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8.春の神

「くしゅん!」

「あらあら、あんな薄着になっていたから風邪をひいてしまったかしら」

「いえ、これは誰かが絶対私の噂をしているんです」


私は風邪なんかひいてる場合じゃないのだ。


「手を出して」

「…?」


その言葉に従い手を出すとリアンヌさんが、私の両手の上に手をかざすとすぐに淡い水色の光が出て、それが消える頃には傷だらけだった手が元に戻り足も同じように治してくれた。


これ魔法だよね?

凄い便利だなぁ。

ヒリヒリしていたから助かった。

リアンヌさんに感謝だ。


「ありがとうございます」

「無茶をするお嬢さんだこと」


まぁ嫌いじゃありませんけどね。

お礼を伝えた私にリアンヌさんはそう言うと、ふふっと笑った。


無茶をしたのは自覚している。

自分の手を眺めた。

おそらく16.7歳くらいに変化した身体だからこそ体重も軽くなりあの円柱を登りきることができた。


「大切な物なのね」


リアンヌさんの言葉にはっとなる。

私は指まで細くなり、すっかり緩くなってしまった右の薬指の指輪を無意識にいじっていた。


「…いいえ」


此方に来る前日に別れた男から誕生日に貰った指輪。三年も付き合い近々結婚かなと思っていた私は馬鹿だった。呼び出され急に別れを告げられその理由は


『ゆらは、俺がいなくても1人で生きていけるだろ』だ。


本当はなんてことない、既に私の部下に手を出していたのだ。しかも1番可愛がっていた子だった。


──いけない、今そんな無駄な事を思い出してもしょうがない。


私は、気持ちを切り替えリアンヌさんにお願いする。


「明日、春の神に会う為にまた円柱に上がりたいのですが」


だいたいの出来事をリアンヌさんには話したので何で先に魔法使い、シルビアさんに腕輪の事を聞かないのと言われるかと思ったけれど、返答はあっさりしたものだった。


「畏まりました。明日は、少しバタバタすると思うので後程いつ頃になるかお知らせするわね。私は次の間にいますから何か困ったり不安な事があったら遠慮せずすぐに呼ぶんですよ」


そう言い微笑むと私の肩にショールを掛けて部屋を出ていった。


私は、そのまま座っていたソファーに置いてあるクッションに寄りかかった。


先に会うべきなんだろうけどなぁ。まだシルビアさんに会い冷静でいられる自信がなかった。

彼女のストレート過ぎる言葉は、今の私にはキツい。


ついため息がでてしまう。

冬の神に会い、お城に戻った私の身体は、寒さで冷えきっており私を見たリアンヌさんに強制的にお風呂場に押し込められ、ご飯を出してもらい今はとても眠い。


窓を見れば外は暗く、もう夜だ。流石に疲れた。明日は、絶対筋肉痛だろうなぁ。


「クルル」


膝の上に乗ってきたノアが鳴き、まるで私を心配しているように見つめる。


「今日は助かったよ」


頭と首の辺りを撫で、軽く掻いてあげると気持ち良さそうに目を細めた。猫みたいだなぁ。動物独特の温かさに癒されていく。私もいつの間にか寝てしまった。




* * *



──起きたらベッドの中で朝になっていた。ノアが私の頬に顔をスリスリしてくる。


私がまずしたことは、着替えと朝食の用意をしてくれたリアンヌさんに謝る事だ。


「昨日ソファーで寝てしまったみたいで、すみません」


「無理もないですよ。あの後暫くしてラジウス様が様子を見にいらしたのでユラ様をベッドまで運んでもらいました」


うわっ。


リアンヌさんではないと思ってはいたけど、ラジウスさんか。彼には、迷惑をかけっぱなしな気がする。それより普通移動させられれば、起きるはずなのにまったく気がつかなかった。


たるんでるな私。


「化身、いえノアは、ラジウス様がユラ様に触れるのを物凄く嫌がってましたよ」


思い出したのかクスリとリアンヌさんが笑った。



「遅くなりました」


ラジウスさんが迎えにきてくれたのは、夕方頃だった。国に着いたのだから色々忙しいはずだ。私はいつ陸に着地したのかも気がつかなかったけど、室内が暖かくなったなとは、感じていた。


「うわ…」


グーノ、この狼のような種の事で、この子の名前はヴァル。


ヴァルの背から見下ろす景色は、昨日と一変していた。飛んでいた都市は一部と聞いていたけれど、こうも変わるとは。


「我が国は決して大きくはないが美しい」


頭の上のほうで、ラジウスさんが、私の驚きの声に反応した。


確かに綺麗だった。

上から見るとまるで水の国だ。


高台にあるお城と都市を囲む様に川が流れ、それは、緩やかな螺旋状に広がっていた。

水が豊富だから、山々の緑も立派だ。

なにより日差しが優しく降り注ぎ、まさに春のようだ。


飛んでいたのは時間にすると数分くらいで、直ぐに円柱のてっぺんに着いた。ラジウスさんが、失礼しますと言い私の脇の下に手をいれ軽々と降ろしてくれた。


な、なんかこの歳になるとそんな些細な事が恥ずかしい。


「恐らく私はいないほうがよいと思うので、終わったらコレを吹いて下さい」


そう言い彼は首にしていた鎖を外し私に渡した。鎖には、平な円形の銀色のヘッドがついており、穴が両サイドと中央に空いていた。


「それを吹くと人には聞こえませんが、ヴァルには聞こえるので」

「…あの?」


話は終わったみたいだけど、ヴァルに乗ったラジウスさんが、すぐ飛び立たないので不思議に思ったら、彼は一瞬躊躇したあと困ったような顔をした。


「無理はしないで下さい」


そう言い去っていった。

──私は、まだ正直誰が味方かも分からずピリピリしていたけど、リアンヌさんとラジウスさんは信用できそうな気がする。


「キュ」


ノアの声に我にかえった。


「いけない、急がないと夜になっちゃうね」


私はまたオルゴールのネジを巻き、蓋を開けた。今度は直ぐに変化があった。何処から発生したのか、大量の花びらが集まりそれは、徐々に人の形になっていく。


「あら、ずいぶん不思議な気をまとっている娘だこと」


花びらから現れた春の神エレールは女性だった。



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