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68.王子様つきでの水の国は

「行きは海に落ちたり散々だったけど、帰りは楽でいいわ~」


空飛ぶ木に乗り4日間ずっとは身体にもよくないので休憩の為に降りたりはしたけれど水上の乗り物のダーウのトラウマに比べたら格段にストレスがない。


「呑気だよな。ホントに」


隣に来たマート君はなにやら憂鬱な顔。実は繊細そうだもんね。スフィー君、お兄さんが亡くなった影響か普段はいつもと変わりないけどふいに見せる表情は、なんともいえない。


「もう着くから緊張してるの?」


今のマート君は、その暗さとは違った感じだ。まぁ他国に国を背負ってのご挨拶は、確かに胃がキリキリしそう。


「謁見自体に緊張はない。それより滞在期間中が憂鬱だ。友好国と表向きはしているが、実際は程遠い。しかもウチは今かなり混乱をきたしていて立場が弱い。今回の助けはありがたいが、見返りが全くないなかで行う事はまずない」


恩を何で返すか。


国民の半数は、本来の摂理にのっとり砂と消えた。また酒池肉林のトップも誰かに暗殺され、時間差で私によって城は吹き飛び、何処から手をつけようか状態だろう。


「うーん。とりあえず貴国に助けが必要になった際には駆けつけるくらいでいいんじゃないの」


明確にして、それが困難になりできませんよりよっぽと誠実だ。「あっ、ごめん~!出来なかった」で通用しないだろうし、なにより国に対しての信用度が下がるのは回避したいわよね。


「あ、そうだ!」


閃いたとマート君に言えば、あからさまに拒否の顔。それは彼だけではなく。


「何嫌な顔してんのよ? そこ! ラジとナウル君も!ついでにノアまで!」


少し離れて座っていたメンズと一匹にまで疑いの眼差しを向けられた。ただ一人リアンヌさんは鉄壁の笑みのまま。


「流石リアンヌさんは、私の味方!」

「あれは諦めの笑みにきまってんだろ!」


マート君が間を開けず切り返してきた。なかなかノリがいいわね。


「アンタ、何を企んでる?」


マート君に聞かれた。何って。


「あぶり出しホイホイ作戦」

「はぁ?」

「それは着いてからのお楽しみ。ほら、見えてきた」


困惑しているマート君を尻目に私は馴染みのある景色、水の国ミュランに何故か嬉しさを感じていた。




* * *



「無事戻られてなにより」


マート君は陛下と謁見の間でお話している間、私はフルスピードでお風呂と着替えを済ませ小さな部屋でミュランに戻ってから初のご挨拶だ。


陛下の穏やかな笑みは変わらない。しかし相変わらず敵に回したくはない。


「ありがとうございます」


私もにっこりしてみたら、ふっと更に笑い返されちょっと負けた感がした。


「救世主殿は少し変わられた」

「そうでしょうか」


隣の宰相さん、確か名前はラナスさんだっけ。その人も頷いている。


陛下と宰相さんは笑みを浮かべたまま無言。此方も各々の職場に顔を出しに行っている最中の為、今いるのは私とマート君だけ。


好都合だ。隣からなにやら警戒する視線を感じるが勿論無視。


「陛下、あくまでも提案なのですが」

「おぃ! 何を言う気だよ…だっ!」


黙ってと肘鉄をくらわし。いや~回数をこなしているからか上手く溝に入るようになったもんだと、前屈みになる王子様を視界にいれながら自分を褒める。


「西にある湖が枯渇している調査、またマトリュナス殿下と交遊を深めたいのでその近くにあるガーファンク城に殿下と共に滞在させて欲しいのですが」


このメインの城からは少し離れた場所は、地の国を嫌う者が多い城内よりマート君にも陛下にもいいだろう。


「まだ要望があるなら聞くが」


陛下、分かってらっしゃる。私も陛下も外仕様の笑顔全開だ。


「ありがとうございます。では、滞在中のお世話をして下さる調理の方、メイド、侍女、護衛などの全ての人は立候補した者を連れていくのを希望します」


宰相さんも何かを察知したのか笑顔はないが含みのある顔。


「よかろう。早々に手配する」

「ありがとうございます。では早速殿下と親睦を深める為、失礼致します」

「ちょっ!」


マート君の袖をひっぱり退席する私に、一人困惑の王子様。


「どういう事だよ!」


まだまだ若いな。


「さっ! とりあえず皆と集まろっか」


骨ばっている背中を行くぞと軽く叩けばまた文句が出た。


うん、活きがいいのは悪くない。

お兄さんに頼まれたからには滞在中は護りますよ。帰ったらそれこそ寝る間もなく動くんだろうし。


今くらいゆっくりしなさいよ。







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