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公爵令嬢のためいき  作者: ヨハネ
2/3

サフィーナとサオリ

ほぼ説明

夢の中で夢だとわかるのは、私だけど私じゃないから。顔も髪の色も何もかもが違う。まわりにある物も不思議と名前も使い方もわかるけれど、どれも私には馴染みがない…というよりも知らないはずの未知の物体。

夢の中の私はサオリという名のニホンジン。仕事をする独身女性で一人暮らし。オトメゲームが大好きで中でも今プレイしているものが一番のお気に入り。

王太子ジェルドの好感度が良い感じ。このままいけば学園の舞踏会で婚約者になれるはず…。




*****




「おはようございます、お嬢様。今日のお召し物はこちらを…」


目が覚めてから改めて夢の内容を考えてみる。未知の物体、デンシレンジ、レイゾーコ、テレビ…理解できない原理のあり得ないものに囲まれて生活するサオリ。でもそれは私。夢の中で見慣れていた光景なのに現実では違和感でしかない。

私付きの侍女ネネリィがドレスを着付けてくれる間、ぼんやりと室内を見渡す。大きな窓とバルコニー、ベッド、ソファにテーブル、チェスト…落ち着いた色合いでまとまっていて、どれも一級品で繊細な装飾がされていて私好み。サフィーナには見慣れた部屋だが、きっとサオリには違和感しかないと思う。そんな気がした。

サオリは私の前世の人格だと宮廷魔術師が教えてくれた。王族は特に強い魔力を持つし、王妹であるお母様もかなりの魔力を持っている。魔力が才能を底上げし、時に補い、大抵何かに秀でているのに私には全く魔力が使えない。宮廷魔術師いわく、私にも魔力はあるのに自分の意思で使えないらしい。その代わりに私の前世が夢に出てきたのではないか、と言われた。一種の過去見の力らしい。

そして最近、夢でサオリが好んで遊んでいたオトメゲームを体験することになったけれどそれが驚いた。ゲームの内容が今、私が頭を悩ませている状況に瓜二つというかそのまんま。登場人物の名前すら同じ。そしてそのゲームの結末は私にとってはあまり嬉しいものではなかった。夢の中の私はとても喜んでいたけれど。

そこまでぼんやりと考えていて、気づいた。今日のドレスは普段着るものより客人を迎える為のものだった。


「あら、ネネリィ? 今日は誰かいらっしゃる予定だったかしら?」


私の記憶にはなかった気がするけど…。


「はい、実はすでにアレックス様がいらっしゃっています。急な来訪になることお詫びしますとのことです。知らせがあったのは昨夜遅くというか夜も明けきらぬでお越しになったのは早朝だったため、ご報告ができなくて…」


アレックス様は私の婚約者。王太子付きの文官だけど、元々は騎士だったから護衛もかねているらしい。だったら王太子付き護衛騎士でよくない?

アレックス様は侯爵家の次男で私が一人娘なので結婚後は公爵家を継ぐ予定。頭も良いし回転も早いはずなのに剣術の訓練を始めたら好きになったのかどんどんのめり込み、上達したのはいいけど、比例して頭の中身がどんどん筋肉になってしまった。率直にいうと単純バカに成り下がってしまった…。幼少期から婚約しているので将来公爵家を継ぐ事がほぼ確実だったので侯爵様とお父様はアレックス様の脳みそを大層心配されて、なんとか筋肉脳みそを脳みそに戻そうと教育を始め、面白がった王太子殿下が文官として重用することにした、と。

最近は脳みそがドンドン成長しているようなので、私の相談に乗ってもらうことにして、近々我が家に来てほしいと王宮のアレックス様宛に手紙を出したのは一昨日。たぶん、手紙が届いてすぐに来てくれたのだと思うけど。単純バカの名残がここに…。


「…アレックス様はどちら?」

「今は応接室でお待ちいただいております」

「お父様とお母様は?」

「アレックス様と少しお話しされて、今は食堂で朝食を召し上がっているかと」


行儀悪いけど応接室で朝食にしちゃおうかな…。アレックス様が非常識な時間に来たのだし、許されるでしょう。


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