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輪舞(RONDO)  作者: asd
7/7

彼女の名前

こんばんわ、asdです


おそくなりました

彼女はこれから本当の世界を知るでしょう。


どうぞ、ご覧ください。


「マザーはどこにいるのかな?」



真っ黒なおじさんがはなしかけてきました

それは真っ暗な日でした


おじさんだれなんですか?


「私はね君たちの父親だよ」



ぼくたち、わたしたちはおとうさんなんかいないよ


「違うよ、私が父親だよ」


かぞくはいるけど、おとうさんはいないよ


「マザーはいるだろう?僕は父親だよ」


そうか!あたらしいかぞくの“おとうさん”だ


「何でも言ってごらん、全部かなえてあげるよ」


ほんとうに?


「うん、私は君たちの“お父さん”だらかね」


じゃああまいおかしは


「たくさんあげるよ」


まざーよりだきしめてくれる?


「もちろん、父親だからね」


じゃあいっしょにあそぼう


「いいよ!なにをしようか?」


かくれんぼがいいな


「みつけたら鬼さんは食べちゃうぞ」


「「「「いいよ!」」」」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い




「おはよう、我が子達」





いたかったけどじきによくなりました


さむいひはなくなり、あついひもなくなりました


おなかはつねにまんたんで、とてもたのしくおとうさんとはなしました


まざーにはないしょで、たくさんおとうさんとごはんをたべました


あな、りお、じゃっく


ぼくはいましあわせです


またきみたちにあえるとわかりました


またきみたちとおとうさんにあうために


ぼくはねむります








「救われない魂はない」







アリシアは勢いをつけて大きく剣を振った。

その剣先は赤毛の男の子の首を飛ばし、赤黒いしぶきに汚れた。


ゴトンと首が落ち、干からびていく。


「ああ、じゃっく…」


女の子が膝をついた。

その横で黒髪の男の子が、二人を見つめ泣きそうに眉間に皺をよせた。


「おきゃくさん、おとうさんにおこられちゃうよ」


両手を伸ばしヨタヨタとアリシアに近づいてくる。


「大丈夫、お父さんも一緒だよ」


アリシアは銀をはしらせ幼い左胸を突き刺した。


同じように二人の首も一片の閃光に消えていく。

哀れで小さな個体は灰になって崩れ、衣服だけがその灰色にむなしく残っていた。


「…では本題に入るとしましょう、“おとうさん”」


アリシアは何もない空間、その悲惨な光景に向かって話し始めた。


「君はレディアリシアだね、こんばんは」


大きな食堂机の影がズズッと蠢き形を成した。

どこにでもいる神父に見える。

細い目に下がり気味の眉、優しい顔立ちに少しやせた体つき、

後ろで手を組み、黒髪を後ろになでつけた微笑む神父である。


「無礼な位置から失礼したね、君のような人には礼儀正しくしなければ」


神父は襟元を正し、細い糸目でシスターを一瞥した。


「彼女はいつも子供を大切にしていたんだ、僕は父親代わりにここへ来たのだよ。」


蠢く影をまとう神父は足を前に進め、二人に近づく


「それ以上動けば、私があなたを殺します」


「フフッ!この体では今度こそ無理さ!本当に君は面白いことを言うね!

我が“王”が聞いたら何と言うかな?」


神父は両腕を広げ少しその細い目を少し開いた。


「まぁ、君は優しい女性だ。しかし、その優しさは甘さだ。さぁ今度も殺すがいいよ。」


「何を言っている、私がお前を殺すのはこの一度、この一突きだけだ!」


握りなおした銀が鋭く光り、アリシアは歯を食いしばった。

何度も怪物を殺すたび、聞かされるその言葉を、わけもわからず噛み締めることしかできないのだ。


「分からないだろう、僕だってそうだよ。でも、世界の理なのさ・・・

いくら思っても時は過ぎていく。同じことを繰り返すことに、

そろそろ不死者は気が狂いそうなのだよ」


薄く開いたその目を、少し悲しそうにシスターへ視線を移した。


「僕はね・・・一目”あの日”の君に合いたくて、何度でも繰り返しているのだよ・・・

けれどもう、いささか疲れた・・・これで本当に最後だ・・・」


「えっ?」


一瞬の間で小さくつぶやいたその言葉を、シスターは受け止めたのだろうか。

彼女の目に小さく熱が灯っていた気がした。


そんなはずは無い。


「黙れ、化け物!!!」


アリシアはその銀を神父に突き刺した、と思ったが

途端、その影は崩れアリシアの足元を潜り抜け、シスターのもとへ迫った。


「嫌ッ!!!」


青ざめたシスターが逃げようと月明かりの窓へ駆け寄った。

しかし、足が言うことを利かない、彼女はその場でもつれた折れる。


蠢く影は崩れ落ちているシスターへかけより、新しく神父の形を成し、

彼女を背中から抱きしめていた。


「覚えていないのかい?僕たちはずっと小さな子供のために生きてきたじゃないか・・・思い出しておくれ、君と僕と子供たちの生活をッ・・・」


シスターが声も出ない様子で更に青ざめる。

影は首元に顔をうずめ、彼女の血液を今にも我が物にしようと息を吸い込んだ。


「止めろッ!!!化け物!!!!」


アリシアが窓へ駆け出す。


その間にも今かまだかと、影はシスターを抱きしめ、

首筋の香りを吸い込み牙を向けている


「止めてエエェェ!!!!!」



月明かりに照らされた銀色の閃光が走る。

シスターの腕が空を切った。



キーンと食堂に声の残響が残った。



アリシアは振るったその銀先が、男に突き刺さる感触を確かめながら、勢いで堅く閉した目を開いた。









その鈍い銀に血が付いていた。

少しづつ二人の周りにその紅は湖を作っている。


「はは・・・やっとだ・・・もう苦しむことは無い・・・偽りの神も、

もう僕たちを攻めることはできない」


突き刺さる銀に男は穏やかな顔でさらさらと消えていく。

崩れ行くそれは、もう二度と動くことは無いだろう。


紅に灰が混じっていく、その色は色彩を足されていく。

灰に包まれたシスターはその残骸を哀れみと憎しみを込めて、愛しそうに見つめた。


「なんでかしら・・・悪い心地がしないの・・・」


シスターは首から心臓の音と供に溢れるその紅を手にとった。

その指先は灰色が見え始めている。



「助けられなかった・・・」



胸が痛い、化け物が彼女を変える瞬間を止められなかったのだ。彼女はグールになってしまった。


「ねぇ・・・なぜ・・・名前を、知られている…の?」


辺りが明るくなり始めた。

いずれ朝日が差し込み始める。

その質問に答えても彼女は息があるだろうか。


主人を失ったグールは消滅するしかない。

ましてや日の光に直接照らされるなど、化け物に生き残れる訳が無い。


「私も・・・知りたいのです、彼らが言う王に会えればそれがわかるのです。」


ゆっくりとしゃがみこんでか細い声で、答える。

シスターを直視できない、彼女が美しいと考えたくも無い。

死に行く人間に美しさなどあってはいけないのだ。


「もう合えないけれど・・・私たち幸せになれるわ・・・今度こそ・・・」


その言葉にはっと息を吸い込む。


「!!!それは・・・どう・・・いう・・・」


もう息は無い。


二人の化け物がそこに灰となって音もなく崩れ落ちた。

留まった紅が染み込み、泥のようなそれは、

今後のアリシアが抜け出せない場所へ向かう暗示に見えた。



彼女の名前はアリシア、ただのアリシア


父の敵の吸血鬼を探し、抹殺することが彼女の目的である。


彼女は吸血鬼ハンターである。



ただほどこわいものはない

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