやから剣を抜くことができない。

 もしもの時のためにと、剣術の稽古をしてきたふたりではあったが、稽古の時は相手も少々の手加減はしてくれていたし、稽古だという認識の元で剣を振るっていたわけで、いざ本番となると足がすくむのも無理はない。


 そうこうしている間に、得体の知れない者達は勢いを緩めることなく、エルトルーシオたちをめがけて突進してきた。先頭を走って向かって来ていた大柄の男が、エルトルーシオめがけて大きな斧を振りかざす。

 エルトルーシオは一歩も引かずに剣を相手に向けている。

 男の振り下ろした斧をすかさずはじき返すエルトルーシオ。


 その間に追いついた他の男達も順にアナスタリナをめがけてつかみかかろうとした。

 アナスタリナは男の手を払いのけ、次から次へと身をかわす。


 梨里香と紫苑は、実戦のあまりの迫力に戸惑うばかりであった。


「下がっていろ」


 エルトルーシオに言われるまま、梨里香と紫苑は一歩後ろに下がる。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 風雲急を告げる新章ですね。
[良い点] 第16話   稽古の成果 読みました。 国境の草の色が面白かったです! 静かなコミカル要素が好きです。((o(^∇^)o))
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