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迷宮  作者: 桜水晶
8/11

大魔導師

「鍵を充電すると言っていましたが、それは鍵用の特別な水晶とかですか?


それとも、そこら辺の家具でも充電できるんですか?」


「そこら辺のじゃ充電は難しいかもしれないわ。充電用のものはちょっとそこらのとは


つくりが違うの。充電用のはそのなかに、直にプラズマ魔法をためておけるように、


ちょっと空洞の部屋が多いの。その中に平等にプラズマ魔法のカケラを入れていけば、


まんべんなくきれいに光るでしょ?それで『鍵』の存在が示せる。不便だけどね。」


(どうやって探せと・・・プラズマ魔法があれば部屋全体に魔法を流して


充電が始まったところに鍵があるとわかって簡単なのに・・・)


真琴はまだプラズマ魔法を習得してはいなかった。(ッていうかこのコ、


プラズマ魔法使えるんなら自分で探せばいいじゃん!)と思って口に出したが、


「こんなにか弱い少女に、そんな体力あると思う?」


こうしてはじかれた。とりあえずプラズマ魔法を習得すればいいのだが、


どこでやればいいのか・・・。


「あなたはそのプラズマ魔法、どこで習得しましたか?」


「学校よ。写しの世界にだってソレくらいあるわ。確か、この部屋から


左に9室くらい行った所にあると思うわ。」


「そうですか、ありがとう。」


真琴は写しの世界の中のまま、鍵を探しに部屋を出た。


9室目の部屋に入る。きれいな部屋が、そこにはあった。


とても広い。表世界の学校の体育館ぐらいはある。天井もとても高い。普通の建物なら


ありえないくらいに。この「迷宮」は、建物として成り立っていないのだ。


部屋という1つの「空間」がそれぞれドアの向こうにあり、率直に言えば


「別次元」が部屋としてたくさん集まったところなのだ。


なので、本来は上の階の部屋があるはずの場所にまでその下の階の部屋が


はみ出していても、その上の階の部屋はふつうにちゃんとある。


別の空間だから、重なれる。そう考えれば楽に理解できる。


真琴は部屋を隅々まで観察した。人はいない。


この部屋は水晶でできてはいなかった。


この部屋全体、ピンクがちょっと濁ったような色をしている。


ローズクオーツかなにかだ。床にはすでに、たくさんの傷があった。きっと


生徒達が走り回って遊んだかなにかしたのだろう。真琴はそう考え、また歩き出す。


床を見ながら歩いていると、


目を疑うようなものが床に埋まっていた。


人は、いた。


生きている。目を大きく見開いて、下からドンドンと床をたたいてくる。小さい、


表世界の人間年齢で7、8歳ぐらいの男の子だった。


埋まっているといっても、床の下のひとつの小さな部屋のような空間に、


男の子が1人、入っているのだ。なにか言っているのが聞こえるが、


こもっていて聞こえづらい。真琴は床に耳をつけるようにして伏せた。


「僕と代わってください。」


そういっている。どういうことだか、さすがに真琴にも状況が理解できなかった。


「え…?」


するとどこからかハイヒールのような靴の高い踵が、


ローズクオーツの床に当たるような高い音がした。


すると床の下の男の子の表情が強張って動かなくなってしまった。


真琴が振り返るとそこには、ひとつの絡みもないようなきれいな金髪の髪の毛を


後ろで高く束ねてちょっとひねって黒いゴムでとめて、


健康的な白い肌の上の唇には真っ赤な口紅がぬってあり、


度が入った厚い眼鏡に、絹のような素材のスーツのようなものを


着用した、一言で言えばきれいな女性がこちらに歩いてきているところだった。


その女性は口角をにやりと曲げて僕の前まで来て止まった。


「あたしのオブジェよ。どう?」


女性は満足げに男の子を見た。男の子は表情一つかえていない。固まってしまった。


信じられない。ナマの人間が、オブジェだって?どうしてこんな酷いことを?


「オブジェですか?これが?なんの。」


「弱い人間の、オブジェ。この子以外にもいっぱいいるわよ?床をご覧なさい。」


気がつかなかった。この子以外にもたくさんの人間が、床下の、


時間の止まった空間の中に閉じ込められていた。


「あなたもプラズマ魔法を求めてきたようね。


でもね。それを習得するには犠牲がいるの。知らなかったの?それにされたのが


哀れなこの子たち。私が今までに閉じ込めてきた人間の数だけ、


この世にはプラズマ魔法を習得した魔導師達が生きているの。


まあ、犠牲にされた人たちも、した人が死ねばこの世に戻ってこられるんだけど。」


そういう彼女の口調は冷たかった。横目で真琴をみる。


「名は…、マコト?私にはいろんなものが透けて見えるの。


あなたの名前も、あなたの服もね。」


「変態野郎、自分の名を名乗れ。」


「うふ・・酷いのね。あたしの名前はシャウジャ・リーン。プラズマ魔法の


第一習得者。そしてプラズマ魔法専門の大魔導師でもあるわ。」


すると今度は床下の男の子に向き直って口を開く。


「あらあなた、よかったわね。もうすぐであなたの旧友、死ぬわよ。


やっと出られるのね。何年?・・・、200年ぶりね。


あ、いうの忘れてたけど、習得した特別な魔導師は望んだ時間が生きられる。


うん、この子を閉じ込めたお友達は、欲は少なかったみたいね。


人によっては一生出られない人だっているのよ?


例えば…ウ〜ん。あのコね。」


シャウジャは一番端の床を指差した。


「あのコはこの中で一番長い間ここにいるわ。


                 まあ、居たくているんじゃないんだけど。」


その床の中には、真琴と同い年くらいの男の子が寝ていた。


真琴に劣らないくらいの美少年。


深い碧色で、袖に黒く光る絹のようなものでラインが入っている


きれいな服を着ていた。


シャウジャはそこの床を踏み鳴らし、男の子をおこした。


「くふあ…、ん、んっ?よく寝たァ。何年くらいだろ。500年?


ねえオバサン。俺、何年くらい寝てた?」


途端に男の子の部屋の中に電気が走る。


「だれがオバサンですって?あたしは電気の使い魔よ。あんまりなめなさんな。


痛い目見るわよ。」


「うええ、わかったよう。で、何年?」


「ざっと1000年くらいかしら。確かね。」


「ええええそんなに寝てたんだア!もう眠れないよォ。ああ、また暇ばっかだァ。」


男の子はグタッと寝転がる。その茶色くさらっとした髪の毛が


何も無い空間に触れる。疲れたような大きな瞳がゆっくりと閉じられる。


真琴に比べると少々品が無い。まだまだやんちゃ盛りだったのだ。


それにしても、男の子が入る前からいたシャウジャは、一体どんな人なのだろう。


真琴は不意に思った。













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