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91.ラジに叱られたぞ

「冗談ではないです。子供の頃に読んだ文献にその神獣の事が記されていたんです!」


私の真面目に答えろと再度襟首を掴まれたナウル君は、これ以上首を絞られたら息ができなくなると察知したのか早口で言いきった。


「ふーん」


ならば。


「ラジ、屈んで。ちょっと痛いかも」


頭の上に鎮座する子ワニもどきの首辺りを掴み力業で剥がした。子ワニが手足に力をいれたので離れる際にラジの髪が何本か抜けたようでぶっとい足に金の毛が挟まっている。


「ビギャー!」


まぁ抵抗するわよね。激しく振る尾を避けとどめに言葉を伝える。


「ねぇ、産まれてきたばかりのその命、惜しくないの?」


やはり言葉を理解しているのか動きが止まったが、まだよ。


「どうする? 素直に私が欲しい情報の本出せる? 振ればでてくるかしら?」


こんな小さな身体に本当に入っているのか。


「あっ、ちょっと!」


お腹を触ってみようとしたのに、子ワニは脇から伸びてきた手に抜き取られた。


「なんでよ!」


なんと犯人はラジだ。邪魔しないでほしい。というかせっかく頭上の重石をどかしてあげたのに。


「何故、焦る?」


ラジがくれたのは礼でもなければお叱りでもない。


「ユラ、ここ最近、ずっと気が立っているのに気がついているか? いつもの貴方ならナウルやこの生き物にそのような手荒い事をしないはずだ」


水をかけられたように冷たい声がゆっくりと私の身体に染み込んでくる。


「なによ。謝れっていうわけ?」


苛立ちが目に見えるのなら私の体からはきっと炎が出ているかもしれない。


「焦ってるって? 当たり前じゃない」


この世界に来てもう何日経過した?

動きはある。

前進はしているはず。


全ては帰るために。



──だけど。


「努力しても、頑張ってもまだ足りない」


戦っている間は頭を働かせている間はいい。緊張感から何も考えなくて済むから。


悩んでも仕方がない。考えても仕方がない。でもさ、ふと一人の時に思うのよ。


「……私は、本当に帰れるの?」


もう沼にはまれば不安しかない。それを解消する為に可能性が神頼みだけではない他の選択肢も欲しい。それが、ヒントが目の前にあるかもしれない。


「ちょっと!」


景色が逆さまになった。


「今日はここまでだ。ユラを部屋で休ませる」


犯人はラジ。私は俵担ぎされたらしい。


「ねぇ!普通に歩けるから離してよ!」


ラジは、完全に無視して他のメンバーに話しかけている。


「ナウル、今日はゆっくり休め。マトリュナス殿下、ナーバス殿。この事は他言無用に願います」


指示してるしさ。


「貴方が異世界人にそこまで入れ込むとは意外ですねぇ」


粘着質、ナーバスさんがラジに呟いた。


「そんな戦場に敵なしと言われている貴方に睨まれてしまっては、困ってしまいますね」


ラジは、ナーバスさんからの言葉に今度はクッと笑った。


暗く嫌な笑いだ。


「何を。貴方こそ我が一族の息の根を止められるほどの力の持ち主では?」


どういう事?


「リアンヌ、ナウルに食事をさせてから此方の部屋に来てほしい」


「畏まりました」


残念だけど、聞くタイミングがなくなった。私は、ラジの肩に担がれているのはこれで何回目だろうかと自室に運ばれるまで数える事にした。






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