表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/132

85.さてお次は

「ノア、リアンヌさん呼んできて」

「キュ」

「呼び終わったら私の所に来れる?」

「キュイ!」


ご機嫌が元に戻ったノアは、とてもおりこうさんである。ふさふさのタヌキ尻尾、狐より尻尾をみると狸なそれをピンと立て走り去っていく姿はもはや忠犬だ。


「さて、マート君、存分にナウル君と話をしなさいと言いたいけど本調子じゃないから少しにして」


「俺だって流石に見りゃあ分かる」


マート君はスルーし、彼の背後に気配を消してパーソナル空間を完全に無視した距離にいる粘着質さんに念をおす。


「聞き取られないようにはしておく。リアンヌさんもすぐ来るから。でも油断しないで」


マート君がどれだけ使い物になるか見ていないので用心は必要だ。なんせ彼はこんなでも王子様なのだから。他国で死んじゃいましたでは洒落にならない。


「ご配慮、感謝致します」


ふっと笑い眼鏡を上げる仕種はカッコイイはずなんだけど、私の腕に鳥肌が立つ。


「どうかされましたか?」


「うーん。やっぱり粘着質はプライベートの夜とかもしつこそうだなと」


ぜったいネチネチいじめ倒すんだろうな。そういうのが滲み出ているから残念なのかも。


「な、何言ってんだ?!お前ホント下品だよな!」


「かっわいいわよねー」


「なっ!」


赤らめるマート君をみていると自分が汚れているのを痛感するわ。まあ生きてきた年数が違うしな。


ん? さっきまで何も感じなかった背後から嫌な視線が。ちらりと視線だけ動かせば紳士なラジは節度ある距離をとりつつも私をジト目で見下ろしている。


この人も初対面の時より随分変わったな。いやこれが素なのかな。


「という事で見守り変更。行きたい場所あるから付き合ってくれる?」


「何処へ?」


あ、なんか嫌そう。


「探検よ」

「なんだよそれ! 俺も」

「無理」

「何でだよ!」


即拒否。マート君の好奇心は悪くないけどね。若さゆえというか眩しいわ。


「何か起きるか分からないから。だから」


ラジに近づき肩をというか届かないので腕を軽く叩く。


「ラジ、付き合って」


この人は、裏切らない。

根拠のないものだけど。


「伝達をしてからでいいか?」


なんか伝わるといいな。

そこそこ頼りにしてんだからと。


「勿論」


そこで忘れていた整理現象が。


「私もトイレ」


すかさず歩く騒音から文句がはいる。


「やっぱりラジウス、アンタが慎みというやつを教えろよ」


しかも相変わらず生意気な。


「ぼっちゃんは煩い」

「な、無礼だぞ!」

「え? 聞こえなーい」


こうして結局騒がしくなるのよね。



ふとこの城に来る前夜、魔法使いの妖艶美女シルビアさんとの会話を思い出した。



『あそこの城に異界に関して記した書物があるかもしれない』


『仮定なのはどうしてですか?』


『力がある者しか入れないからよ』


国一番の魔法使いが入れないの?


『あそこの扉は保持している魔力や技量じゃないの』


『じゃあ何ですか?』


『資質』


なんの資質よ?


『例え入っても相応しくなければはね返る』


細部まで説明がなくても、なんとなく理解した。気に入らない者は攻撃される、それも致命的なくらいに。


『やめとけば?』


冗談でしょう?


私は笑みで彼女に答えた。


ヒントがあるかもしれないのに、諦めるわけないじゃない。



「ユラ」


ラジが私を呼ぶ。

すっかり彼がいる事を忘れていた。


「ねぇ、目の前にチャンスがあればラジはどうする?」


私を無表情に見下ろした彼は、なんの迷いもなく言ってのけた。


「掴むに決まっている」


だよね。


「じゃあ、気合い入れて行きますかね!」


訝しがるラジをよそに私は先ずトイレに直行した。いや、我慢は病気になるからね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ