つきし仲間
真琴は問うた。
どうしてあの男の子があんなところに?
「あたしの覚えてる限りでは、ある女の人が、自分の魔法習得と引き換えに、
自分の息子を置いていった・・・それが、あのコ。名は、晴樹。ハルキよ。」
もう眠ることができなくなった晴樹は、床に仰向けで伏せながら歌っていた。
とてもきれいな、オカリナのような声で。
「ねえリーン。いつ出してくれるの。いい加減うんざりだよ。もうこの世には、
あの女しか僕の知ってる人はいない。生きてたって意味無いじゃんか。
あの時と同じように、あのときの仲間とふざけたりいたずらしたり
つるんだりすることは、もうできないんだから。もう疲れたんだ。
死ねないなんて、この上ない苦痛はない。君はいいねぇ。自由でさっ。」
真琴に向かっても、初めて口を利いた。
なんて悲しいことを言う?もう1人で千年以上生きているのだ。
そう思うのも、仕方の無いことだが。
「リーンさん、あの子をここから出してあげること、できませんか?」
リーンは即答。
「無理よ、決まりだもの。それともあなたがあの子の代わりを連れてきてくれるとでも
言うの?」
「僕は身代わりが使えるんです。」
「駄目よ、からっぽはいけないわ。魂が入ってないと・・・」
「魂入りでね。」
そういうと真琴は、茶色の宝石から影を2体出し、そのままスティックから
茶色の宝石をはずして半分に割り、それぞれ影達の口に放り込んだ。
自分の身代わり(魂なし)の影を出す魔法だったので、
どうしても必要というわけではなかった。
宝石を呑んだ影はみるみるうちに肉体をつけて、1体は晴樹そっくりに、
もう1体は真琴そっくりになった。
「代わりに入ってるんだよ。お前達の役目はそれなんだ。」
シャウジャは、「晴樹」と「シャドー晴樹」をトレードした。
そして「シャドー真琴」をオブジェに加え、真琴はプラズマ魔法を習得した。
真琴のスティックに蒼碧色の宝石がひとつ新たにはめ込まれた。
晴樹はうれしそうだった。
「え、出ていいの!?え、え、なんか知らないけどサンキューッ!!!」
1人だけハイテンションだ。裏世界は千年以上前から表世界の現代語を使ってたらしい。
「ねえ君。」
真琴は晴樹に声をかけた。
「あ、さっきの・・・」
「僕と一緒にこの迷宮を巡ってくれないか?これから先、僕1人じゃ
乗り越えては行けない壁にぶつかると思うんだ。何度も。その時に、君の力を借りたい。」
晴樹は一瞬戸惑ったような顔になる。でもすぐに笑みを作り、
「俺でよければ!これから行く当てないし?うん、行かせて下さい!!」
すぐに答えてくれた。真琴は今まで一度も、誰かの手を借りたいなんて
思わなかった。こんな気持ちが湧いたのは初めてだ。どうしても晴樹を
仲間にしたいと思った。自分とは正反対の性格の晴樹といれば、
なにか面白いことがありそうだ、と直感で思ったのだ。
真琴はそのまま晴樹を連れて先ほどの少女の部屋に戻っていった。