69.借宿到着
謁見後、二日が経過し今、新たな借宿に到着した。さあ、感想は。
「やばい。幽霊でそうな古さだわ~。いえ貫禄があるのかしら」
「まぁ要塞ですから華美さはないですよ」
ナウル君がすかさずフォローのような言葉を言ってくれたので、まあいっか。よそ様の家(城だけど)をけなすような発言は失礼だったな。
「オマエどういうつもりだよ」
「まあまあ。あのメインのお城にいるよりマシじゃない?」
警戒心まるだしのマート君の文句に付き合いながら城に入る橋を渡る。外観は灰色だったはずの建物は、いまや黒ずみ苔や葉がくっついていて、え?これ遺跡じゃないの? 現在進行形で使えるの?というくらいの見た目だ。
「とりあえず、トイレ行くときノア付き合ってよ!」
私は、泳ぎと幽霊だけはホント無理。
「キュ…」
「え? 嫌なの? 最初お風呂にまでついてきたのに?」
「キュウ」
もしや恥ずかしがってる? 隣の浮いている物体は恥じらうようにモジモジ動いた。
「別に中までなんて言わないから。頼んだわよ! あーまずは、トイレとお風呂場チェックだわ!」
恥ずかしいのかモジモジしているノアに念を押す。空中でよくそんな動きができるわとちょっと呆れた。
「なあ、ナウル、あいつに恥じらいを教えたほうがいいんじゃないの?」
「今更じゃないですか」
「いや、酷すぎだろ。ラジウス、お前、あんなのに仕えるの恥ずかしくないの? 良い家の出なんだろうから教えてやれよ」
「恥ずかしくないが。また、教えても言うことを素直に聞くとは思えない」
「「確かに」」
「ちょっと! これ見よがしに煩い!お喋りメンズは嫌われるわよ!」
マート君、ナウル、ラジの三人を睨み付ければ、柔らかな声が私をなだめはじめた。
「お気になさらないほうがよろしいです。疲れるだけですわ」
聞こえるように人の事をベラベラと。しかもラジまで混ざってるのが気にいらないわ。
キレる私にリアンヌさんは、お茶と美味しい焼き菓子を用意致しますねと苦笑して言われた。
「ありがとうございます。お城の中をざっとみたら、お茶を頂きつつ面接します」
「面接…ですか?」
私は後ろに連れてきた立候補者達を眺めながら、彼女に伝えた。
「はい。ここで誰を採用するか決めます」
不思議そうなリアンヌさん。
「私は、やる気のない人や…間者はいらないんですよ」
さて、何人残るかしら?