見えない世界への扉
真琴の旅は魂を探すこと。
魂を集め、ひとつの結晶を作れば、この迷宮から出られる・・・はずだった。
真琴は地獄の沼があった部屋の隣の部屋に来ていた。
すると今度は何もなかった。部屋一面、壁も地面も石だけで、あとは何もなかった。
目に見えるものは何もなかったが、音だけはあった。
泣き声が聞こえる。すすり泣くような泣き声。細い声の、女の子の。
「誰かいるんですか。」
真琴の呼びかけにも応じない。ただただ泣いている。
「もう一度聞きます。誰かいるんですか?」
やはり何も変化はなかった。すると今度は、
「誰もいませんね。なら、消去の魔法をこの部屋に使っても大丈夫ですね。」
泣き声が止む。そして、細くきれいな声が聞こえた。
「酷いのね。普通女の子が泣いていたら声ぐらい掛けるじゃない?」
「でも、僕には君が見えない。」
「あなた、魔法は使えないの?」
「一応使える。けど、まだ透視の魔法は備わってない。」
「じゃあ駄目ね。」
「どういう意味ですか。あなたの泣いていた理由も含めて。」
「鍵が、ないの。無くしちゃったの。この部屋のどこかで。
だから、ここから出られないの。」
「無くしたって言われても。この部屋には何もありませんよ。」
本当に、何もないのだ。
「あなたの世界の側からはきっと見えないのよ。こっちの世界に来て。
そして探してちょうだい。こっちの世界からなら、あなたも私が見えるはず。」
世界?どうやって世界を越える?
「こっちの世界は写しの世界。鏡があれば越えてこられる。
この部屋のどこかに、鏡があるはずよ。見えないけれど。そこから入ってきて。
鏡は魔法をはじくから。」
それだけ言って声は消えた。とりあえず、魔法をはじくならこの空間いっぱいに
魔法を張ればいい。はじかれた場所に鏡がある。そう考えれば簡単だ。
真琴はスティックについている紅色の宝石を息で吹いて炎の魂を出現させ、
魂を壁に固定して、一気に炎を噴出させた。
真琴は、今度は紫色の宝石に息を吹きかけて、自分の周りに
半透明の紫色のシールドを張った。そして炎がいっぱいになるのを待った。
魔法の炎は普通の炎と違い、すぐに消えたりはしない。なので、
この石の部屋は、真琴の炎の魂が3分間くらい炎を噴射し続けていると、
あっという間に炎であふれかえった。
そして、扉から入って右斜めのところに歩いていくとあたる壁が、炎をはじいて
目立っていた。真琴は炎の魂の出した炎を黄色の宝石の魔法で一気に消すと、
シールドを解いてさっき炎をはじいていた壁の中に走りこんだ。