75.神器達との夜
「あー疲れた。あ、今日はいないのか」
私は、ベットにダイブしたまま、いつもならすぐに真似して飛んで来る小さな相棒の気配がない事にちょっとだけ寂しく思う。
『あれだけ一度に大量に力を使用すれば疲労はします』
相棒の代わりにうつ伏せの私の頭に軽く触れる感覚に顔をあげれば光だ。手から淡い光が出て消えたと同時にさっきから続いていた鈍痛が消えた。
「ありがと。頭痛って地味にくるのよね」
宴会が終わり他国からの訪問者を帰してやっと落ち着くことができた。仰向けになり頭の下で腕をくみ薄明かりの部屋を見た。
「今日の今日でこれだけ綺麗にしてくれて皆さんには感謝だわ」
これでオバケでないといいんだけど…。
「あー! ノア貸し出し中じゃない!」
やってしまった。でも、あのナウル君の事だから危ない行動されても困るしなぁ。
『あの男、ラジウスを置けば? 前に一緒にねてたし』
火、あんた、どうしてそれを。
『俺達は、遮断してもわかるんだよ。それに、あんたの体はあの男の気配が数日混じっていた』
「なんか厭らしいじゃないの! ああっ、水や風がいる前で大人な会話をしてしまった! 」
お姉さんは、決してふしだらではありません!
『『なんか…怖い』』
ベッドから飛び降り人の姿の風と水に駆け寄り肩を掴み力説すれば、引かれた。
『ユラ、我々に話があるのではなかったのですか? 人は充分な睡眠をとらねばならないのでしょう?』
光、もっともな言葉をありがとう。
「じゃあさっそくお話会をします。立っていても疲れないんだろうけど、私が気になるから好きな場所に座って」
暗がりの中各々が好きな場所に落ち着いたのを眺め、密度が濃いと思いながら自分もベッドの背もたれに寄りかかり楽な姿勢になる。
『話して下さい』
光の言葉に私は今後について考えながら口をひらく。
「とりあえず、このお城で滞在中に地下にある書庫に入り調べたい事があるの。あ、勿論約束した湖の枯渇も見に行くけど。で、諸々済んだら光の国に行こうと思う」
『シャイエにですか?』
光が不思議そうに聞き返してきた。
「そう」
『あそこは滅びました』
「そうね。冬の神から聞いたけど、建物や光の民族は少しくらい残っているかなと思って」
『いないこともないですが』
「光は闇を打ち消す。なら闇に行く前に立ち寄っても損はない気がするのよね」
とにかく闇に関する情報が少なすぎて不安なのよ。
「あ、光の王様って殺されちゃったの?」
『狂った果て自害しました』
「えっ!」
あまりよい国ではなかったのかな。
「とりあえず、ほらグラス。2本しか持ってこれなかったけど、乾杯しましょ」
暗くなりそうな気分を払拭するように私は、元気な声をだした。
「カンパーイ!」