孤独
「僕じゃない。こんなことをしたのは、僕じゃない!!」
石の地面に染み付いた赤黒い血の跡。
真琴のスティックの先端についている刃物から滴り落ちる血。
真琴の胸辺りから顔までにかけて浴びた返り血。
足元に倒れているのは、さっきまで一緒に旅をしていた仲間、莢乃だった。
首から勢いよく鮮血が流れ出している。もうゼッタイに助からないだろう。
真琴はへなへなと膝をつき、目を大きく見開いて、がちがちと震えていた。
そして、怖くなって逃げたのだ。
それからだ。
僕と旅をすると不幸になる。僕が不幸にしてしまう。無意識のうちに。
真琴は緒が切れると、意識が飛んだように無くなる。
そして、目の色が無くなり、気がつけば周りはいつも荒れていた。
だから誰もよってこなかった。いつも一人だった。それが当たり前だった。
孤独にはもう慣れていた。
母親さえ寄り付かない彼に、ただ一人やさしく接してくれたのは、
彼の幼馴染である、たった今真琴が殺めてしまった莢乃だった。
もう、そんな人もいない。自分で消したから。
本当の孤独だ。
スティックの先端を拭く。さっきの感覚が手の神経に蘇る。
人の肉を斬ったのは初めてだ。自然と指が動く。痙攣している。
大きく震える手でスティックをつかみ、オプションでつけた魔法を
発動させる。スティックについている黄色い宝石に息を吹きかけると
息と一緒に宝石から魔法が流れ出し、
2,3回フラッシュしてから莢乃を包んで消えた。
証拠は消した。僕じゃないんだ。
ここは迷宮の中の一室。
大きな屋敷のような、石でできた壁と地面に囲まれている。
真琴は知らなかった。人を殺めたことで、真琴はこの屋敷から
もう一生出られなくなったことに。