97.とりあえず進んでみよう
「夢、なわけないわよね」
流石に立ち話をしながら寝るという高度な芸は残念ながら身に付けていない。
「おでこが痛い」
あのワニもどきがラジの頭を踏み外したおかげで長い鼻をもろにくらった額はズキズキと痛む。
「あ、ノアもいないじゃない! 光? 風に地、ついでに火は?」
腕輪の神器達に声を出し呼んでみるが。
「寂しいじゃないのよ~う」
本当のボッチだ。
どうする私。
「アクシデントに動じなくはなったけど、このパターンは初だわ」
どうしようかと無意識に痛むおでこに手を持っていこうとして指に引っ掛かっていたネックレスが偶然指輪に当たった。
「なんか光ってる」
指輪の石が明るくなったように見えたんだけど。
「あ、やっぱり」
スフィー君がくれた石と指輪の石を近づければ青白い光がうまれる。
「あっ!」
足元に違和感を感じれば、芝生の道が出来ていた。靴のまま踏めば不思議な弾力。突然発生した緑の道はクネクネと先まで続いているようだ。
「これって進むしかないわよね」
私は、仕方なくそのフカフカ道の上を歩き出した。
「原因は、あの子ワニとこのペンダントと指輪に違いない。もう室内での運動会は禁止だわ!」
歩きながらも、お仕置きは何にしようかと呟く彼女は以前よりあらゆる面で成長していた。
「あのワニもどき、何かに活用できないかしら。もふりには固すぎるしなぁ」
そして、後に子ワニに感謝する事になろうとは、この時点では思ってもいないゆらだった。




